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【保存版】採用代行を使う前に読むべき!事業生産性を10倍にする採用戦略とケーススタディ12選 (15,000文字)


この記事を書くに至った背景

前職を退職してからのこの一年で、さまざまな企業の採用支援を行ってきました。その中で課題として目立つのは、売上を着実に伸ばしてはいるものの、適切な採用ができず事業を伸ばしきれないというケースです。

私自身、前職では10名以下から200名弱まで組織を拡大を経験していますが、一般的な採用活動だけでは達成が難しかっただろうと思います。

組織とは不可逆性が高いものです。採用軸や組織の方針を変えること自体は簡単ですが、そのプロセスでメンバーを疲弊させてしまうため、初期の段階で緻密に採用戦略を設計する必要があります

経営者に伴走する中で、採用課題を多く目にする身として、同じ失敗が繰り返されている現状をなんとかしたいなと思い、この記事を執筆しました。『これまでの10名以下~500名規模の会社や売上1億~100億規模の会社等の採用支援などの経験を経て生産基盤を強化するための採用のフレームワークを作りました。現場で明日から使えるフレームワークになっているので、ぜひ活用ください!』(※使い方は1〜4章で解説します)

(略歴)
新卒で入社した一部上場企業にて、営業起点の事業促進を行う。その後、介護業界特化のSaaSの営業統括、BtoBマーケティング支援などを経験。2019年、Ubieへ、事業開発リード、マーケティング、セールス、サクセス、HR領域の組織を立ち上げを経験、Ubie Customer Scienceの代表に。XCHANGE株式会社創業。

【記事を読んで得られること】

・事業を伸ばすための一貫した採用戦略を構築する方法
・採用マーケティングの設計方法
・スカウトDMを20%まで改善する方法
・採用広報の実装方法
・正しい採用パイプラインの管理方法
・エンプロイーサクセスを実現して組織のフライホイールを実現する方法

【この記事で扱う課題】

ダイレクトスカウトをしているが成果に繋がらない
・スカウト返信率が10%切っている

・人を採用しているのに事業が伸びていない
・採用広報を始めたがその効用がわからない
採用活動における生産性が低い(内定率が5%以下)
・内定承諾率が低い(50%以下)
・エージェントに依頼したが、紹介がいただけない
事業責任者クラスを採用できていない
・マネジメント層が機能していない
新規入社メンバーの離職が発生し始めている
・人事制度が形骸化し、社員の不満が高まっている

【この記事に適した企業(またはその担当者・経営者)】

赤字で囲っているのが特に役立ちそうな層

・売上1億円以上だが資金調達はしていない、経営者の右腕が不在の成長企業(or 採用責任者不在)
・3億円以上の資金調達をして組織を急拡大するための生産基盤を求めているスタートアップ企業

もし上記の課題や企業に特に心当たりがないようならば、読む時間を奪ってしまうのでここで読むのをやめてください。

採用活動を事業を伸ばすための手段として最適化する

売上1億円を超える頃になると、ユニットエコノミクスの蓋然性が高まり、自社で採用すべき人材像が明確になります。このフェーズでは人材に投資することによる事業へのリターンが明確になるため、適切な人材の採用が加速度的な事業成長をもたらします。

一方で、ただやみくもに採用するだけでは事業成長は望めません。採用した人材を活かせる組織の生産基盤があること、自社にとって適切な人材を定義・採用することが事業成長の要となります。

ところが、現状の企業が取り組む採用活動の多くは、採用数や応募者数を目標としています。組織の生産基盤がないまま、ただ人数を増やしても組織に歪みが生じ、かえって事業停滞をもたらしてしまうことも少なくありません。

採用活動は、あくまで事業を伸ばすための一つの手段にすぎません。計画なく無理な採用活動に取り組むことは、本来の意図に反して事業成長に対して悪影響をもたらします。

そして採用すべき人材は事業成長フェーズによって変わるため、適切なタイミングで採用することも大切です。一般的には、事業初期は不確実性と向き合える人材が必要ですが、PMF後の事業では既存のオペレーションを磨き込む人材が必要とされます。

