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管理職の仕事とは「部下を元気にすること」、そこに大きな市場価値がある

こんにちは、bizlogueです。

今回も「管理職」をテーマに、bizlogueのメンバーであり『ヤフーの1on1』『1on1ミーティング』の著者である本間浩輔と吉澤幸太が話を進めていきます。

本間はかつて、日本におけるリーダーシップ、キャリア研究の第一人者である神戸大学名誉教授の金井壽宏先生のもとで学びたいと思い、同大学院に通いました。その金井先生が語ったあるひと言が今回の大きなキーワード。その言葉から、管理職にとっての大事な仕事とその存在価値について考えました。


リーダーシップで最も大切なこと、ひと言で何でしょうか?

吉澤 『管理職の罰ゲーム化』から転じて色々なテーマが出てきましたが、まだありますよね?

本間 まず『管理職の罰ゲーム化』に関してはパーソル総合研究所の小林さんという研究者の方が考えたオリジナルですので、彼をリスペクトした上で話を進めていきたいと思います。僕は3つの大学院に行ったんですよね。

吉澤 そうでしたね(笑)。なかなか珍しいなという感じもします。

本間 はい、ちょっと変わっているかもしれません(笑)。それで最後に行ったのが神戸大学。あそこには金井壽宏先生という、僕にとってはアイドルのような先生がいらっしゃいます。実際には鈴木竜太先生が僕にとっての師匠なんですけど、金井先生の授業を受けたくて神戸大学の大学院に行き、いわゆる“砂被り席”に座って一言一句聞き漏らすまいと受けていました。

吉澤 ほぉ、そうだったですね。

本間 リーダーシップの理論を教えていただきましたが、金井先生はある質問に対して「これについては○○先生のこの理論ですね」とか「これについて指摘したのはこの人しかいないんですよね」とか、まあ、ほんと天才ですよ。百科事典のようにスラスラ出てくるし、“ひとりChatGPT”ですね、金井先生は。

吉澤 それはすごい(笑)

本間 それで金井先生の授業が終わってしばらく経った時に、これは僕ではないのですが、ある懇親会で誰かが「リーダーシップで最も大切なことは、ひと言で言うと何でしょうか?」と金井先生に聞いたんです。

吉澤 ひと言ですか……

本間 もしくは「この理論が大切だ、というものがあれば教えてください」と聞いたわけです。そうしたら、何かすごい理論がパッと出てくるのかと思いきや……

吉澤 違うんですか?

本間 金井先生はニッコリ笑って「部下を元気にすることだね。やる気にさせることだね」とおっしゃったそうです。これは一同、ひっくり返りますよね(笑)

吉澤 え、本当にそのひと言だったんですか? 「やる気」だと。

部下をやる気にさせる上長と、やる気を消す上長

本間 だって、これだけ世界中のあらゆる理論を日本で一番知っている金井先生がですよ、リーダーシップで最も大切なことは「まあ、部下を元気にさせること。やる気にさせることですね」って言うんですよ。でも、これだったら僕にもできる。前回、管理職は罰ゲーム化が進んでいる、一方で管理職も専門職であるという話をしました。

吉澤 はい、しました。

本間 このテーマについて結構難しいなと思われた方もいるかもしれません。でも、自分の周りにいる人をやる気にさせる、もしくは元気にすること。これが管理職の仕事だと言われると、ちょっと希望を持ちませんか?

吉澤 じゃあ、管理職はそのために手を尽くせということですよね。何しろ自分のリソースをもって、結果として部下がやる気になり、元気になればいいと、そういう話ですか。

本間 そうです。それで、僕と吉澤さんは同じ組織にいましたから同じ顔が浮かぶかもしれないですが、金井先生が教えてくれたことに即して僕らの上長ラインにいた人たちを大きく2つに分けると、「人をやる気にさせるタイプ」と「やる気をフッと消すようなタイプ」がいましたよね?

吉澤 ええ……いましたよねって、はい、まあ(苦笑)。

本間 では質問したいのですが、吉澤さんのやる気を上げるような人と関わったり、ミーティングをした後は、普段の自分のやる気を100としたらどれくらい上がりましたか?

吉澤 やる気が出る時は普段の自分のパワーを超えていくような感覚はありますよね、確かに。3割、4割増しくらい行くこともあるんじゃないかな。いや、もっと行く時もありますね。

本間 じゃあ、その逆はどうですか。火を消すというか、先生っぽい人。「それは違うよ」とか「それはこうじゃないですか」って言う人……誰か共通の人を思い浮かべますよね。

吉澤 いやいや、共通の人ではないと思いますが(苦笑)、まあ、いいや。

本間 あ、違う人が思い浮かびましたかね。まあ、でもそういった人と関わった場合はどれくらいやる気は下がりますか?

吉澤 まあ、半分以下にもなっちゃいますよね、場合によっては。

100人の組織が150人分にもなり、逆に50人分にも下がってしまう

本間 このことが重要だと僕は思っていて、やる気・エネルギーが上長によって130とか150%になったり、逆に50%にまで下がってしまう場合もある。そして、これがその組織のメンバー分だけ掛け合わされると結構な差が生まれてしまう。例えば、ある100人の組織の上長が部下のやる気を上げるのがすごく上手で、部下のやる気が130、150になったとします。そしてお互いの相互作用もあるから、本当はもっとやる気が上がっている。

吉澤 あ、相互作用もありますよね。

本間 はい、元気でやる気のある人同士が集まっているわけですから。で、これだと例えば10人の組織でも13人、14人、15人ぐらいのリソースになるわけじゃないですか。

