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栗山さん、森保さん、ホーバスさん…最近の日本代表監督から学ぶ『小さなリーダーシップ』の重要性

こんにちは、bizlogueです。

今年、スポーツ界では3月のWBC(野球)、8月のバスケットボールW杯、10月のラグビーW杯など、チーム競技による国際大会が数多く開催され、それぞれの大会で日本代表が活躍。それとともにチームを率いる監督にも大きなスポットライトが当てられました。

そんな中、bizlogueのメンバーであり『ヤフーの1on1』『1on1ミーティング』の著者である本間浩輔は、野球の栗山監督、バスケのホーバス監督、また、サッカーの森保監督も含め、最近の日本代表の“監督像”の変化に注目。同じくbizlogueのメンバーでスポーツの現場に多く携わる鈴木統也とともにこの監督像の変化、そして、彼らを通して学べるリーダーシップについて意見を交わしました。


『前に立つカリスマ型』から『後ろから支えるリーダー』に

鈴木 こんにちは、bizlogueの鈴木統也です。よろしくお願いします。本間さん、今回はどんなお話を?

本間 ラグビーW杯が始まって(編注:収録日9月13日)、スポーツが盛り上がっていますよね。

鈴木 そうですね、その前にはバスケットボールのW杯もありましたからね。

本間 ええ。これら最近の日本代表を見ていると、何か“監督像”が変わってきたのかなと思うんですよ。

鈴木 監督像? どういうことですか?

本間 例えば野球の栗山英樹さん、バスケットボールのトム・ホーバスさん、サッカーの森保一さんなどがいますよね。それまでの監督像と言えば、野球WBCの王貞治さん、原辰徳さん、サッカーなら岡田武史さん、オシムさん、あるいはラグビーのエディ・ジョーンズさん。また、オリンピックで言うとソフトボールの宇津木妙子さん、シンクロの井村雅代さんなどが代表的な方たちでした。こうした監督像から今はちょっと変わってきている気がしているんです。どう思いますか、最近の栗山さんや森保さんといった監督については。

鈴木 一つ感じるのは、現役時代の彼らは超一流プレーヤーというわけではない。

本間 あぁ、なるほど。

鈴木 もちろん一流プレーヤーだと思います。でも、“超”一流プレーヤーではなかった。けれど、そこから人をマネジメントすることをすごく学ばれた方々という印象がありますね。

本間 うん、それは良い見方ですね。他には?

鈴木 そうですね、『前に立つカリスマ型』というよりは、『後ろから支えるリーダーシップ』を発揮されているのかなと思いますね。コミュニケーションをよく取って、モチベートしながらまとめていくみたいな、そういうスタイルなのかなとパッと思いつきますね。

本間 そう、そんな感じで監督像がちょっと変わってきたのかなと思いますね。だから、サッカーで言えば選手の方がヨーロッパで大活躍していて、そういう人にガミガミ言ったところでリスペクトを得られるかというとそうではないと思います。でも、サッカー代表に入ったある選手が「やっぱり森保さんが一番やりやすい」「森保さんを男にしたい」ということを言っているんですよね。

鈴木 男にしたい?

本間 そう。「森保さんのために戦いたい」という話を間違いなくおっしゃっていたと思うんですけど、そういう監督像なんですよね。

鈴木 へぇ~、それはすごい。

本間 なんだろう、森保さんの場合は動画など色々な素材がありますが、決して理路整然と話すというわけではなく、パッションで話をされるタイプですよね。

鈴木 確かにそうかもしれないですね(笑)

本間 正直、戦術的には何を言っているのか分からない時もあるかもしれない。だけど、チームが一丸となる――そういう監督だなと思いますね。そして栗山さんは最近、色々なところで講演やインタビューに答えられていますが、やっぱり「最後は任せる」というスタンスですよね。三隅二不二先生の「PM理論」で言えばメンテナンス、明らかに「M」に行っているような気がして、これはやはり時代の変化だなと思いますし、ここから学べることは多いなと思いますね。

鈴木 なるほど。

本間 また、ホーバスさんについて言うと、バスケW杯が終わってからまだあまり時間が経っていないので、確からしい情報というのはこれから書籍や雑誌から出てくると思いますが、現時点で言われている内容で行くと、女子の日本代表を指導する時と男子の日本代表を指導する時では全くコミュニケーションを変えているらしいですね。

鈴木 へぇー、それはどのように変えているんですか?