つまり、入社時の能力のまま事業を伸ばし続けられる人材は稀です。ひとりの人材が中長期で活躍し続けるためには、入口の採用用件定義を設計し、キャリアパスも考える必要があります。あるいはその人材が活躍できるフェーズを終えた後退職するキャリアを想定するならば、それもしっかり戦略に結びつけておかなければなりません。

つまり、事業戦略と採用戦略を直結させること、そこから組織の生産基盤を強化することが、組織拡大や事業成長において重要になってきます。

採用戦略の全体像

まず、今回の話の前提となる全体設計について説明します。事業戦略と採用戦略を接合すると、採用の全体設計は大きく4つのプロセスに分かれます。

  1. 採用マーケティング

  2. 採用広報

  3. 採用プロセスマネジメント

  4. エンプロイーサクセス(※オンボーディング含む)

前提を既にご存知で、課題に合わせた対処法を知りたい方は「採用の罠と原因+対処法」まで読み飛ばしてください

■1章:採用マーケティングとは

プロダクトを売るときと同様、採用にもマーケティング的なアプローチが必要です。私は上図の基本戦略として書いた「セグメント」「ターゲット」「ポジショニング」といったマーケティングの土台が、採用においても極めて重要だと考えています。それらがあって初めて、採用コンテンツや手段が選択できるからです。

また、マーケティングで用いられる4P分析は採用マーケティングでも有効です。「製品=企業」「価格=給与」「流通=求職者にリーチする媒体」「コミュニケーション=VMVや事業紹介」といった形で置き換え、ターゲットに対してどのようにアプローチするか具体化します。この採用マーケティングの段階で、事業を伸ばすために必要な組織のケイパビリティと採用する人材像を明確化することが重要です。

■2章:採用広報とは

採用広報とは、ターゲットである採用候補者に適切なコンテンツを配信することです。ただし、全ての求職者に刺さるコンテンツは存在しません。プロダクトのマーケティングにおいてセグメントごとに受注率を分析してコンテンツを改善するように、採用でもセグメントに基づいた戦略を立てることが重要です。そのためには、下記のステップが必要です。

1. ターゲットの求職者のジャーニーマップ整理
2. 採用競合の理解
3. 自社が提供できる独自の提供価値の整理
4. PRロードマップの作成
5. コンテンツの作成
6. コンテンツの配信

資金調達達成のプレスリリースがあふれかえる昨今、ただプレスリリースを出しても求職者の心には響きません。上記のように自社情報を整理し、セグメントに分けて発信することによって初めて、求職者に企業を認知してもらえることを理解しましょう。

■3章:採用プロセスマネジメントとは

採用プロセスマネジメントとは、上図の通り、セグメント別に適切なプロセスを構築・管理することです。採用プロセスに基づき、下記のようなステップを踏むことで、採用プロセスにおける課題整理や改善などを円滑に進めることができます。

1. 採用プロセスの定義
2. 面接の見極め項目の定義
3. 見極めの方法の定義
4. アトラクトストーリーの定義(セグメント/ 競合/ 提供価値の定義)
5. 面接官の教育

採用プロセスマネジメントにおいて重要なことは、採用フローを適切に定義し、各フェーズにおける見極めを徹底的に管理することです。また、プロセスの管理には面接官のアクションがセットになるので、見極め基準やその基準の背景を、面接官との間でしっかり共有することが大切です。

■4章:エンプロイ―サクセスとは

採用におけるエンプロイーサクセスとは、採用した人材が入社後その能力を最大限発揮し、カルチャーや社内環境、業務に対して充実感を得ること、またはそれに資する取り組みを指します。エンプロイ―サクセスを採用プロセスの一環として捉えることで、リファラル採用の全社員実装や、離職率の低下といった効果が期待できます

その取り組みの中でも特にオンボーディングは重要です。オンボーディングとは、入社が決まったメンバーが自社に順応することを促す情報共有の場です。オンボーディングの内容については、業務に必要な情報を伝える「業務オンボーディング」をイメージされる方も多いかもしれません。しかし、社員が最大限の力を発揮するオンボーディングとしては、業務オンボーディングだけでは不十分です。意思決定の方針や事業の進め方、バリューごとに期待するアクションなどを伝えるカルチャーオンボーディングも実施する必要があります。


