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若い社員こそ管理職を目指せ! AIが来ても下がらない市場価値と希少性

こんにちは、bizlogueです。

前回に引き続き、今回も『管理職の罰ゲーム化』についてbizlogueのメンバーであり『ヤフーの1on1』『1on1ミーティング』の著者である本間浩輔と吉澤幸太が話を進めていきます。

罰ゲーム、あるいは貧乏クジとも言われている管理職ですが、実際に大きな社会課題の解決を目標としている組織にとっては必要不可欠な存在。だからこそ、市場価値は下がらず、むしろ希少性は今後増していくのではないか――そう考える本間がこれからの若い社員の皆さんにこそ伝えたい『管理職のすすめ』とは?


なぜ管理職が必要なのか

吉澤 前回は『管理職の罰ゲーム化』というテーマで話をしました。管理職になるのは貧乏クジですねという話になり、これだとみんな専門職に偏ってしまうと危惧したわけですが、このあたりもう少し管理職に導くような話ができればと思います。本間さん、これについてはどう考えていますか?

本間 まあ、専門職の方がいいでしょうね。

吉澤 結論としてはそっちなんですね(苦笑)。

本間 でも、なぜ組織は必要なんだろうというテーマで考えますと、僕たちは5人、10人でできる仕事ではなく、何百人もいなければいけないような大きな仕事をしていますよね。これは僕のヤフー時代の上長だった宮坂学さん(現・東京都副知事)がよくこんなことを言っていたんです。「ベンチャーが得意なことはベンチャーがやればいい。僕たちはベンチャーではできない仕事をするべきだ」と。僕もそう思うんです。今、会社はLINEヤフーになりましたが、1万人を超える社員がいて、この人たちがいるからこそできる仕事。それが大きな社会課題の解決であり、この社会課題を解決するために企業があるわけですからそのための仕事をしなければいけない。こういうことですよね。

吉澤 はい。そこは大事なポイントですよね。企業としての規模はそれぞれで、例えば3千人、1万人、あるいはもっと巨大な企業もありますけれど、その規模に応じた価値提供みたいなものを考えないといけない。エンジニアも含めて会社の中にいるとどうしても目の前の「これ、やりたい」という気持ちになるのも分かりますし、それはそれでやればいいとは思います。ですが、一方で色々な意味での規模感の中でできることをやるために組織として集まっているということを何度も思い返さないといけないですよね。みんなが「あれやりたい」「これやりたい」とバラバラではサービスもなかなかリリースできないという話にもなり、「辞めちゃおうかな。スタートアップに行っちゃおうかな」という人も出てくる。それはそれでいいと思いますけど、違うものだということを何度も言う必要があるなと思いますね。

本間 そうですね。例えば僕が尊敬する企業で運輸の会社があります。今日出した荷物が明日届くという、これって素晴らしいじゃないですか。まさにインフラですよね。エネルギーの企業だって色々とあります。そう考えた時に、やっぱり僕らは組織だからこそ大きな課題を解決することができる。一方で、大きな組織だからたくさんの人が必要で、たくさんの人がいると一つの方向に意識を向けていくとか、ちゃんと仕事を分けて効率・効果を上げていくことはやはり難しいことだと思います。だから組織が必要で、その中にはそれを率いていく、もしくは“管理”という言葉がいいのかどうか分かりませんが、その役割を担う人が必要になってくるわけです。よって、専門職だけでいいのか――今の話で言えば設計する人、運転する人だけいいのかと言うと、仕事は回らないわけです。

吉澤 現実的にそうですよね。

「優秀な人を辞めさせない」「その優秀な人を育てていく」

本間 前回申し上げた通り、個で考えた時によほど大きな社会課題を解決するんだと思わない限りは専門職の仕事をやればいいと思いますが、僕はやはり大きな社会課題を解決するためには組織が必要で、組織のためにリーダーが必要ですから、組織を上手く率いていく管理職が必要なんだと思っています。また、前回もう一つ申し上げたかったことは、みんなが専門職の方に偏っている今、実は希少的なものとして管理職の価値が上がっている

吉澤 そうか、みんなが専門職に行っちゃうとそうなりますよね。希少価値として上がっていくのは理屈として分かりましたが、そうするとその価値自体を自他ともに確認したくなると言いますか、自分も価値を感じることができれば管理職になろうと思うかもしれないですね。一方で、実際に価値を認めてもらえるようなもの、それは報酬かもしれないですし、金銭的なものばかりではないかもしれないですが、そういうものが明らかになってこないとやる気は出ないと思います。これについてはどう考えればいいでしょうか?

本間 一つは我慢することですね。

吉澤 我慢……(苦笑)

本間 だって、管理職をやっていてもお給料は上がらないですもんね。ですが、管理職というポジションに甘んじて、例えば会議に出るとかメールをチェックするとか、そういった会社のルールだけを回すのではなく、リーダーや管理職にとって一番重要なこと――ヤフーで言えば『部下の才能と情熱を解き放つ』ということになりますが、あの管理職につけておけば多様な部下を一つの方向に導いて、そして成果を出してくれるということをやり続けるべきだと思います。もう一度言います。管理職は忙しいですから業務時間を埋めようと思えばすぐに埋まります。

