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【旅エッセイ63】旅の思い出を残し、伝える。

 ガラケーだった時代から、たくさん写真を撮っている。ガラケーから始まって、デジカメを買って、iPhoneに替えてからはスマホで写真を撮っている。

 それからミラーレスカメラも持っている。

 ミラーレスカメラはキヤノンのEOS M。キャンペーンか何かをやっていて、レンズが二つと周辺機器やカメラバッグだとかのオマケが色々ついて更に値引きされていたので、「これで美しい景色を写真に残そう!」と一念発起して買った。手頃な価格のいわゆる「エントリーモデル」なので一念発起するほど高額でもなかったのだけど、その時の私は旅の資金につぎ込んだリボ払いの清算がまだ残っていたのに買ってしまった。

 また旅に出たら、今度はこのカメラで良い写真をたくさん撮ろう。なんて思って買ったのだけど、宝の持ち腐れでオートモードしか使っていない(そもそもミラーレスという言葉の意味もわからずに使っている、なんて言ったらカメラ上級者の方に怒られるかも知れない)

 きちんと勉強して初心者を脱したいと思いながら、気付けば何年か過ぎてしまった。
 
 写真をうまく撮りたいと思うのは、自分が観たものの感動をうまく伝えたいから。私はこうしてエッセイを書いているけれど、どれだけ言葉を尽くして美しい修辞的な言葉を並べ立てても、自らの目で見て耳で聞き、自分の足で訪れた感動には敵わない。写真なら、少なくとも目で見た感動を伝えることができる。カメラを上手に使いこなしている人の写真を見ていると本当にそう思う。

 カメラのことをきちんと勉強したら、撮りたい景色がある。
 北海道の弟子屈(てしかが)町にある、摩周湖。以前の旅エッセイでも書いたけれど、摩周湖の眺めは言葉を失うくらいに美しい。

 標高が高いので駐車場から背後を振り向くと、遠くに雄阿寒岳(オアカンダケ)が見えて、山々の稜線が地平線のように伸びて、雪が大地を埋め尽くしているのがわかる。

 初めて訪れた時も、車から降りて振り向いた視界に飛び込んできた景色に、私は衝撃を受けて震えた。湖を見に来たのに肝心の摩周湖そのものをみ差し置いて、駐車場からの眺めにしばらく見惚れていた。

 確か駐車場で撮った写真もあったはず、と思ってフォルダを探していたら、あった。

「駐車場なのに景色がキレイ」ということを忘れたくなくて、わざと駐車してある車も入るように撮った写真。

 旅の思い出を写真に残すのも、エッセイとして書き起こすのも私にとっては同じこと。あの日の感動を忘れたくない。それから、誰かに伝えたい。

 だからヘタクソでも撮った写真と一緒に、こうしてエッセイを書いている。旅の中で感じた自由や感動を、読んでくれた人が少しでも感じてくれたなら、うれしい。
 


また新しい山に登ります。