見出し画像

何も変わらない、変えようとしない

寒気のおかげで、外はまた銀世界になりました。寒いです。暖房もなかなか効きません。春はまだ遠いですね。

さて皆さんにもお気に入りの作家や、読んでおきたい作家さんが必ずおられると思います。私にもありますが、そのお一人が昨日読み終えた作品の著者吉田修一さんです。

画像1

琵琶湖近くの介護療養施設で、百歳の男が殺された。捜査で出会った男と女―謎が広がり深まる中、刑事と容疑者だった二人は、離れられなくなっていく。一方、事件を取材する記者は、死亡した男の過去に興味を抱き旧満州を訪ねるが…。昭和から令和へ、日本人が心の底に堆積させた「原罪」を炙りだす、慟哭の長編ミステリ。(「BOOK」データベースより)

本作の著者吉田修一さんというと多くの傑作がありますが、その多くが人間の悪の部分をさらけ出すという点が共通しているように思います。その傑作が「悪人」「怒り」といった作品です。

本作は週刊誌に連載された作品ですが、先の戦争での隠れた人体実験と障害者施設での無差別殺人事件から着想を得たような作品です。

百歳の男性が介護施設で低酸素脳症により亡くなります。

男性は人工呼吸器の不具合によってか?それとも当直の看護師、介護士たちの業務上過失により亡くなったのか?あるいは殺害されたのか?

事件を担当することになった娘の詩が産まれたばかりの刑事の濱中圭介。
介護施設に働く介護士で圭介に支配されていく未婚の豊田佳代。
臨床データ改竄による薬害被害という事件に追う雑誌記者の池田立哉。

この3人が事件に次第に引き寄せられていく様子は上手くて、物語に引き込まれていきます。

さらに旧琵琶湖ホテルの特別展示室に飾られていた一枚の写真(満州にあった医療法人の経営者と旧満州の銀行家と京大教授)が死亡した男の過去を引き寄せ、旧満州のある湖の湖岸で起きた事件へも引き寄せていくあたり、秀逸ですね。

湖岸の地方都市、介護養護施設、白い軽自動車、YouTubeの映像、どこにでもいそうな男女関係、閉塞感が充満し、幸せの感じられない現実に打ちのめされ、何も変わらない、変えようとしない、希望も見いだせない日々を送るという、我々の周辺にあるであろう、表立って語ることができない在り様が象徴的に描かれていて、私はショックを覚えました。

先の戦争での負の部分をどうミステリーとして描かれるのかが興味がありましたが、その辺りは心にわだかまりを残す苦い終わり方でした。
私としてはとても残念でした。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
週末の金曜日、体調管理を怠りなく、お過ごしください。

バックミュージックはこちら

#吉田修一 #新潮社 #読書note #読書 #シニア #本のある暮らし #いなか暮らし #本好きな人と繋がりたい #読書好きな人と繋がりたい #毎日note #毎日更新






いつも読んでいただき、ありがとうございます。これからも励みますね。