どんなに能力が高い人でも、周囲のメンバーと共創しなければ成果をあげることはできません。チーム全体で期待する成果を上げてもらうためには、カルチャーの設計と浸透が必要不可欠です。カルチャーオンボーディングを適切に行うためのステップは、下記の通りです。

1. 自社カルチャーを明文化(why/what/do/dontの制定)
2.自社のカルチャーの理解
3.前職のカルチャーとの相違点の理解
4.実践後のフィードバック
5.周りのメンバーにフィードバックを実施する

採用の罠と原因+対処法【ケーススタディ】

ここからは、先に紹介した「採用マーケティング」「採用広報」「採用プロセスマネジメント」「オンボーディング」という各フローに応じ、それぞれで企業が陥りやすい「採用の罠」を紹介します。

私が数々の企業の採用支援をしてきた中で、特に顕著な問題だと感じたものを具体に伝え、原因と対処法も併せて解説していますので、ぜひ自社の採用活動のヒントにしてください。

■Chapter1:採用マーケティング編

【ケース1-1.】要件定義がないまま人不足解消のために採用、後々ミスマッチに困惑する
売上1億円を超えた組織拡大期は、とにかく人手が足りません。新規受注への導入サポートと既存顧客からの要望のキャッチアップが同時に求められるため、なんとか乗り切ろうと「今採用できる人」を採用してしまいます

特に、学習ののびしろを期待して若手層を一気に採用するケースが多い印象です。それでも盤石なマネジメント層がいればある程度は乗り越えられるのですが、ほとんどの組織にこの優秀なマネジメント層が存在しません

また、社内でマネジメント層を育てようにも、仕組み化が不十分であると、うまくいかないでしょう。結果、優秀なマネジメント層が不在、かつ不適切な人材のいる現場では混乱が生じ、社員の不満が募り、コミュニケーションコストが増大します。

100話で心折れるスタートアップより引用。まじであるあるだと思う


―原因―
短期・中長期双方の観点で、採用における要件定義ができていないことが原因です。

たとえ定義していても、事業の成長に従ったスキルのアップデートができていません。この原因の背景には、事業戦略の解像度が低いことで、事業成長とともに変化する必須スキルにズレが生じていることが挙げられます。

―対処―
想定する事業のフェーズごとに必要なタスクや課題を整理し、それを解決するために必要な人材要件とスキル要件を定義します。事業理解が甘いと甘い人材要件定義になってしまいます。
また、採用時に必要なスキルと、入社後に育成可能なスキルを分けて整理することが大切です。

特に、マネジメント層に求める要件は期待値と比例して膨らみがちです。本当に自社に必要な要件を絞り込み、自社の事業モデルにあったマネジメントスキルを明確化しましょう。

組織に必要なケイパビリティが明確化されれば、入社後の育成プログラムの内容も精査できます。自社にフィットするマネジメント層を採用するのは難しいため、こうした社内育成の仕組みを設けることが一層意義を持ちます。


【ケース1-2.】スカウトから応募してきた人と面接するが、最終面接に進まない

採用したい人材とスカウトを送る人材が異なると、1次面接の通過率が悪くなるだけでなく、特定のセグメントでは内定が1名も出ないケースもあります。ことエンジニア採用においては、「採用が大変だから仕方ない」と許容されることも多いようです。しかし、その背景にはターゲットの曖昧さという問題が潜んでいます。

例えば、シニアエンジニアを求めているのに若手のエンジニアにスカウトを配信したり、スクラム開発を推進しているにも関わらず大企業のウォーターフォール開発に従事していたエンジニアを採用したり……。学習能力が高い人材であれば新しい環境にも問題なく適応できるかもしれませんが、その場合は学習能力の高いセグメントの特定と見極めが必要です。

―原因―
原因は、採用担当の目標が応募数だけにおかれることや、採用職種への解像度の低さが挙げられます。ある職種について深く理解するだけでなく、その職種が自社でどのような業務を担うのか、どのような価値をもたらすのかまで落とし込まなければ、採用ターゲットは絞れません。

