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【どうする家康】強右衛門と亀姫の『美女と野獣』感に泣く。家康の成長を邪魔しているのは瀬名か?第21回「長篠をすくえ!」レビュー

NHK大河ドラマ『どうする家康』(以下、『どう康』)第21回のレビューです。

前回の感想はこちら↓

(※以下、ネタバレ注意)
(※本記事のセリフの引用箇所は一部ノベライズに準拠しており、ドラマのセリフとは異なる場合がございます)

●「阿月」エピソードとは表裏一体か。完全に構成を合わせてくる物語の描き方に鳥肌

すねぇもーーーーーん😭😭😭😭😭

いやぁ、マジ泣けました……放送終了後は僕みたいにテレビに向かって叫んじゃった同志たちもきっと多いことでしょうけど。

そもそも岡崎体育さんが鳥居強右衛門としてキャストに抜擢されたという話が出たのは今年の2月。当時の放送はまだ第5話あたりで「武田と戦ってる最中の話なんて、家康も相当成長しとるだろうし、だいぶ先の展開やなー」という印象でしたけど。「戦国版走れメロス」というワードにワクワクしたのも、もはや懐かしいとさえ感じてきます。

でもその後、金ヶ崎のエピソードも挟みましたよね。鳥居強右衛門より先に、「お市の侍女の阿月」という架空のキャラクターが、小谷城から金ヶ崎まで約40キロもの距離を駆けて家康たちに危機を知らせていました。

「戦国版走れメロス」って、阿月じゃん⁉鳥居強右衛門のエピソードくる前に架空のキャラに似たようなことやらせてどーすんだよ!みたいな心配もあったわけですけど。いやぁ、杞憂でしたね……阿月でも泣けて、強右衛門でもまた完全にボロ泣きでした。

確かに阿月も「走れメロス」ばりの展開ではあったのよ。しかも、あのときも朝倉攻めをやるのか辞めるのかで、信長と家康の言い合いみたいな物語が間に展開されてましたよね。

そして第21回のここにきてもまた、信長くんと家康くんの激しい仲間割れ。「織田が徳川に何をしてくれたー!もう武田につく!」「武田につくのなら徳川、テメーはもう敵だ!」みたいな言い合いがよ……三方ヶ原のときの「一蓮托生」「一心同体」は何だったんだと言いたいところですけれど。

でも、それが戦国なのよ。状況は刻一刻と移り変わるものです。『真田丸』でも「裏切るか?裏切るか?」と、真田昌幸パパの賭博師のような主従関係変えが何度も繰り広げられていたものですけれど。まじで真田一族こそ、よう生き残れたものだわいな……。

ともかく、「金ヶ崎からお退きそうらえ」と言いに来た阿月によって、共に逃げることとなった織田と徳川。今回は、「長篠を助けてくれ」と強右衛門が頼みに来て、再び織田と徳川が結託することになるわけですが。

ベクトルは真逆なんですけど、物語の構造的にここまで似せてきたのかと。まるでタロットカードの大アルカナのペア(「女帝」と「皇帝」、「月」と「星」)みたいに表裏一体感が見られました。

●信長と家康の関係にも変化が?少しずつ姿勢を変えていく家康と、まったく変えない信長

ただもう、ほんとギリのギリ。ここまできて、信長くんに対する家康くんの態度もだいぶ変わってきましたもんね。桶狭間のころは顔思い出すだけでビビリまくっていたんですけど、同盟を結んでからは徐々に徐々にものを言えるように。金ヶ崎では遂に「あほたわけ!」を言い放ち、そして三方ヶ原の直前では自ら鷹狩に呼び出すということまで成し遂げました。

もう、さすがに家康くんも気づいたんじゃん。「あ、信長、こいつ俺のこと好きなんやな」と。だからこその今回、「援軍をよこなないなら織田との縁を切る」とまで強気で出れるようになったということで、これは自然な流れだと思うんですけれど。

これは家康くんの人間的な成長とは違いますよね。ただの人間関係の変化です。相手に対する畏怖の念が薄れてきただけと言いますか。

逆に、家康くんに対する信長くんの態度はずーっと一貫してます。完全にジャイアンなんだよ。「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」みたいなさ……それでまさか、亀姫と長篠の奥平信昌(演:白洲迅)の縁談を、信長の命令で進めていたとは。

