見出し画像

【レポート】生活と仕事とボランティアと趣味と遊び、境界線はどこに?(事前オンライン説明会vol.2)

こんにちは、事務局の渡辺です。2021年5月11日(火)、場の発酵研究所の事前オンライン説明会Vol.2を開催しました。テーマは「生活と仕事とボランティアと趣味と遊び、境界線はどこに?」。どこなんでしょうね…?

直前まで1歳の娘を寝かしつけながら考え込んでいました。娘がしっかりと眠ったことを確認してZOOMにログイン。"テレワーク"が浸透し始めたこの一年、自宅の中に仕事が入り込んできた人も多いのではないでしょうか。僕もまた、夜のオンラインイベントは家事育児と隣り合わせとなっています。

さて今回の説明会。様々な立場の人たちが20名ほど参加してくださいました。大学生、福祉職、コミュニティマネージャー、デザイナー、CMプランナー、設計事務所勤務、出版社勤務、シンクタンク勤務、製材所勤務、町内会役員、議員、などなど・・。

これはチェックインのときに皆さんが「やっていること」の項目に対して答えてくれた内容ですが、参加者から「仕事を答えなくてもいいんじゃないかなと思いました。何を答えてもいいんじゃないかな、でも仕事の内容を答えてしまう」というコメントがありました。

たしかに、僕も「コミュニティデザインという仕事をしています」という自己紹介をしがちです。境界線を考えるときに、生活の中で"仕事"がいかに大きく陣取っているのかを実感する瞬間でした。

場の発酵研究所は、「場」を問い直す研究所

テーマについて話し合う前に、発起人の藤本より場の発酵研究所について説明がありました。『場づくりは、場「づくり」か。』同じく発起人である坂本との対話から生まれた問いから、この研究所は始まったと彼は言います。

「場の発酵研究所」とは、困難や問題がますます増えていく社会において、どのようにわたしたちが生き、新しい活動や営みを生み出していくことができるか(どう「場」を編み直していけるか)を思考・構想し、実験・実践に落とし込むための研究所です。

このコンセプトの詳細については研究所のHPに譲りますが、人間以外も含む様々な要素が関係しあって場が成り立つような過程を「発酵」と表現し、場の発酵について学び、実践しようというのが研究所の趣旨です。

全体スケジュールと内容は以下の通り。

場の発酵研究所スケジュール_アートボード 1

特徴1

多様なゲスト→後半のゲストは未定
(みんなで決める・内容もつくっていく)

特徴2
参加費の一部を積み立てて、研究費にする。
9月以降に各自・またはチームを組んでプロジェクトを検討

オープンプレゼン大会の実施

投票後、研究費を各プロジェクトに還元

特徴3
全国各地の実践者が第三者:フェローとして関わる
FBグループやzoom、メンタリングなども可能

場をつくる、とは何なのか?「むらおこし」って何なのか・・?

研究所の概要を説明し終えたところでさっそく、参加者から質問。運営メンバーはどのような思想をもって場づくりに取り組んでいるのか?坂本が代表して答えました。

スクリーンショット 2021-05-12 15.25.26

坂本:自分が住んでいる地域をもっとおもしろくしたい、そう思ってやってきたことが結果的に「場づくり」と呼ばれていると思います。東吉野村という場所が自分にとっても周りにとっても、おもしろくなるといいと思う。僕たちはオフィスキャンプ東吉野という場をもったことにより、活動を日常化することができました。まさに、"場の発酵"に定常的に取り組めていると思います。よく「村おこし」と呼ばれますが、自分はそのつもりでやった感覚はなく、結果的にそう呼ばれるようになりました。

それにかぶせて参加者からさらに質問。
「むらおこし」って何なんでしょうか?と。
(場の発酵研究所はこんな風に、問いに問いが重なりながら進んでいくのだろうと思います)

渡辺:そこに住む人たちが、自分たちの地域にはもっとこんなことが起きるといいんじゃないか、こんな活動に取り組むと自分たちの生活はもっと豊かになるんじゃないか、と自発的に考えて動き始めることだと思います。そんな活動を取り上げて発信するために、行政などが言い始めたような言葉ではないでしょうか。そんな中で「むらおこしをしてください」はキッカケにはなるかもしれませんが、根本的な動機にはならないと思います。
藤本:「興す」って楽しそうですよね。楽しく引き受けていくプロセスのことを言うのかなと思いました。買い物のような消費行動を地域に貢献するとは思いますが、消費を越えて地域に関わる可能性に気づき、誰かに言われることもなく、地域を楽しくしていくことを引き受けていくこと。それが、まちを興していくことにおいては大切なポイントになると思います。

生活と仕事とボランティアと趣味と遊び、境界線はどこに?