例えば、「採用ターゲットは、ソリューション営業の経験者です」という言葉を聞いて、何か引っかかりを感じませんか?もし感じないならば、それは危険な状態かもしれません。一言でソリューション営業と言っても、無形商材を売ることに長けた人材と、キーエンス社やエス・エム・エス社といった企業でプロセス改善に従事してきた人材では、持つスキルが大きく異なるのです。

―対処―
事業戦略から落としこんだ採用戦略に則って、各人材に任せる職務を明らかにします。そして、自社が求める人材はどのような企業で何をした人なのかを明文化すれば、より解像度の高いターゲティングを設定することができるしょう。

そしてきちんとターゲティングした層にアプローチを徹底しておこなうことです。

求職者がどのような負を抱えているかのか、自社で解決できる一番大きなセグメントをみつけることができればうまく採用ができるようになります


【ケース1-3.】 求人条件とターゲットのニーズが異なり、コミュニケーションが停滞する

求人票の情報などのメッセージングが求職者のニーズと食い違い、コミュニケーションに問題が生じている場合、スカウトメールの返信率が下がる傾向があります。スカウトメールの返信率の指標は、いい会社であれば20%超、一般的であれば10%程度、コミュニケーションに問題があると5%程度です。

原因
採用ターゲットの解像度が低いか、あるいは、解像度が高くともどのようなコミュニケーションが刺さるのか仮説検証が回っていないかのいずれかが原因です。

特に後者を引き起こす要因として挙げられるのは、採用パイプラインの管理の荒さです。誰にどのようなコミュニケーションを行った結果、どのようなフィードバックがあったかを定量的に分析し、改善するオペレーションを回せていないのでしょう。

まず、採用ターゲットごとのコミュニケーションガイドライン(アトラクトストーリー)を作成します。適切な人材を最適なタイミングで獲得するには、上記のような仮説検証も含めた採用活動を行う必要があります。

アトラクトストーリー作成に紐づき、求職者へのインタビューも行いましょう。どのような転職軸を持ち、競合と比較して何を見られているか、訴求軸に評価点を設けてヒアリングすることで上記の精度を高めることができます。

対処
まず、採用ターゲットごとのコミュニケーションガイドライン(アトラクトストーリー)を作成します。適切な人材を最適なタイミングで獲得するには、上記のような仮説検証も含めた採用活動を行う必要があります。

アトラクトストーリー作成に紐づき、求職者へのインタビューも行いましょう。どのような転職軸を持ち、競合と比較して何を見られているか、訴求軸に評価点を設けてヒアリングすることで上記の精度を高めることができます。


【ケース1-4.】リファラル採用を全社員に実装できない
リファラル採用を促進するために、「報酬100万円」「企業負担のリファラルご飯」などの制度を整える企業をよく見受けます。そういった制度を充実させているのに、なお制度が活用されていない、リファラルが出てこない。こういったケースには、根本的な組織課題が潜んでいます。

せっかく社員からリファラルで求職者紹介がでても、面談落ちたあとのフォローまで設計されていないのでそれ以降のリファラル活動が止まってしまうという状況にもなります。

―原因―
社員が企業の未来や同僚に対して満足していないことが、その原因です。リファラルというのは、企業や仲間が好きだから人に紹介したいのであって、金銭的インセンティブが発生しても不満のある職場は紹介しません。採用活動とエンプロイ―サクセスは相互に結びついており、リファラル採用はエンプロイ―サクセスのもと初めて実装できます。

また、事業成長に採用が必要であることを社員が理解できていないことも原因のひとつです。よく私が聞くのは、「目の前の仕事で手一杯」という言葉です。

それに対し、「このまま採用できないと、さらに業務が大変になりませんか?」と訊くと、ほぼ100%「そうですね」と回答が返ってきます。採用の重要度を理解してもらうのはなかなか難しいものですが、コミュニケーションを取らなければ伝わらないでしょう。

―対処―
一番大事なのは、社長が圧倒的にリファラル採用にコミットすることが全てといっても過言ではないです。

そして活動を正しく伝播させるために、まずは社員の自社への認識を理解するためのアンケートを実施します。

その中で満足度の高い人にはリファラルを促進、不満を持っていそうな人にはヒアリングして不満の是正を心がけます。また、採用がなぜ重要なのか、現状の話だけではなく時間軸を未来に引き伸ばしたコミュニケーションをとることも意識しましょう。

