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成長期シリーズ(腰椎疲労骨折・分離症①)

いろいろまとめたいことが多くて困る今日この頃です。

なんとかシリーズが好きすぎて、手をつけきれていないものが多いです。
今回は、成長期に起こるオーバーユース障害の中でも、非常に多い腰椎疲労骨折(分離症)についてまとめていきたいと思います。

本日のテーマの題材は、これです。

本当によくまとまっているので、皆様興味のある方はご購入されることをお勧めします。
我がクリニックでは、院長が定期購入してくれているのでいつでもタダ読みなので非常にありがたいです。

・腰椎疲労骨折とは?

スポーツに関わる医療従事者であれば、腰椎疲労骨折(分離症)という言葉をよく耳にするかと思います。
この疾患は発育期にスポーツ活動に関連して起こることが多く。
腰椎の関節突起間部に起こります。

我が国における腰椎分離症の発生率は5.9%で、男女比は、2:1と報告されています。
発生する高位として多いのは、下位腰椎です。
これは、全脊柱のうち腰椎の部分は矢状面(横から見た動き)の屈曲-伸展可動性の割合が高いことも下位腰椎に発生する要因と考えられています。

全脊柱の屈曲ー伸展可動性 一覧

また、腰椎関節突起間部に起こるのは、この部位が伸展・回旋ストレスで応力がかかりやすい部位というところが特徴的で、そのため伸展・回旋がかかるスポーツで発生することが多いです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/25/2/25_119/_pdf/-char/ja

こちらの論文に記載もありますが、回旋時には、対側の関節突起患部に応力がかかると報告されているのでバレーボールや、サッカー、野球などのスポーツでは、回旋する側と反対側=右回旋を主軸で使う選手であれば、左の関節突起間部に疲労骨折(分離)が生じるとされています。

・発生に関わるリスクファクター

最新のレビュー論文によると以下が分離症の発生要因として挙げられています。

この辺りは、身体所見をチェックする際には必ずチェックすることをお勧めします。

・無症候性でも、長い目を見ると早めの診断・治療が良い!?

基本的な概念として、『分離を滑らせない!!』というワードがあります。

分離症の中には、分離が生じていても無症候性(痛みが出ない)ケースもあります。
痛みがないからといって放置してしまうと、将来的に滑り症につながってしまい。年齢を重ねた時に慢性的な腰痛症を発症してしまうケースもあるので成長期のうちに、早期診断で分離を見つけ、早めの治療を行うことが大切です。
分離症から滑り症に至るまでの簡単は過程を記載しました。

分離が発生すると後方組織での支持性が低下します。
そうすると、椎体が前方へ不安定になり、椎体の前方への負荷が高まります。
そうすると、前方にある椎間板(成長期であれば成長軟骨板なども)が破綻していき、前方組織の安定性も低下します。

椎体もどんどんと変形が進みより滑りやすい骨形態に進行してしまうことで滑り症が完成してしまうのです。そうなると滑りを予防するのも難しそうですよね?

→滑りに関しての、画像診断についてはこちらに記事を作成する予定

・診断について

先ほど早期診断が重要だという話をしましたが、ではどのような点を抑えると良いのでしょうか?
若年者急性期腰痛症の身体所見の特徴を報告されている文献があります。
そこから重要な、身体所見は以下の通りです。


側屈時痛を見逃さないのがポイントのような気もしますね!
あまり側屈までしっかりと見ているセラピストは少ないのではないでしょうか?

次に痛みの範囲です。

分離症では、基本的には分離している側の痛み(両側分離しているケースもあるので、その場合には両側の痛み)が出ます。
ただし、痛みがなくても無症候性で隠れている分離もあるため注意が必要です。


参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ssrr/advpub/0/advpub_2020-0199/_pdf

・画像診断について

分離症の画像診断でよく教科書で見かける所見に、『スコッチテリアサイン=犬の首輪』があります。

有名な所見ですが、ではこの所見が意味することはどんなことでしょうか?

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ssrr/3/1/3_2017-0099/_pdf

こちらの論文は、小児の腰椎分離症に対して、単純レントゲンのみを用いて、分離症の病期を判断できるかを検討した研究です。
実際に、レントゲン画像で異常所見(スコッチテリアサイン)があった場合には、終末期であれば100%、進行期であれば、79.2%、初期では22.7%で判断できました。

早期発見のためには、初期の段階で見つけることが重要と口酸っぱく書いてきましたが、これでは単純レントゲンは早期診断の意味合いでは臨床的な意味合いはどれくらいあるのかと、疑問が湧いてきますね!


・早期診断にはMRI!!

最近のどの書籍を読んでも、急性期においてはMRIの撮像が一般的になっています。
MRIのメリットについては以下の通りです。



このように、超早期の場合は、『骨髄浮腫』による高信号変化を椎弓に認めます。
病期が進行するにあたり、骨髄浮腫の程度は低下していくのがわかると思います。
よって、骨髄浮腫の程度(信号変化)が低ければ、病期が進行した状態と推論づけることができると思います。
ただし、正確な、病期の判断には、CTを用いた方が確実な判断ができると思います。

・骨の修復や病期の判断にはCT!?

MRIの項からも、正確な病期を判断するにはCT>MRIだと考えます。
CTのメリットは以下の通りですが、被曝量が多いというデメリットがあります。
そのため、医師の先生方は、CTは治療の初期と、終わり際に撮影をされることが多いとのことです。

また、病期の分類に関しては、こちらの論文にあるMRIの骨髄浮腫と比較して、CTでの骨折線の程度によって判断できるとされています。

https://www.researchgate.net/publication/329256465_Prevalence_of_curable_and_pseudoarthrosis_stages_of_adolescent_lumbar_spondylolysis


また、骨癒合の確認をするのにもCTは適していますが、癒合の定義づけがされていないという話もあります。
寺門らは、下記のように癒合の定義を分けて骨癒合を判定しているようです。


こういった定義を用いて、画一的な画像検査ではなく、患者負担を軽減できるように、身体所見を交えて、撮影のタイミングを図り、撮影回数を限りなく少なくする努力をされていることを私たちコメディカルも理解しないといけませんね!!!


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