概要説明の段階からトークが始まったかのような雰囲気がありましたが、話題を切り替えて後半のテーマトークへ。はじめに藤本から問いかけがありました。

スクリーンショット 2021-05-12 16.00.52

・そもそも「生活」という言葉の範疇が狭まっているのではないか?ワークライフバランス、あるいはワークライフインテグレーションという言葉に象徴されるように、生活と仕事が同レイヤーで語られてしまっている。そこにそもそも違和感がある。
・自分(の会社)のプロジェクトは、①仕事、②活動、③遊び、という3つの切り口で分けている。仕事は金銭的報酬のある(利益の出る)仕事、主にクライアントワークがここに当たる。活動(上記の言葉で言うとボランティア)は社会的価値はあるが、まだ事業化されていないものと定義している。遊びは、そもそも金銭的対価を求めていない取り組みのこと。この3つのバランスを追っていきたい。
内田樹さん(『日本習合論』)より。農作物は商品ではない。安定的に供給されている際においては商品としての様相を呈しているが、供給が一定の数量を下回ると一気に「糧」としての側面が現れる。
・金銭的報酬のない「仕事」(=資本主義市場経済的労働の外部に位置している「仕事」)に対してのメンタリティが大きく変わってしまったのではないか?→自治会の加入率の低下。生活における身の回りの作業の外注化・外部化。経済成長の結果。
・不可視的な労働、贈与的な労働によって社会が維持管理されてきたのではないか?(寺社仏閣や農業の話。または自分がどんどん謙虚になっていったという話)
・現在取り組んでいる尼崎における農園(武庫之のうえん)の活動については、ある種の公共事業だと思っている。社会的共通資本、あるいはコモンズとしての農業であり、農園。公共財を自分たちでデザインしていくこと。これは資本主義的な「仕事」の範疇では語れない。しかし、めちゃくちゃ大事なんじゃないのか?
・資本主義市場経済の論理と、そうではないものとのバランスをどう取るか?が自分に課せられている課題だと思っている。
・「趣味はなんですか?」という質問は相当に困る。人と話すこと、ファッション、美的なものに触れる(アートや建築、造形など)などと言っているが、よくわからない。趣味ってなんだろう。

生活と仕事、今はそこに大きな境界線が敷かれているように思いますが、そもそも「ボランティア」や「遊び」なども含めて「生活」ではなかったか?そんな問いかけのように思いましたが、皆さんはテーマを聞いてどんなことが思い浮かびましたか?

藤本と僕が一緒に取り組んでいるのが、尼崎市武庫之荘という都市部で農業に取り組む「武庫之のうえん」。本来は生活の一部だったけど都市化の過程で失われつつある「食べものを作る」という営みに、都市部に住みながらも取り組んでみる、というもの。僕の仕事柄のためか「行政から頼まれたんですか?」と言われることが(本当に)ありますが、完全に自発的に始めたもので、いわば生活をつくる営みだと思っています。

画像4

また食べ物や水を手に入れることの価値について、坂本は話します。

坂本:市場が機能しているときは、食べ物や水は定められた対価を支払えば手に入る。しかし例えば戦後の焼け野原の時には、食べ物がない人たちが身の回りの高価な物を農家に持っていき、米一升と交換してもらっていたそうです。そんな有事のときに、人はどう生きるのか。実は水の入手が一番難しくなると思っていて、都市部でも当たり前に手に入るように見えるが、断水すると一気に難易度が上がります。

生活をつくること。農業というと仕事なのかもしれませんが、村では農作業しながら近所の人と話したり、ぼーっとしたりと、それはたぶん生活そのものであって、生活と仕事という境界線がない。そんな農村部の風景は、生活をつくることの原型なのかもしれません。

特に戦後から生活のサービス化が進み、今では生活インフラの整備はもちろん、育児も介護も家族ではない外部に頼る時代となりました。そんな話から、訪問看護に取り組む参加者からコメントがありました。

訪問看護という仕事をしていて、生活の面とかプライベート的な感じで力になれそうだなと思っても「それは利用者-看護師のサービスを超える」と分断されてしまうことがあり、もんやりします。ここまではやる、ここからはやらない、など仕事の境界がはっきりしすぎている分、生活サイドの利用者さんとの壁ができてしまってるな〜と今回の境界の話がしっくりきました。

「発酵」というと日本酒のことが思い浮かびますが、より良いお酒の発酵には自然環境も要素として影響します。場の発酵においてはどんな要素があるのでしょうか。お金を払って外部化してきた生活を「場の発酵」で楽しく取り戻していくには、何を発酵の要素として捉えていくといいのでしょうか。そんなことを考えるのが今回の研究所なのかもしれません。

今後の予定

▷オンライン説明会 vol.03
5月16日(日)9:00〜10:30
住まい、という場づくり。大きな視座と小さなアクションについて
https://fb.me/e/1hbfSXiB8

▷オンライン説明会 vol.04
5月17日(月)20:00〜21:30
場の発酵研究所公開座談会(フェローとのお話会)
https://fb.me/e/iPgyKksKG

●本講座の申込み〆切:5月23日(日)
▼申し込みフォーム(本講座)
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSekqY9Pi_RUlwVc2gpyECYMKppndXHEiXlglUO9W09VdS9ppw/viewform

参加枠について

1. 特待生参加:100,000円(税込)
2. 一般参加 :120,000円(税込)
3. 一般(応援)参加枠:140,000円(税込)
4. 学生参加枠:80,000円(税込)

※いずれも
全18回の講座参加費
みんなの研究費(15,000円)
期間中のメンタリング / 相談(1h程度)すべての費用を含みます。

1. の特待生参加については、申し込みフォーム以外に別途「研究計画書」を提出いただき、選考させていただくというプロセスがあります。
  ① 場の発酵研究所において研究したいテーマ
  ② 検証したい仮説
  ③ 研究方法 / 研究計画
  ④ 研究の成果イメージ / 影響」
をA4一枚以上で、申し込み時にご提出ください。

「ちょっと面白そうじゃん」「育成や普及に協力したいと思っているよ」という方は、一般(応援)参加枠にぜひ。それぞれ、参加中の特典にはいっさい変わりがありません。

▼本講座イベントページ
https://fb.me/e/yzuAagfE

▼ 場の発酵研究所について詳しく(LPページ)
https://peraichi.com/landing_pages/view/banohakkokenkyusho

どんな研究所になるのか。
どんな発酵が起きるのか。
今から楽しみでなりません。みなさんの参加をお待ちしています。


いつもご覧いただきありがとうございます。一緒に場を醸し、たのしい対話を生み出していきましょう。