採用の重要性が浸透したら、リファラルリストの洗い出しまで支援し、定期的にコンタクトをとってもらうためのオペレーションフローを設計します。

■Chapter2:採用広報編

【ケース2-1.】ブログコンテンツをとりあえず生産したが、採用につながらない
求職者への認知を高めようと、多くの企業がブログやオウンドメディアを運営します。特にエンジニアによるテックブログの発信は顕著です。

「ブログ開始から1年経っても応募は増えないが、ナーチャリング観点だと面接の時に読まれている」。あるいは「PVをKPIとし、“バズる”かどうかで一喜一憂する」。そういった勘違いをしたままコンテンツ施策を継続してしまうのは、採用活動において望ましい状態ではありません。

―原因―
「とりあえず認知を高める必要がある」という認識そのもの
が、失敗の原因です。

マーケターであり実業家である森岡毅氏は著書「確率思考の戦略論」内で「認知率×配下率×プリファレンス(好感度)」という式を紹介していますが、この認知だけにフォーカスするのは採用広報にとって適切な考え方ではありません。定めたセグメントに対してポジショニングをしっかり作ること、つまり「誰に」「どのように」認知して欲しいかが重要です。特に採用初期はリファラル採用が中心となるため、むやみにターゲットを広げすぎないよう意識しなければなりません。

―対処―
ターゲットのカスタマージャーニーとそれに紐づくPRロードマップを設計する
ことで、必要なコンテンツを明確に絞りましょう。また、求職者へのインタビューを通じてコンテンツが本当に刺さるのか検証すると共に、コンテンツの有用性をリード獲得とナーチャリングに分けて分析することも大切です。


【ケース2-2.】コンテンツを適切なタイミングで提供できない

せっかく良いコンテンツを作って採用プロセスに活かしても、一律で同じコンテンツをデリバリーしていては、コンテンツの効果が最大限発揮されません。

―原因―
コンテンツのデリバリープランが設計できていないことが要因です。コンテンツは求職者とのコミュニケーションの手段として用いられるものです。

―対処―
リード獲得とナーチャリングそれぞれでデリバリープランを設計します。

もしもリファラル採用が中心であれば、リファラルリストの候補者像にあわせたデリバリープランが必要です。ターゲットごとに最適なコンテンツを見極め、それをいつどのように流通させるのか考えましょう。一見難しそうに見えるかもしれませんが、簡単です。前のプロセスで固めたセグメント分けがここでも役に立ちます。求職者ごとのニーズを理解していれば適切にデリバリーできます。

例えば、シニアエンジニアとジュニアエンジニアでは刺さるコンテンツの内容が異なります。また、そのコンテンツを届けるタイミングも重要です。例えば、面接で出てきた不安を解消するために、面接後の候補者に向けてコンテンツを提供するなどの活用方法が考えられます。

■Chapter3:採用プロセスマネジメント編

【ケース3-1.】採用プロセスを改善せず、内定率1%を許容し続ける

営業プロセスならば受注率30%を目指すのに、採用プロセスはなぜか内定率1%で放置してしまう企業を多く見受けます。もしも営業のパイプラインで受注率1%であれば、プロセスの課題を明確化し、改善施策を打ち出すはずです。それが採用になったとたん、採用母集団形成にとどまってしまいます

プッシュ型のスカウトチャネルからの母集団形成であれば1%の内定率はよく見かけますが、セグメントがきちっとした採用パイプラインにおいては5%以上の内定率は可能です。

―原因―
多くの場合、採用担当者が事業経験がなく、プロセス自体をどう管理したら良いかわからないことが原因です。根本的なプロセス改善の手段を持たないからこそ、応募数至上主義になってしまうのです。また、この原因はプロセス管理の甘さにもつながっています。

ー対処ー
カジュアル面談、一次面接、二次面接、オファー面談と、採用フェーズごとに何をするのか言語化し、達成基準を明確化します
。また、採用も営業と同じように、パイプラインの管理を徹底する必要があることを採用担当者に理解してもらうことも重要です。

