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『管理職の罰ゲーム化』ではマズい! これからの新しい管理職を“育む”ために必要なこと

こんにちは、bizlogueです。

最近、bizlogueのメンバーであり『ヤフーの1on1』『1on1ミーティング』の著者である本間浩輔が講義の中でよく出すワードが『管理職の罰ゲーム化』

課長、部長、そして役員など、かつては誰もが就きたいと思った権威のある立場だったかもしれません。しかし多様性が進む今の時代、いろいろな人たちをマネジメントしなければいけない管理職の仕事は疲れることが多く、管理職になりたいと希望する人も少なくなってきているそうです。

もちろん、組織の中で大きな仕事をする上で管理職のなり手がいないという現状は非常にマズいこと。では、どうすればいいのか、管理職をどう育てていけばいいのか――本間、そしていつも以上に熱が入ったbizlogueの吉澤幸太がこの『管理職の罰ゲーム化』について考え、これからの企業が進む道について意見を出し合いました。


『管理職の罰ゲーム化』とはどういうことか

吉澤 本間さんの講義をいくつか横で聞いている中で、『管理職の罰ゲーム化』というワードがよく出てきていますよね。以前もお話されていましたが、最近も再燃されているのかなと思います。まだこの場ではお話されていないと思いますので、改めて『管理職の罰ゲーム化』とはどういうことか教えていただけますか?

本間 これは今年、流行らせようと思っているんです。

吉澤 そうなんですか(笑)

本間 はい。僕が所属しているパーソル総合研究所というところに小林さんという有能な研究員がいまして、彼が準備しているのですが、これまでは管理職になるということは一つのステータスでした。

吉澤 そうでしょうね。

本間 僕が以前所属していた会社は課長になるとイスにひじ掛けがつき、部長になると革張りになる。そう言えば僕は1回、若い時に革張りのイスに座ったことがあるんですよ。そうしたら「お前、そのイスに座るな!」って(笑)。「え、なんで?」って聞いたら「そのイスは部長しか座れないからだ!」って言われたことがありましたね。

吉澤 そんなことがあったんですね(笑)

本間 まあ、それもアイデンティティの一つではありまして、例えば「本間さんってどういう人?」と言われると「あの役員の人だよ」と、こういう言われ方もしていましたが、今やそれがちょっと変わってきた。

吉澤 ええ、なんとなくそんな気はしますね。

本間 今だと「それ、課長の席だぞ」と言われても「は?」ってなりますよね。それから、部下の多様性が進んだということもありますが、管理職になるとその多様な部下をマネージしなければいけないということですよね。コロナが明けて、人事からは「社員を会社に来させろ」とは言われるけれど、そのことを部下に言ったら「なんで会社に行かなくちゃいけないんですか?」と。

吉澤 はい、「なんで会社に行かなくちゃいけないんですか?」なんて、その返答自体が昔だったらちょっと意味不明なフレーズですけどね。

本間 そうですよね。それでちょっと厳しく「これはこうしてほしい」と言ったら録音されたりね。僕らの共通の仲間の中にも、部下がちょっと感情的になってしまって毎回の1on1で録音されていたという人もいました。なので、管理職側が疲れちゃう。

吉澤 いや、それは疲れますよ。

本間 それだけじゃなくて、特に僕が言いたいのは“ファーストライン”の人たち、これは初めて管理職になった人たちのことですが、実質的にお給料が減ったりもしてね。

吉澤 ああ、そうかもしれないですね。

本間 管理職になって残業がつかないとか、そういうこともあるわけですよ。だから、今や管理職になりたい人なんて少なくなっている

吉澤 実際にそういう調査結果があるらしいですし、そのような声も聞きます。

本間 ええ。だから、もう管理職になるのは『罰ゲーム』なんですよね。

吉澤 罰ゲームですから、回ってこないように振る舞うとか、そういうことが組織の中で出てきてしまっているかもしれないですね。

管理職2.0、3.0、4.0へのバージョンアップが必要

本間 何か、そういう自分のキャリアのプラスにならないと言いますか、そういう仕事をするくらいだったらいわゆる管理業務みたいなものをやらずに、自分の専門性をずっと高めていった方が正解だろうと。

吉澤 うーん、まあ、そう考えちゃうかなぁ……

本間 例えば35、6歳で管理職になって、40歳くらいになってもう一つ上のポジションに就くとしますよね。で、40歳から60歳までいわゆる“管理”という、わけのわからん仕事ですよ。会議に出たり、挨拶するとか、評価するとか。こんな仕事で自分の業務時間のほとんどを取られてしまい、それで60歳を過ぎて現場に戻れるのか?

