もう入院したくない 2/2
〜手術前日〜
朝ごはんから、徐々に食べ物・飲み物が制限されていきました。
下剤と浣腸を併用していったので、エネルギーになるものが身体に何も残っていない感覚がすごく苦痛でした。
看護師、薬剤師、麻酔医など色んな人がきて説明していきましたが、あまり頭に入ってきませんでした。どこか他人事のように思っていました。
怖いという感情もありませんでした。
どちらかというと、血液検査とMRIの結果を聞く時のほうが怖かったです。結果によっては長期療養は免れなかったので、一時期は死をも覚悟しました。
→22歳で遺書を書いた話
〜当日〜
手術室には歩いて入りました。何となくドクターXを想像していたので、一番最初に浮かんだのは、「ちゃっちいな」でした。
大きなガラス張りの見学室もなければ、アキラさんもいませんでした。
前日、麻酔する前に流してほしい曲を聞かれていて、RENTの『Seasons of love』をお願いしたのですが、ちゃんと流れていて笑いました。
=
ところで私は今回の手術にあたり、目標を立てていました。それは、
麻酔に勝つ
現代の医療体制に対する体当たり的抗議の結果は、意外に思われるかもしれませんが完敗でした。
一般的な麻酔のイメージは、"眠るようにスッと効く"だと思いますが、実際はかなり気持ち悪いです。例えるなら、
しこたま飲んで視界がくらみ吐き気もする状態でベットに体が沈み込んでいくように落ちる
眠るじゃなくて、落ちるです。1秒たりとも抗えない感じが伝わるでしょうか。
私が落ちる寸前に発した言葉は「やばい」でした。最期はせめて「ありがとう」とか言いたいので、やばいが最期の言葉にならなくてよかったです。
麻酔から覚めるのも一般的なイメージは、
"目をゆっくり開けて「ここはどこ…?」"
だと思いますが、実際はもっとしんどいです。
まず、口に入ってる人工呼吸器の違和感で目が覚め嗚咽。
それから、喉の痛み。寒気。鼻カニューレと尿カテーテルの違和感。血栓予防の足マッサージ機の圧迫感。
傷の痛み。点滴の痛み。喉の渇き。対位も変えられない。
一言で表すと、バンドのない身体拘束
今まで生きてきて肉体的にも精神的にもこんなに苦痛だったことってないんじゃないかレベルの地獄は、翌日の朝まで続きました。
〜翌日〜
諸々の管も、足のマッサージ機もない開放感。
その日初めて飲んだ水、食べたご飯の美味しいこと美味しいこと。
普段何気なしにしている食事、排泄、移動、着替え、整容がこんなに大変なことだったとは手術をしなければ気づかなかったと思います。
みんなすごい!えらい!生きてるだけで本当にえらい!
=
退院して初めて外に出た時の
日差し、そよ風、擦り合う木々の音、鳥のさえずりが全身の穴という穴から入り込んでくるような感覚は、また入院しないと味わえないだろうと思います。
ですがもう二度と入院も手術もしたくありません。
世の中のもっと重症な人たちは、もっと苦痛なんだろうなと思います。短い入院生活を経て、僭越ながら気持ちが少しだけ分かった気がしました。
=
もう入院したくないは自分が忘れないために書き始めたものですが、
書くという"選択"が偶然ここにたどり着いた知らない誰かに少しでも役に立つことを願っています。
**「Life is a series of choices」
人生は選択の連続である ** -シェイクスピア
おわり
#エッセイ #病気 #入院 #闘病 #手術 #腫瘍 #卵巣 #体験記