内定率が2倍になれば採用数が2倍、さらには売上も2倍になるケースもあるということを、採用担当者との共通認識として持っておく必要があるでしょう。

【ケース3-2.】対応する面接官によって面接通過率が異なる
面接通過率が月や面接官によって変動している場合、ミスマッチが起こっている可能性が高いです。本来採用すべき人材を落としていたり、逆に採用すべきない人を採用してしまったり……特によくあるケースは、自分よりも優秀な人材を落としてしまうという失敗です。

逆にプレイヤークラスのメンバーが面接をすると8割くらい次の面談にすすめていけるケースもあり、面接が機能していないケースも散見されています。

ー原因ー
求職者の見極め基準を設計できていないのが原因です。仮に設計されていたとしても、抽象的な見極め項目のため、現場の面接官がどう見極めていいかわからない状態なのではないでしょうか。

特にベンチャー企業の場合は現場のメンバーが面接官を担うケースも多く、対応する面接官によるボラリティが大きくなることは珍しくありません。こうした曖昧な採用基準のもと行われる面接は、面接対応をする面接官の工数を逼迫するという問題もあります。

ー対処ー

上図のように、採用面接ごとに見極めるポイントを定義します。また、ここに書かれた見極め項目がなぜ必要なのか、また、その要件を満たした人材がどんなアクションを期待されるのかまで落とし込めると、面接の意義が明確化され、面接官の対応の個人差も是正されるため、採用ミスが減ります。アトラクトも面談の早期にもってくるのもポイントです。

面談後になぜ不合格だったのか振り返えりターゲットセグメントに反映させる、面談の見極め質問をアップデートすることも必要になります。


【ケース3-3.】面接時にアトラクトしきれない

面接に要件を満たす候補者が来てくれたのに、内定には至らない。そういった場合、面接でのコミュニケーションに問題が生じている可能性が高いです。面接は自社に候補者が入社することで得られる未来や他社との差異を的確に伝え、アトラクトしきる機会です。ここでアトラクトしきれないと内定率は下がり、母集団形成や採用広報にかかるリソースやコストの負担の増加につながります。

1人内定辞退が増えればまた新たにに 50~100名程度の母集団形成をする必要があるのです。

ー原因ー
面接におけるコミュニケーションの中で、候補者の本音を引き出せていないことが最初の原因です。アトラクトしきるためには、候補者それぞれのキャリアビジョンに応じたストーリーや、そのビジョンを自社で達成できることを示すゴールを設定し、提示する必要があります。

候補者の本音を起点としたアトラクトストーリーの重要性は、特にマネジメントクラスや優秀な人材の採用では必要不可欠です。第二の要因として「なぜ(他の候補者でなく)その候補者が、今、自社にジョインすべきか」という問いに明確なアンサーを提示できなければ、ハイクラスの人材になればなるほど獲得は難しくなるでしょう

―対処―
まず候補者に刺さる訴求ポイントを探るため、候補者自身のビジョンをヒアリングしましょう。ただ将来どういうことがしたいか訊くだけでなく、なぜそれを転職することによって実現したいのか、現職のボトルネックは何であったかといったペインまでしっかり落とし込んでいきます。

また、訊き方にも工夫が必要です。候補者が自身のキャリアの志向性について本音で語ることの意義を伝えるため、なぜそういった質問をするのか説明しましょう。

次に、ヒアリング内容に基づいたアトラクトストーリーを設計します。候補者から生まれたニーズを前提とした自社におけるキャリアパスやメリットをしっかり整理することが大切です。また、現職への残留や他社への転職といった数多の選択肢がある中で、「今」自社に入社すべき理由も明示しましょう。この「今」というのがポイントです

さらには「今組織に必要なのはあなたである」と伝わる必要があります。「あなたのような人」と言うのとは全く違います。代替可能だと思われると、面接者側の熱が冷めてしまいます。組織設計側は、代替可能な状態を目指しますが、面接の局面では「あなたでないとダメな理由」を面接官側が言語化する必要があるのです。


