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【コミティアで地獄のような暇時間を味わった話】

今日は小説サークルの話を。

5/29(日)に開催される【第三十四回文学フリマ東京】に、小説サークル『ペンシルビバップ』として参加します。新刊は「箱」をテーマにした短編小説やエッセイが入っています。

・ブース「ス-01」
・サークル「ペンシルビバップ」
・値段は一冊500円

WEBカタログはこちら!

今回は、文学フリマに持っていく「箱」短編集に掲載予定の『コミティア139イベントレポート』を、note用に再編集したバージョンで公開いたします。

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【実録イベントレポート:コミティア139】

2022年2月20日に開催された『コミティア139』に参加して来ました。

コミティアとは、その名前が示す通りにコミックがメインで構成された即売会のことです。二次創作は無く、一次創作の作品のみ持ち込むことが許されています。

メインはコミックではありますがペンシルビバップのように文芸を持ち込むサークルもあれば、写真集や創作グッズを並べるサークルもあります。

ペンシルビバップは過去8年間、小説サークルとして頻繁にコミティアに参加しています。

初めてのイベント参加もコミティアだったのを覚えています。本以外に何も持ち込まず、ディスプレイも考えず机の上にそのまま並べた本を、手に取ってもらった時のドキドキする感じを今でも覚えています。

2020年、2021年とコロナ禍で様々なイベントの中止が相次いでおり、実に一年ぶりのコミティア参加でした。

コミック中心のコミティアにも文芸サークルは少なからず参加はしていますが扱いとしては外様のようなものです。会場内でも文芸のブース周辺は賑やかなコミック中心のブースとはまるで違う雰囲気です。

よく言えば落ち着いている、静か。
悪く言えば、空気です。

文芸に興味を持ってコミティアへ行こうという人も少ないのではないでしょうか。コミティアのコミはコミックのコミですから。ティアは、何のティアだか知りません。コミックと文芸の両方が好きという方なら文芸のブースにもふらりと立ち寄ってくれるかも知れませんが、文芸ブースはコミック関連にくらべて人の通りは多くありません。

かつてコミティアに参加して【2冊】しか売れないこともありました。その日は開場してから一番に知人の方が2冊買ってくれて、以降、誰も来ませんでした。数万人規模を収容する東京のイベント会場で真冬の山よりも静かな時間を過ごせるなんてと驚いたものです。

それほど、コミティアにおける文芸は空気です。
とはいえ枯れ木も山の賑わい。

2月20日も感染対策を万全にして当日を迎えました。

現地で気付いたのは、やはりいつもに比べて参加しているサークルの少ないことでした。東京のコロナ第六波がピークアウトしたばかりの苦しい状況ではありましたので、当然と言えば当然です。

お客さん側として参加している人も少ないように感じましたが、その日は両サイドのサークルさんが魅力的だったからか、お隣のブースには立ち止まる方が何人もいて、本も売れているようでした。

これは文芸サークルだから売れない、というのは言い訳になりません。両サイドの方たちの本は売れているのですから。

いつもなら通りがかる人に「どうぞ手に取ってください」と一声かけるところですが、コロナが出始めてからは声かけもしにくい状況です。興味を持ってくれそうな方、足を止めてくれそうな方が通りがかるのを待ちます。

コミック系サークルのように目を引くイラストポスターを用意できないので、ペンシルビバップは「文章ポスター」というものを毎回、作成しています。
⇓のようなものです

今回の「箱」のポスター
作品のテーマやサークルのコンセプトを紹介

文芸に興味を持つ人は文章を読むのが好きなはず、であれば長い文章が置かれていたら自然と目が向いてしまう、という雑な発想です。

でも本当に効果もあって、文章ポスターでサークルに興味を持ってもらったこともありました。
 
声掛けが出来ない分、この文章ポスターをせめて目に留めてもらうことで、足も留めてもらおうと思っていました。

が、待てと暮らせど誰も足を止めません。

誰かが買ってくれるとか、手に取ってくれるとか、その段階にも辿り着きません。そもそも誰も立ち止まりもしません。こちらを見ようともしません。人の流れはペンシルビバップのブースを避けるように通り過ぎていきます。ただその場にいるだけの空気みたいなものだとしたら、相当に淀みきっていたのか近寄りたくないような空気を醸していたのでしょうか。

私はただの一言も発することなく無意味にブースのパイプ椅子を立ち、周囲を眺めて誰も近寄ることのないのを確認しては座るといった無意味な動作を繰り返していました。

文学フリマのクルミドコーヒーを懐かしく思います。文学フリマ参加の方は周知の事実と思いますが、コロナ禍の以前はクルミドコーヒーというコーヒー屋さんが美味しいコーヒーをブースで販売してくれていました。 ブースで本が売れない時、イベント中に疲れた時、店番をサークルの仲間に任せて、コーヒーを買ってボーッと飲むのが好きでした。

この日はそんな逃避もできません。
無常に時間だけが過ぎていきます。
私はただ東京ビックサイトの天井を見上げていました。何時間も。

天井には等間隔に大きなライトが設置されています。三個のライトが一セット、ところが中には間引きされて2個しかない場所もあれば、変則的に4個の組みになっている部分もあります。これは単純な掛け算ではライトの数が割り出せないぞ、とひとつずつ目線でライトの数を数えると1フロアで121個ありました。その日の収穫はそれくらいでしょうか。

販売冊数は【0冊】でした。

見事に最低販売記録を塗り替えて、重さの変わらなかったはずなのに重いカバンを抱えて帰り道、電車の車内モニターに綿矢りさ氏のインタビューが映っていました。彼女はこれまでに何百万部を売り上げたのでしょうか。そう考えると八つ当たり気味な苛立ちすら覚えます。

イベントの準備には大変な手間が掛かります。
社会人サークルですから、みんな忙しい仕事や家庭のことをアレコレと終わらせて時間をつくって作品を書いています。締め切りまでに寝る暇も惜しんで書き上げて、誤字や脱字をチェックして、印刷所に製本をお願いして安くないお金を振り込んで、当日に持っていく物やブースのレイアウトを考えて、当日までにどうやって宣伝するかも考えます。

大変な時間をかけて準備して、貴重な休日に早起きをしてイベント会場に向かって、設営をして何時間も通り過ぎる人を眺めて、天井のライトを数えたりして、結局は1冊も売れることなく会場を後にしたなら、やる気もなくなると思いませんか? ところがどっこい。こうして性懲りもなく新刊を仕上げては次のイベントに持ってきています。

一冊も売れずに引き上げるしかなかったコミティア当日「8年、地道に活動を続けても0冊か」と正直に言って気が滅入りました。しかし、15年以上新人賞に落ち続けているのは伊達ではありません。切り替えだけは早いです。次は文フリ!と気持ちを切り替えて、翌日から文学フリマ用の作品を書き始めました。

今、この文章を書いている時点では今回の『箱』が1冊でも売れるのかどうかわかりません。開催は5/29、今週末の話ですから。

我々は同人なので、書いたものをひとりでも読んで、楽しんでくれたら成功だと思っています。そして成否は一度のイベントで決まるものではなく、たとえ前回が0冊でも次のイベントで誰かが読んで楽しんでくれたら成功だと思います。

もし5/29の文学フリマで、誰かが1冊でも買ってくれたなら、少しでも作品を楽しんでくれたなら、コミティアで1冊も売れなかったことも無駄ではなかったということになります。楽しんでもらえることを信じてこれからもイベント参加を続けていきます。

文学フリマに参加される方へ、会場で手にとっていただけたらうれしいです。

【おわり】

小説サークル、ペンシルビバップのイメージ画像


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