吉澤 その延長で仕事ができるかというと、ちょっと怪しくなってくるかもしれないですね。

本間 ですよね。僕は今55歳ですが、自分の周りを見てみると、僕の年齢を超えても活躍して、世の中にも必要とされ、飲み会に行ってもあまり考えずに飲み食いできるだけの所得のある人はほとんどプレーヤーですね。

吉澤 そうなんですか?

本間 だから、大組織で管理職をやっている人ほどあまり活躍していないし、話していてもあまり面白くない。と、こういうことですね。

吉澤 これはなかなかキツイですね。特に後半の“話が面白くない”と思われるというのは、人が寄ってこないということにもなってしまいますから。

本間 はい。なのでもう、管理職になればいいという時代ではないんだと思いますね。

吉澤 誰もがということでもないでしょうし、実質なりづらい構造になっているかもしれないし……でも、「管理職にはなりたくない」という声、意識が高まっている中で本間さんがそんな話をさらにすると、どうなっちゃうのとますます心配です。どうしたらいいんですか? とはいえ、やっぱり管理職は必要じゃないですか。それなりの規模の仕事をやろうとしたら誰かが取りまとめをしたり、誰かがリードする。その役目があるのとないのとでは、その場その場ではなんとかなるかもしれないですが、もう少し社会に向けて目線を上げたら管理職がいないと困りますよね。

本間 ええ、おっしゃる通り、一人や二人でやっている仕事なら管理職はいらないけど、大きな仕事をするためには大きな組織が必要です。鉄道を走らせるにしても、大規模の建物を作るにしても、ある大きなサービスを提供するにしても組織が必要。であるならば管理職はやっぱり必要であるとすると、『罰ゲームにならないような管理職』、もっと言うと、みんなが管理職になりたがらない時代だからこそ、しっかりそうしたマネージと言いますか、管理ができるようなリーダーが求められているということだと思うんです。

それをよくよく見ていけば、やはり多様であろうともちゃんと人と向き合って、そしてヤフーの言葉で言えば『才能と情熱を解き放つ』ですけれど、個人のベクトルと会社のベクトルを合わせてあげること。さらに、時として言い方にも気を付けながらネガティブなフィードバックもできる。こういう『新しい管理職2.0』、いや3.0くらいかな、4.0? まあ、いいですけど(笑)、その管理職自体がある意味バージョンアップしていくことが必要。そうすると、今度はそれ自体が希少価値なので求められていきますし、そのような管理職は組織を超えてどんな会社でも必要とされる。また、多様な人たちをまとめていけるスキルがあれば定年関係なく活躍できるのではないかと思いますね。

会社からリーダー、管理職に渡さなければいけないツール

吉澤 いや、そうですよね。これからの世の中にそうした管理職は必要ですというのは明らかです。では、肝心なのは“誰がやるの?”ということ。管理職のなり手はどうしたら増えるのか。やっぱり手を上げてもらいたいですから、それが評価なのか、報酬なのか、お金ではない何かしらの勲章なのか分からないですが、いくら希少になるからと言っても、希少になった人たちにどんなメリットがあるのか示せないと管理職のなり手は増えていかないのではと思います。その辺、どうなんでしょうか。どうやったらやる気が出るんでしょうね。

本間 一つはね、報酬は上がっていきますよ。誰でもできるということではないので、組織を率いていくために必要なリーダーの報酬は上がっていくと思います。それで、今度は会社がそういう人たちにツールを渡していかなければいけないなと思いますね。それはリーダーシップに対する知識であるとか、評価の方法、コミュニケーションの方法であり、僕らの言葉で言うのなら“部下に信用してもらう”こと。信頼までは難しいかもしれないけれど、部下に少なくとも信用してもらうために上長はどうあるべきかということのツールを会社から与えてあげなければいけない。そのツールの中の一つに1on1もあるんだろうなと思います。

吉澤 道具の一つということではそうだと思いますね。

本間 逆に言うと、1on1のほかにありますか?

吉澤 もっと、こう、コレだ!というのがあればいいですけど……どうですかね。

本間 ある企業が管理職に対してコーチング研修を入れましたと言うんです。どれくらいの時間をかけてやるんですかと聞いたら、3時間だ、と。これはもうコーチなめるなと言いたいですよね。

吉澤 さすがに3時間ではなかなか難しいところがあるでしょうね。

本間 コーチングだってかなりの時間を費やすもので、吉澤さんも資格を取ったと思いますけど、1年はかかりますよね。

吉澤 うん、僕の場合は1年半かかりましたけど(苦笑)。

本間 1年、1年半もかかるくらいの時間を勉強に使って、ほとんどの場合は業務外ですよ。業務内に入れちゃったら仕事なんかできないですから。それくらいの時間を費やして、プライベートも相当つぶして、それで資格を取ったところでまだ分からないというのがコーチングなんです。それを集合研修で午前中、半日とかでツールを与えた気になっているわけですよ。そんな体制で管理職のなり手がいないなんて言ったって、それはいないだろうと僕は思いますよね。