【ケース3-4.】セグメントに分けたプロセス管理ができていない
採用プロセスマネジメントを管理していても、職種ごとにプロセスがひとつしか存在しないケースをよく見ます。例えば、「セールス」「エンジニア」などの大まかな括りでしか歩留まりを把握していない状況です。

ー原因ー
セグメントごとに採用プロセスを管理する重要性が正しく理解されていない
ことが原因です。先ほどの職種を例に挙げ、具体的に考えるとわかりやすいかもしれません。「セールス」と一言で言っても、コンサル経験者と営業経験者ではセグメントが大きく異なり、見極めるポイントも変わってきます。「エンジニア」でもシニアとジュニアでは同様のズレが起こります。

ー対処ー

自社のニーズに応じたセグメントを設計し、セグメントごとのコミュニケーションプランを立てましょう。先ほど挙げたような経験差、出自差によって何を伝えるべきか、そしてどう伝えるべきか、適切なアプローチの手法は異なります。そういったセグメントごとのコミュニケーションプランに基づき、プロセスを管理できることが大切です。

上記の対処と共に、先に挙げた面接フェーズごとの見極め基準も見直す必要があります。こちらがうまくできていないと、1次面接が機能しなかったり、本当に欲しい求職者を面接の途中で落としてしまったりします。

たとえ最終的な合格者数が同じでも、面接プロセスの工数には大きな差が生じるので、その点も踏まえてセグメントごとのプロセス管理を徹底する意識を持ちましょう。

■Chapter4:エンプロイーサクセス/オンボーディング編

【ケース4-1.】カルチャーが暗黙知化し、方針がわからず社員のストレスが貯まる
カルチャーオンボーディングを実施していない場合、短期的には問題なく仕事を進められますが、時間が経つうちに、カルチャーが理解されていないと仕事に対する考え方や進め方の違いが大きなフラストレーションになることがあります。このフラストレーションは、放置するとやがて生産性低下につながっていきます。

例えば、大手企業では社内向けの会議でもパワーポイントで資料を作り、全体設計を完璧にすることが当たり前だったとします。一方ベンチャーにおいては、社内で資料の完成度を求められず、アクションのための論点整理だけが求められることもしばしばあります。

こういった暗黙知を入社する社員に事前に伝えないと、仕事を進めるうちにパフォーマンスが下がってしまうのです。

ー原因ー
企業にとってのカルチャーの重要性が理解されていない
ことが原因です。カルチャーが明文化されていないと、経営者による属人的な説明からしか企業の意思決定の方針を解釈することができず、個々人による解釈の違いや不和が広がっていきます。

ー対処ー

自社のカルチャーを言語化しましょう。上図は、具体的なアクションに対して自社がどのように考え、取り組むべきかを一覧化した一例です。こうした言語化された自社の方針に基づき、カルチャーオンボ―ディングを設計しましょう。

カルチャーを作るときにDO/DONTを作ることで個人レベルの行動に紐づけることができます。カルチャーが組織のアセットであることを理解してもらい、社員全員に浸透させ、納得感をもって仕事ができる環境を整えることが重要です。

キーエンスの知人の例をとりあげます。これはカルチャーを体現しているいい事例だと思います。

全ては会社を永続させるという全社的なカルチャー(行動指針等)が全ての価値を作っているので、やるべきことが明確で分かりやすいです。結果的に、理不尽に感じることが少なくなります。正しい行動指標があることで、年次や役職による「忖度」ができにくい風土も作られるように感じます。

キーエンス知人の声より

いいカルチャーは意思決定をシンプルにし、属人的でない組織としての意思決定力を強めていきます。

【ケース4-2.】前職とのカルチャーのズレを感じても解消手段が存在しない

先に挙げたカルチャーオンボーディングを実施していたとしても、そのカルチャーが現場でのアクションに反映されていなければ意味がありません。しかし、カルチャーとアクションの不一致を認識したとしても、どうフィードバックして良いかわからないと、ストレスを貯めてしまうのです。

自分のやり方が認められないストレスから、「この組織は全然できていない」と社内を否定してしまう社員もいます。こうした不和は周りのメンバーにも影響するため、深刻な問題になりがちです。