いくら対等な関係つったって、信長くん、どこかで「家康のクセに」と感じているんですよね。バカにしているとかじゃないんです。ジャイアンだって、のび太に「心の友よ」と言い寄ったりもするでしょう。信長くんも「何だかんだ言って家康、お前も俺のこと好きだろ?」って思ってるわけですよ。

でも主導権を握るのはあくまで自分。家康の方から「縁を切る!」なんて言ってきたら「おーおー、言いやがったな。お前がそんなこと言える立場じゃねぇぞ。じゃあ望み通りそうしてやるけど、本当にいいのか?」みたいな感じになっちゃうんですよね。

それで、でも怒りを通り越して、殊勝に出るのが岡田信長くんという男の恐ろしいところですよ……「徳川殿、再三の求めにもかかわらず、かように遅れたる由、心よりお詫びいたす」だとか、心にも思ってないこと、よう言うぜw

ビジネスでも、デキる人ってこういう振る舞いをよくやるんですよ。「押してだめなら引いてみろ」みたいなね。「あら?契約を切られるのですね?それはそれは、これまで大変お世話になりまして、ありがとうございました!」とか、急にしおらしい反応を見せつつ……。

「しかし、それなら残念ですね。これからは競合他社さんの扱いとなっていくわけですからね」なんて。「我らのようなこんな大企業との連携が切られて、困るのはあんたらの方ですよ」感をめちゃくちゃ出してくる。

こういうのは普遍的な人間の描き方な気がしますね。「ジャイアンとのび太」みたいでもあり、「BL」みたいでもあり、「ビジネス」みたいでもあり。見る人の立場によって、いろんな見方が出てくるところでもあると思いますけど。

それを、大河という舞台を借りて「信長と家康の関係」でよう描くもんだなと、毎回観ていて面白いところでもあります。やっぱり、1話からずっとこの2人の関係を描いているんですよこのドラマは。それだけに、逆に刻一刻と近づいてくる「本能寺の変」を、どう受け止めたらよいのかよくわからなくなってきますけれど……。

●トキューサの生まれ変わり?オトボケポジション亀姫ちゃんもついに嫁入りへ

と、先の展開はともかく、今回は亀姫ちゃん(演:當真あみ)も大活躍でしたね。結局、彼女が今回の信長と家康くんのケンカを「私のせいで起きてしまった!」と早合点してくれたおかげで、逆に二人の仲を取り持つことになったし、長篠も救われる未来へ続いていくこととなったのでした。

にしても、この亀ちゃんの描き方が本当に今までめちゃめちゃ魅力的でしたよね。第19回から「お父上に虫がついた」なんて話が出た折には「毛虫?」なんてトボけたことを言う。第20回でも、岡崎城の寝室で「慣れる場所ではなかなか……」と言いつつ次の瞬間にはグースカ寝ていました。

そして第21回、岡崎まで走ってきて空腹でぶっ倒れていた鳥居強右衛門に1回目、2回目、3回目と徐々にデカくなる石をぶつけようとしたり。強右衛門に握り飯を渡す時には砲丸投げの球くらいの特大サイズを渡したり。

「ピュアすぎる」というか、「オトボケがすぎる」というか。何か既視感あるよね……そう、まるで『鎌倉殿の13人』の弟役、とキューサこと北条時房ではないですか。まさかトキューサの生まれ変わりなのか?蹴鞠やらせたらめちゃくちゃ上達したりすんのか⁉なんて勝手な妄想までしてしまいましたけど。

そんな亀ちゃんが、ついに嫁ぐ……史実通りの展開とは言え、もっとオトボケポジションとして居座り続けてほしかった気もします。まぁ、きっと徳川家臣団の誰かが代わりを引き継いでくれるだろうとは思っているのですが。

●『風林火山』の勘助と由布姫を彷彿とする、強右衛門と亀姫の関係。ぜんぶ愛

そして、そんな亀姫ちゃんと強右衛門のエピソードも泣けた……最初は亀ちゃん、強右衛門のことを「熊か、大きな猿」呼ばわりしていたわけですけれども。強右衛門にとっては最初から、長篠の希望となるべき、主・奥平信昌の縁談相手だったわけです。石をぶつけられようが、クソデカ握り飯を寄こされようが、強右衛門にとって亀姫は、美しい姫であることには変わりなかった。