吉澤 まあ、そうでしょうね。本間さんが言った会社のルールっていっぱいありますからね。

本間 メールをチェックして、会議に出て、評価だ、なんだとあります。もちろん、それはやらないといけないことですけど、ややブルシット・ジョブ的なことでもありますよね。だから、それをやるだけで満足せずにこれをギューッと効率的にこなした上で、僕たちがやらないといけないことは前回申し上げた通り「優秀な人を辞めさせない」こと。そして「その優秀な人を育てていく」ことによって組織の成果に結びつけられるような、そういう管理職であるべきだと思います。

管理職はゼネラリストではない

吉澤 話はグルグルと回りますけれど、それをする人を誰かが認めてあげないと本人も気が付かないと言いますか……まあ、なんでしょうか、そういったものに関してすごく感度が高い人は自動的に優れた管理職になるかもしれませんが、やっぱり現場を見ているとそうもいかない。自分で気が付いて自分で動くというのが一番の理想ではありますけれど、現場を見ている限りではますます専門職に行ってしまうのかなという印象です。平たく言いますと、管理職になる人をどう褒めてあげればいいのか、どう火をつけてあげればいいのかということは色々な会社の人事の人たちにとっても難しいことなのかなぁと。まあ、そこの悩みにたどり着く前の段階の人たちも多いような気がしますけれど、それが今感じている実感ですね。

本間 そうですね。ちょっとハードルは高いと思いますよ。でも、信じてやるしかないと思いますし、ピーター・センゲという人が書いた『学習する組織』という本がありますよね。今、僕が読書会でテーマとしている本でもありますが、あの中に書いてある『自己マスタリー』を高めていくことだと思います。要するに、管理職はゼネラリストではないんですよ。

吉澤 ほぉ……そうか、そうか。

本間 よくスペシャリストに対してゼネラリストと言いますよね。

吉澤 ええ、言いがちです。

本間 専門職として自分の腕を職人のように磨いていくんだというスペシャリストに対して、管理職はゼネラリストだと何となく思ってしまいますよね。でも、管理職もスペシャリストなんです。専門職なんですよ。

吉澤 人をまとめて、ちゃんと方向づけていくという専門家。

本間 そう。人は1日や2日で技能は身に付かないじゃないですか。bizlogueの仲間である生方さんも素晴らしい専門職だと思いますが、彼のアートやデザインに関する知識も1日や2日で身に付くものではないですし、それが1年や2年でも誰も褒めてくれない。でも、それを面白いと思って突き詰めていくからこそ自己マスタリーですよね。

吉澤 なるほど。

本間 もちろん、専門職としてやっていく人もいらっしゃいますし、正直言いますと実は僕も専門職をやっている方が好きなんです。

吉澤 そうかもしれないですね(笑)

本間 ええ、正直、僕は管理職には向いていないですよ。でも、やっぱりそこで自分を高めていって管理職になりましたし、それは1年、2年ではできないわけです。そして市場を考えた時、先ほども申し上げた通りやっぱりこれからの時代に管理職は必要なのだけれど、罰ゲームと言われるように管理職になりたがらない人が増えていく。それで今、管理職になりたくない若い人たちにぜひ申し上げたいのは、皆さんは若いですから“人を率いていく・管理していく”という専門性を10年、15年かけて育てていくことができる、もしくは自分の中で武器を研いでいくことができるわけです。そして、人をマネジメントするという領域はこれからChatGPTのような生成AIが来ようと市場はそんなに狭くならない。

吉澤 ええ、そうですよね。この領域は急に狭くはならないと思います。

1on1を学ぶと最終的に行きつくのは……

本間 そうすると、みんながなりたがらないけど確実に需要性が増すという分野なのです。そして、今からコツコツとちゃんとマネジメントのスキルを身につけていけば、必ずその人には市場価値がつく……と、そう思ってぜひ若い人たちには頑張ってほしいです。また、この場はbizlogueですので1on1の話をしますと、1on1を学んでいくと最終的には「管理者とはどうあるべき」とか「人はどういう時に成果を出してくれるのだろう」ということに行きつくと思うんです。僕らもそういう経験してきましたよね。

吉澤 はい、そうでした。

本間 1on1の勉強会を社内で結構やってきましたけれど、最後の方になると結局1on1の技法ではなくて、「人をマネージするとはどういうことなのか」という方向に必ずなりますよね。

吉澤 そうなりますよね。それをやりたくて1on1をやっているということでもあるのですが、どこかで転倒してしまうんですよね。「1on1」という名前に引っ張られて、1on1って何をどうすればいいんだみたいな話になってしまう。でも、1on1を深めていくと結局そっちではないと、話が行ったり来たりもしました。

本間 はい。ですから1on1に関してもそうしたことを考えてほしいですよね。

吉澤 これまでもnoteやYouTubeで読者や視聴者の皆さんからコメントをいただいたことはありましたが、今回のテーマに関してはどう思っているのか、本当にコメントが欲しいですね。なかなかこういう場では発言しづらいかもしれませんが、我々としてももっと議論を温めていきたいと思っています。

本間 これは哲学の問題でもあると思いますよね。

吉澤 はい。ですので、この続きは皆さんと一緒に作っていきたいなと思っています。

本間 今回、このテーマに関して僕たちは上手く伝えられなかったかもしれないですが、ぜひ皆さんの周りでも話していただきたいなと思います。


bizlogueではYouTubeでも情報発信を行なっています。

■ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法
(著・本間浩輔)

■1on1ミーティング―――「対話の質」が組織の強さを決める
(著・本間浩輔、吉澤幸太)

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