本間 女子の場合は広くガミガミやっていたみたいですが、男子の場合にそれをすると選手が萎えちゃうから自信を持たせるコミュニケーションを取っていたみたいですね。その割には男子にも結構怒っているように見えましたけど(笑)

鈴木 確かに(笑)。「言い訳だよ!」みたいなこともありましたね。

大きなリーダーシップと小さなリーダーシップ

本間 でも、なんだろう、フォロワーによってリーダー自体が違う人になるとか、リーダーがスタイルを変えていくという、すごく良い例だなと思っていて、やっぱりリーダーシップのスタイルはとても重要だと思っているんです。それで1on1もリーダーシップとすごく関係があると僕は思っていて、大企業を率いる社長とか首相とかではなく10人、20人を率いる組織、多くても40~50人の組織を率いていくリーダーというのは、大組織のリーダーとはちょっと違うのではないかなと思っています。

鈴木 いわゆるメジャーな経営者とはちょっと違う、と。

本間 国を率いる大統領とかも含めてね。それで僕はそうした大きなリーダーシップに対して、10人、20人を率いることを『小さなリーダーシップ』と呼んでいます。これを推奨しているとまで言うのはおかしいけれど、大きなリーダーシップと小さなリーダーシップを一緒にしない方がいいと思っているんですよ。

鈴木 小さなリーダーシップについて、もう少し詳しく教えてもらえますか?

本間 10人、20人を率いるためにはどんなリーダーシップが必要か。

鈴木 あぁ、大企業の社長とはちょっと違うものが求められるのではないか、ということですね。

本間 僕たちが知っている人も含めて大企業のリーダーって、話がつまらなかったり人の心を打たなかったら、やっぱり人はついてこないと思うんです。かつてのアメリカ大統領って、トランプさんとか色々と言われてきた人はいますけど、皆さん話が上手いですよね。

鈴木 そうですね、印象には残りますよね。

本間 でも、10人、20人だったら、もしかすると話があまり上手じゃなくてもいいかもしれないですよね。むしろ、聞き上手の方がいいかもしれない。

鈴木 “話す”よりも“聞く”ことの方が求められているかもしれない。

本間 そう。それで10人、20人の組織だと個人の関係性を上手く維持することによって、組織を良い方向に持っていくことができる。だから関係重視型のリーダーシップやマネジメントでいけると思うんですが、これが国とかの規模になったらできないですよね。

鈴木 そうですよね、例えば日本だったら1億何千万人ですから、個人個人と関係性を作るのはちょっと難しそうですね。

実は1on1の裏側には小さなリーダーシップという概念がある

本間 大企業の社長もそうですよね。社員が1000人いたら、一人ひとりに「あなたはこれからどうしたいの?」とは聞けない。となると、僕は“大きなリーダーシップ”と“小さなリーダーシップ”は分けて考えて、そして“小さなリーダーシップ”はどうすればいいのかというと、やっぱり1on1のように個々の話を聞き、組織が向かう方向性と違うのであればそれにフィードバックをかけていく。この視線で見ていくと、サッカー日本代表だってスタッフとかシェフとかもいますが、せいぜい20~30人ぐらいの組織だと思います。ラグビーもバスケもそれくらいだと思います。そうした規模のチームをまとめていくリーダーと、例えばバスケットボール協会のトップに必要なリーダーシップは違うと思いますし、サッカー協会のトップと監督は違うんだと思いますね。だから、こうした見方も含めて、実は1on1の裏側には小さなリーダーシップという概念があるんだということが伝わればいいなと思います。

鈴木 なるほど。とすると、今、W杯が開催されているラグビーも見方が変わってくるかもしれないですね。

本間 そうなんですよ。小さなリーダーシップについて3、4年くらい前から本にしようと思って準備しているんですけど、全く進んでいない(苦笑)。でも、中原淳先生がやっている立教大学のリーダーシップ開発コースでは毎年、このケースについてみんなで議論していますから、もうそろそろ形にできるかなと思っています。

鈴木 いやあ、面白いですね。ラグビー、バスケ、サッカーなどスポーツから“小さなリーダーシップ”が学べるのではないか。今回はそうしたテーマになりました。これを読んでいただいた読者の方はどう思ったでしょうか。コメントを随時募集していますので、何か思うことや感想などありましたら、ぜひお寄せください。ありがとうございました。


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■ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法
(著・本間浩輔)

■1on1ミーティング―――「対話の質」が組織の強さを決める
(著・本間浩輔、吉澤幸太)

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