吉澤 ええ、確かに。

本間 さらにこれはどんどん相乗効果が生まれてくる。一方で、元気が6、7割くらいのどよーんとした人がたくさん集まると、その相互作用でまた組織全体がどよーんと下がっていく。そうすると100人の組織で一方は120、130人いるぐらいのエネルギーがあるのに対して、もう一方は50、60人くらいのエネルギーしかないということになりませんか。

吉澤 そういう計算になりますよね。これは大変なことですよ。

本間 これ、実際にリソースは同じですからね。100人の組織で、同じ目標に対してあと30人増やすと言われるのと、半分の人数にしろと言われる。どうですか、この差は。

吉澤 もう、だって、これは「一人こっちに寄こしてください」って言うだけで大騒ぎになる話ですよ。それが実際には組織の中で勝手に起きているということですよね。

本間 そう。企業には例えばCFOとか、数字を管理している人がたくさんいます。それでこれは僕個人の感覚的な話にはなりますが、毎月、毎週、毎日、会社の金庫を開けながらキャッシュが増えたとか減ったとか、これくらい投資したらこれくらい返ってくるとか、そういうことでビクビク、ヒリヒリしているわけですよね。

吉澤 はい、そんな感じでやっていると思います。

本間 でも、人事の責任者って同じように社員のやる気が上がった・下がったでヒリヒリしているのでしょうか?

吉澤 うーん……まあ、そもそも何を見ている、あるいは見ていないんだというのがありますし、CFOに比べるとそういう感覚はあまりないかもしれないですね。

本間 さらにCFOっていうのは、投資が上手い人・下手な人はいるかもしれないですが、まあ、せいぜい企業で溜めている・持っているお金はどんな方法を取ったって倍にはならないですよね。

吉澤 倍にはなかなかならないですかね。数パーセントかそこらを争っていると思います。

本間 だけど人的なものというのは、マネジメントの方法によって1.5倍になったり半分にもなったりする。こんなに増減があるものなんですよ。そうであるにも関わらず、あまりそこに目をつけられていない。そして、その人的なものの鍵を握っているのが管理職だと思います。この管理職をつけてあげれば部下のやる気が1.5倍になる、あの人を組織につけると本当にいいチームになるしベクトルを一つの方向に向けてくれる。それができる管理職の人たちってすごく貴重だと思いませんか?

吉澤 そうか……

本間 だって、この人を連れてくれば会社が持っている貯金を毎年20%ずつ上げてくれますよとなれば、その人に相当なお金を払うじゃないですか。

吉澤 ええ、そうでしょう。そりゃそうだ。

本間 であれば、管理職だって同じような発想でいいと思うんです。

人のやる気を上げること、それができる管理職の市場価値

吉澤 そうですよね。それが見えづらいというのもあるかもしれませんが、確かにこの人に10人の部下を任せると13人分になりますというのが分かったら、まあうれしいですよね。その逆はアレですが、現実問題としてそういうことがありますからそこを放置しているというのは問題ですよね。

本間 僕らの人生を振り返ったときに、残念ながらどれだけやる気を消されてきたのかを考えるとね……(苦笑)

吉澤 いわゆる“やる気ロス”ですね。

本間 ええ、これこそが問題なのではないかと思いますが、ここまでご覧いただいた皆さんはどう思うでしょうか。これも皆さんがどう考えているか知りたいですよね。

吉澤 いやあ、ちょっと危ういかもしれないですが、事例が知りたいですね。

本間 あなたの火を消された瞬間と、すごくやる気が上がった瞬間というのを本当にたくさん集めて、それをもとに色々と考えていきたいですよね。

吉澤 そうですね。そういう意味では感度もすごく大事ですが、マネージャーをやっている人が自分のチームメンバーと向き合ったときに、部下は今どんな状態なのかということにまず意識を向けていない人すら多いと思いますから、そこからかもしれないですね。今、チームに10人いて、本当に10人分のエネルギーがあるのかと。もうちょっと行けるのか、それとも今ダウンしているとしたら自分はそこで何ができるのか。「ちょっと一人増やしてくださいよ」と人事部長に言うのではなくて、どうすればこのメンバーの中で一人分くらいのエネルギーが増えるかなと管理職には考えてもらう、こういう発想ですよね。

本間 そうです。

吉澤 なるほど。今回のテーマは大きなヒントになるんじゃないですか。

本間 同じbizlogueの仲間である鈴木統也のような常にテンションが高い人は誰が何を言っても変わらないかもしれない。ですけれど、やる気やエネルギーがない人をいかに上げていくかというのが管理職の一つの存在価値だとすると、これはすごく難しいけれど、でもこれが大事だと思いますし、この経験が増えればその人の市場価値が上がるじゃないですか。

吉澤 確かに。

本間 だからこそ、管理職の人たちには1on1とかで良い上長と部下の関係を作ってもらって、そして良いマネージャーになってほしいなと思うんですよね。

吉澤 そうですね。1on1くらいの至近距離でようやく相手のあれやこれやが分かり、その材料を集めることで初めてそれを生かす・生かさないみたいなことが出てきますからね。遠目に見ておいて、まあ、まあ、こんな感じかなと雑にやっていたらやっぱり無理かもしれないですね。

本間 はい。もちろん1on1をやればいいという話ではないのですが、1on1のようなことを通じて、ぜひここで申し上げたような管理職になっていただきたいですね。前回の繰り返しになりますが、管理職はゼネラリストではなく専門職だと僕は思っていますので、ぜひ皆さんと一緒にこのことについて考えていきたいなと思っています。

吉澤 今回も良いテーマになったのではないでしょうか。本間さんにはまだ続きがありそうですので、また管理職に関しては話を広げていければと思います。


bizlogueではYouTubeでも情報発信を行なっています

■ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法
(著・本間浩輔)

■1on1ミーティング―――「対話の質」が組織の強さを決める
(著・本間浩輔、吉澤幸太)

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