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アートセンターと公民連携を考える 狂犬ツアー@山形にて。

木下斉さんが全国各地に赴いて、地域の課題や公民連携、各地で山積している地域づくりを、円滑に経営していくビジネスモデルを考える自主企画
「狂犬ツアー」。今回の舞台は山形。

今回の会場は、今月1日にオープンしたばかりの「Q1(キューイチ)」。

JR山形駅のコンフォースに大きなフラッグ広告が。

旧市立第一小学校の校舎をリノベーションし、施設整備は山形市、運営は民間運営団体で行う公民連携(東北芸術工科大学との連携) し、創造都市やまがたの拠点施設「やまがたクリエイティブシティセンターQ1(キューイチ)プロジェクト。

旧市立第一小学校外観
1927(昭和2)年に建てられたこの旧一小は、山形県初の鉄筋コンクリート造の学校建築
元々は学校とは思えないモダンな雰囲気。
ホームルーム番号はそのまま残されています。

会場は、カフェ「つち」
定員20人入ればめいっぱいの会場。

狂犬ツアーとは、木下斉さんが全国各地へ勝手に行って、場所借りて仲間と自主開催する身勝手な勉強会


ここからは狂犬ツアーで話が出た内容となります。


「アートセンターと公民連携~日本、台湾を横断して考えるアート/デザイン拠点の可能性」
狂犬ツアー@山形

木下斉さんはじめ、まちづくりや各専門分野の専門家が講師陣が入り、公と民の異なる手法から都市経営の課題で解決を学び実践する都市経営プロフェッショナルスクールで400人以上を排出。
卒業生が全国各地で公民連携してまちづくりのプロジェクトに挑戦している。

事例として
○大阪大正地区 尻無川の水辺空間飲食店経営者が河川活用した「タグボート大正」。水上にフードホール、レストラン、ホテルなどが入った複合施設。人が集まる場所になっている。
http://tugboat-taisho.jp/

○大阪大東市morineki 
https://matituku.com/morineki/

公営住宅を建てるのに1世帯あたり3,000万ほどの多額の公費がかかる。
公営住宅→低所得者層だけが住む集合住宅地はNG←閉鎖的な公営住宅
公共事業から民間事業へ(民間と公営がmixし運営している)
・公営住宅地にテナントやオフィスを一体化させることでテナント収益も入る。
元々隣接していた公園との垣根を外し、ランドスケープを取り入れ、公園の中に店舗・オフィス・住宅がある共同空間を生み出しエリアの価値を上げている。

など、卒業生が地域で実際にアクションを起こした事例をまとめた公民連携ケーススタディブックもある。

1.ローテク×クリエイティヴ

台湾政府文化部国際招聘委員も務めている木下所長。台湾には旧日本統治時代の施設を活用したアートセンター大人気で、木下所長自ら台湾の各地をまわる中で共通していえることは、古い施設と新たなアートなどのクリエイティブの融合、アート振興とクリエイティヴ産業とリノベーションの重要である。ということ。

日本の中心部東京は本社機能が集中していて、東京都の税収の大半は本社費である。大企業の本社で企画・デザインなど、広範なクリエイティヴ産業は担い、全国各地のチェーン店へ使われている。という状況になっている。
日本の現状として、そうした大企業が今は成長が伸び悩んでいる。この状況はますます深刻になってくると考えられる。

単なローテクでは付加価値がつかない。
日本にはまだ多くの伝統工芸品などの産業があるが、旧式のまま作り続けていても付加価値はつかない。
そこにクリエイティブが加わることで新しい価値が生まれる。
ローテク×クリエイティヴで地方をせめる。
世界中で、ハイテク競争が激化している。
一方でローテク産業の企業価値は高い。

エルメスなどの革製品の老舗ブランドは、代々受け継いできた革製品の製造にユニークなデザインとマーケティングを組合せる。
需要と供給をコントロールし、価格を引き上げる。
“欲しいという客数より一台常に少なく売れ”

フランス・シャンパーニュ 人口約18万人
シャンパーニュメゾン320社/ぶどう栽培従事者1万5800人/売上高49億ドル(約7100億円)
売上はまちに投資し、ランドスケープを取り入れて街全体をブランディングしている。

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台湾でも日本酒工場跡地を活用した文化創造特区「華山1914文創発展地区」や、高原気候を生かして女性2人で起業しラベンダーを育成し、女性やファミリー向けに人気エリアとなっている「草森林台中」などがある。

また東京駅内にも、廃校舎を利用したアートセンター「3331ArtChiyoda」では、複合テナントで稼ぎ、アート企画を支える仕組みで運営している

瀬戸内芸術祭はローカル景色とアートで多くの人を呼び寄せているが、インフラと地域産業が不足し、観光産業面でプラス(地元にお金を落とす仕組み)が作り出されていない。とてももったいないし、地域がより衰退していく。
[テーブルチェック×、日本語オンリー、予約×、電子マネー×などなど]