そして岡崎城で「強右衛門の唄」を歌っていた際に見せてくれた、亀姫の笑顔……本当に天使のようでしたよね。実はあの「強右衛門の唄」、続きがあったんだぜ……。

「ほいでも優しいお姫様 姫の幸せ 祈ります」

未公開シーンの動画内では、そんなフレーズが追加されていました。これもうさ……愛だよね。愛以外の何物でもないよ。

もちろん、亀姫が嫁ぐ相手は奥平信昌。強右衛門はナイトと言うか、そもそもだいぶ身分の低い一兵卒であって、本来なら亀姫なんかとはお近づきになることさえなかった存在。しかも毛むくじゃらで汚いナリをしていたのに、泥まみれの手を、亀姫に握られるんですよ。

そして終盤のシーン、武田勢に捕まって「徳川様は助けは来ん」と嘘の報告をさせられた後も、結局、手を見て思い返すんですよね。亀姫が握ってくれた手を。「嘘じゃあ~!殿!徳川様はすぐに参らっせるぞ!」「徳川の姫君はな、麗しい姫君様じゃ。ようごぜえましたなあ。大事にしなされや!そりゃあまあ本当に素晴らしい姫君じゃあ!」

これ、本当にね……別の大河ドラマですけど、『風林火山』の山本勘助と、由布姫の関係を思い出すんですよ。由布姫と言えば、武田信玄の側室であり、武田勝頼の母となった人ですけど。ドラマに描かれた勘助と由布姫も、愛でしたよね。

下心があるとかはまったくなく、ただひたすらに献身的な愛。我が主にとって大切な女性として、汚い身なりの勘助が麗しい姿の由布姫を世話する姿は『美女と野獣』感もあったんですけど、それ以上にプラトニックで美しかったんですよ。

今回の強右衛門と亀の描き方も、きっとそれに近いと感じました。強右衛門が無事に長篠城に帰り、早くも嫁いできた亀姫と抱き合うシーンが描かれたのは、完全に強右衛門が見た幻ではありましたけれど、めちゃめちゃいいシーンだったと思うんですよね。

オフショットも最高やぞ……!

●なかなか成長しない家康と対をなす、成長しすぎた妻の瀬名。運命の時まで、あと……

最後に、冒頭の瀬名ちゃんと千代のシーンもですけど、やっぱりゾクゾクするものがありましたな。

「毒を飲まされるところでございました」

「毒など入っておりません」

「そのきれいな眼に引き込まれて、いらぬことをしゃべってしまう毒でございます。怖いお方でございますね」

千代にここまで言わせるとは。とにかく、瀬名ちゃんの成長が半端ないのよ。よくアンチなニュースサイトでは、「瀬名の見た目が幼すぎて、とても信康や亀姫のような大きな子がいるようには見えない」だのなんだのと書かれていたりもしますけど。わかってねぇよなマジで……見た目じゃないのよ。確実に瀬名ちゃん、人間としては成長しまくってるし、もはや今川領で次郎三郎(当時の家康)と追いかけっこしていた頃とはぜんぜん違います。

ちゃんと一人の母親だし、徳川の当主の妻だし、何より今は岡崎を守るトップとしての役目をしっかり果たそうとしている。信康や亀姫、そして五徳なんかは、見た目が成長してるばかりで中身はまだ子供なんです。「コンフェイト」を欲しがってた頃と大して変わりないとさえ思えます。もちろんそれも、彼らの演技力の成せる技なんですけど。

でも同時に、ここまで成長したキャラクターがこの物語に居座り続けていいのかなと。家康は相変わらずビビリなところもあるし、問題を後回しにしまいがちなところもあるし、頼りない。けれどこれはそんな家康を主人公にした物語なわけですから。そんな彼を成長させるために、ある意味では瀬名が「頼りになり過ぎてしまって邪魔」なところだってあるんですよね。

結局今回、信長を動かしたのだって、瀬名が機転を利かせて言ったこの言葉でした。

「我が夫は、織田様の臣下となるを拒むものではございませぬ。ただ、これは家臣一同にも関わる事柄ゆえ、よく話し合う猶予をいただきたいまで。ひとまずこのことは脇に置いて、長篠を救うことを先になさってはいかがでございましょう」

マジでデキる妻すぎますよね……こりゃ、一生尻に敷かれちゃうな家康は、という感じがします。むしろ、そうあってほしいんですけどね。

まじでこのあとの、否が応にも来てしまう鬼展開が怖くて仕方ない。運命の時は、刻一刻と迫ってきています……視聴者の皆様へ、どうかお願いです。絶対に、ここで離脱するんじゃねぇぞぉ‼

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