ー原因ー
人材の優秀さに任せ、違和感を自力で解消することを暗黙的に期待している
ことが原因です。人材の優秀さとカルチャーへの理解は異なるもので、「任せればなんとかなる」という感覚は往々にして失敗の原因になります。

経営者が直にコミュニケーションをとることで改善されることもありますが、組織拡大が進むと、どうしてもカルチャーに理解がある人とのコミュニケーション密度は下がります。

ー対処ー
前職と現職のカルチャーの違いや差について明文化し、理解を促すことが効果的です。また、そのための機構を作り、カルチャーのズレをチェックする仕組みをプロセスに組み込むと、ストレスを貯める前にフィードバックを得ることができるはずです。

【ケース4-3.】カルチャーアンマッチが離職を加速させる
ここまで説明してきたカルチャーの浸透がうまくいかないまま不満を放置していると、やがて離職が増えます。少人数のうちは問題として認識されなくとも、組織を拡大すると透明性が担保できず、社員の当事者意識が目減りしてしまうことで離職が顕著になってくるのです。実際、私はカルチャーアンマッチによる離職を数多く目にしてきました。

ー原因ー
カルチャーアンマッチによる離職を「合わなかったから仕方がない」と片付けてしまっていることが原因です。カルチャーアンマッチは、採用プロセスにおいてはその原因を追求すべきテーマです。

ー対処ー
離職者へのヒアリングオペレーションを設計しましょう。離職者がどのような点でカルチャーアンマッチを感じたのかヒアリングし、それをカルチャーのアップデートに活かすことが大切です。

ワンポイントテクニックですが離職者の不満を聞くよりも「どうすれば、もっと組織がよくなると思いますか?」と質問をスタートさせると、本質的な課題を聞ける可能性が高くなります

まとめ

ここまで私が書いてきたことは採用における戦略構築のヒントであり、これを成功させることで組織の生産基盤が強化されます。ケーススタディで挙げてきた対処法を、下記の5つのポイントにまとめました。

【組織の生産基盤を強化する採用活動の5つのポイント】

1. 事業戦略と接合し、採用戦略を構築する
2. 自社に必要な人材要件とスキル要件を明確化し、適切にアトラクトできる体制でアプローチする
3. ターゲット求職者の求めている情報を設計し、配信する
4. 採用プロセスをセグメントごとに管理し、ボラリティなくコミュニケーションをとる
5. カルチャーオンボ―ディングを実施し、エンプロイーサクセスにつなげる

このポイントを踏まえた採用活動をすれば、中長期的に見た事業戦略の中で求める人材を採用でき、採用した人材が社内で最大限の力を発揮することができます。また、社内の不和も解消され、リファラルも活性化するでしょう。もちろんその結果売上も伸びますから、誰もがハッピーな状態の企業として事業成長を続けられます。

頭でわかっても実行するのは難しい採用戦略設計


今回のnoteでは採用活動における失敗事例と原因、対処法を段階に分けて細かに解説しましたが、ここに書いた採用戦略設計を採用拡大フェーズ初期にすべてできるメンバーは、正直かなり稀です。

一人でこれができる人事部長を採用するまで採用活動を止めていては、事業成長も停滞してしまいます。できる人がいない、でも人手が不足している。そんな葛藤の中で戦略設計があやふやなまま採用活動をスタートし、結局ここに書いたような罠にはまってしまう企業を、私は多く見てきました。

各社がグロースフェーズ初期から採用戦略を綿密に設計できることが重要です。的確な人材要件から人材を見極め、社内でそのスキルを奮える環境を整えられれば、各社の事業成長は加速するでしょう。


こうした課題意識から、私は採用戦略設計を外部からサポートするパッケージをリリース致しました。今回のnoteで書かれたノウハウに基づき、各社の状況から課題整理と採用戦略設計、そして施策実行の支援を致します。(※リソース的に1~2社くらいになってしまいそうです。)
直接話が聞きたい方は、TwitterのDMかもしくは下記のお問合せ先URLより気軽にお問い合わせください!

少しでも役に立ったと思っていただけたらイイネ、シェアいただけると嬉しいです。皆様にシェアされて、ニーズありそうなら、さらに各セクションの具体ノウハウをまとめてリリースしたいと思います。

お問合せ先URLこちら


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