パッケージでお金が落ちる仕組みづくりが大切。


2.クリエイティブが産業全般に必要な理由

山形は芸術工科大学と連携し、ビジネスクリエイターを排出している。
ただ、単なる供給者ではいけない。生産能力があってもそこに付加価値をつけなければ地方の価値は認められない。
そのための地方におけるアート、デザイン、クリエイティヴの機能を取り入れて、産業をいい意味で殻を壊しながら、バージョンアップしていく。
何度も来たいという企画にしていく。

人はそれを目に見るまでは自分は何が欲しいのかわからないものです。

3.プレゼン1「地域資源を活用した寺活用」

東京でコンサルの仕事に従事、今年4月に山形へ移住。市役所職員。

山形市内に60ヶ所ほど寺が点在している。
「デジタルデドックス」を切り口として、本堂でヨガや精進料理を食べたり、田植え稲刈りなどの体験型のカリキュラムを組み、《ファミリー向けの日帰りツアー》と《本堂に宿泊する成人向けツアー》など企画している。
アドバイスを欲しい。

参加者から
・お寺は信仰の場所。聖地であり、祈りや瞑想する場所。
そこに、ファミリー向けやイベント目的の企画を安易にもってきてしまうと、檀家さんとお寺との関係を崩しかねない。
また、ヨガに贅沢な精進料理に田植えなどモリモリの企画にしてしまうと逆にターゲットを絞りにくく集客力が欠けてしまう。
日帰りツアーには日帰りの客しかないし、宿泊ツアーには宿泊の客しかない。混在は成り立たない。
【誰に向けてやるのか】【どの層に向けてやるのか】ターゲットを絞ることが必要。
・そして、運営企画は誰がやるのか?も重要。
コロナ観光支援事業として、企画は行政が持ちかけて、コンサルが請け負って、補助金をつぎ込んだ企画がいくつも生まれたが、結局補助金が出ている時はやるが、任期がきれるもしくは補助金が終われば終了になった事業主が数多くある。
・やるならば、お寺自らからやるべき。
福井県にある「松永六感」は、国宝・明通寺の麓に宿があり、そこは食事はオーベルジュ(別会社が運営)が入っていたりする。寺は宿泊のコーディネートに専念して、食事は外注すれば、やり始めるハードルは低くなる。



4.プレゼン2「国立公園のふもとの町をどうデザインするか」

福島県猪苗代町から参戦。
福島県には磐梯朝日国立公園がある。
人口1万3,000人に対して、観光客は年間200万人ほど訪れている。
学生時代からプログラミングが好き。学生時代に福島県に縁があり、東京⇄福島を行き来するようになる。
公有財産として、廃校となった学校を地元の工務店と連携し、廃校をリノベーションして、工務店が主体となって、カフェ・ショールーム・アウトドアショップを運営している。


今後、アートギラリーを新設予定。
ただ、現状として、カフェの利用者は多いが、次にお金を落とす場所がない。
ウォールアートフェスティバルなど福島県内でも芸術祭も盛んになっている。
猪苗代湖もあり、景観は良いが整備されていない。(お金を落とす仕組みになっていない。国立公園内なので、常設する建物の規約が厳しい)
アドバイスを欲しい。

参加者、木下所長から
・せっかく工務店が主体になっているのであれば、猪苗代湖畔にハイスペックな家もしくは別荘にもなる家を建てて、一棟貸しをやったらよい。
今まで来ていた客層とは異なった客層がくるかもしれないが、沢山人を集めるのではなく、いかに高単価な客層に反応してもらう仕組みの方が重要。
まち全体のランドスケープを意識したビジネスモデルを設計し、逆算して仕掛ける仕掛けづくりが地方においては大事になる。
・電気自動車用の充電(200v)ができる、キャンプ場がまだまだ少ない。電気自動車を愛車するハイクラス層のキャンパーは不特定多数いる。充電スポットがあればそれだけで立ち寄るお客様はいる。
・提案者はプログラミングが得意であるのであれば、教育に特化したプロジェクトをやってみたらよいと思う。ロケーションが良いハイスペック住宅を数千万円で購入できるのであれば、都内で同じ金額でマンションを購入予定の子育て中のパワーカップル層を呼び込めるのではないか。
・能登半島でオーベルジュと一棟貸しをセットにしている宿泊施設がある。コースで使用されているお皿は地元の陶芸作家さんとシェフが一緒に考えて作られたお皿たち。
そうして、ストーリー×コンセプトに空間をひも付けしていくと付加価値がうまれる。
・工務店はただ住宅を設計施工だけでは利益は限られている。工務店の強みである自由にスペックを設定し施工できるのであれば、まず一棟建てて、その住宅を運用する動きは加速していくだろう。
やるとしたら、やりやすいところからやる。難しいところはやらない。まちづくりも大通りではなく路地にある物件からやる。


19:00〜20:30終了まで実に濃密な時間でした。書き残したことをひとまず全て書き出しました。
まちづくりや日々の仕事の中で活かせるヒントが沢山散りばめられています。
何か1つでも読んでいただいた皆様の仕事にお役に立てれば幸いです。

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