吉澤 そうか。ツールも何もなく丸腰なのに管理職のなり手がいないと言われても、それは確かにいないだろうなと思いますね。

『育む』ということに対して本気で取り組まないと

本間 昔、スイミングスクールでちゃんと泳ぎ方を教えずに、いきなり水の中にバシャン!ってね。

吉澤 もう飛び込め!って感じで、勝手にいつの間にか泳ぐだろうってやつですね。そんなことばっかりやっていても、ちょっと追いつかないですよね。

本間 ええ。最初は壁か何かにつかまってバタ足をやって、けのびをして、ビート板を使ってと、ちょっとずつ段階を踏んでやっと泳げるようになるわけですから、会社や僕らもマネジメントのツールをちゃんと授けないといけない。しかも、それをやっていっても上手くできるかどうかは分からないから、経験を積んでもらうしかない。西堀栄三郎さんの話を僕、よく出しますよね。

吉澤 ええ。

本間 西堀さんは『教育』という言葉を差して、「日本人は教えることに関してばかり一生懸命で、育むということに関しては無関心ですね」ということをおっしゃいましたが、やっぱり僕は管理職教育というものに関しては、現場と総労働時間を気にして3時間だの半日だので教えると言ってる場合ではなく、『育む』ということに対して本気で取り組まないと、上層部が気づいた時にはもう遅いよと思いますね。

吉澤 そういうものが整うことで、必要とされる能力、スキル、マインドが作られていく人たちが増えていくのはあるとして、今度はさっき話に出た管理職3.0なのか4.0なのかということを見極める、計るみたいなところが物凄く欠落しているような気がしているんです。「この人はそれっぽいな。できるな」と見極める部分が自他ともにあまりにも曖昧すぎるので、ますますやる気がでない……というと短絡的ですが、そこに明らかに「この人はできる。やれる」という梯子なり階段なりが見えるのであればもう少し登ってくる人がいるのではないかと最近思うんです。でも、これがなかなか、どうやれば自他ともに指差し確認できるのかが課題だなぁと思っているんですよねぇ。

本間 それに関してもう一つあるのは、例えば人事の責任者だったり経営者は案外、その階段を無意識のうちに上がってきているんですよ。

吉澤 無意識なんですね。それはそうかもしれない。

本間 もしくは、たまたまファーストラインの管理職の時に苦労せずに、カンカンと上がってきたからその部分の苦労を知らないんだと思いますよ。だって、ギリギリ僕らの時代はさっき申し上げたように課長でひじ掛けのイスになり、部長で革張りのイスになり、役員になると部屋がついてくるという、表向きの管理職でございますというところで来た人たちだから、今の若い層の気持ちが分からないだろうし、苦労した経験がない。それであと数年だったらそのまま生き残れると思っているわけですよね。

吉澤 うーん……まあ、そうですね。

本間 あと数年これを放置していたって、未来は大変だろうけど俺は知らないと思っているわけですよね。だとすると、今やるべきことをしっかりやっていくべきだし、99%の会社はそれに気が付かないから1%の未来が見える会社は……未来が見えるというのはおかしいかな、みんながやらない時にちゃんと準備をすることが必要だと思いますね。

吉澤 僕はそこでをつけてあげたいと思っているんです。さっき本間さんも言っていたみたいに、定年が来たから終わりではなくて、得意なことを生かしながら、リーダーかどうかは分からないですが仕事を続けていける。なぜならこの人はこういうだから、ということが誰の目から見ても分かるし本人もその自覚で働いている。こういう仕組みが作れれば、それはそれで一つのいつまでもできる職業、専門職として成り立つのではないかと。こんな議論はこれまでもいっぱいあったにも関わらず、なんとなく自然任せ、運任せになっているのは大きな課題だなと思いますね。これからの世の中、多様性でますます分からなく、難しくなり、ますます色々な人をマネジメントしなきゃいけないということで明らかに専門性が必要なのに、それが計れないまま運に任せているというのが結構厳しいなと感じています。そこは誰か発明してくれないかなぁ……ではダメか、考えていきましょうか。

本間 吉澤さん、この議論に関しては何か熱くないですか?

吉澤 いやあ、ちょっと気になりまして、この『罰ゲーム化』がピン!と来たんですよ。罰ゲームで終わっちゃマズいな、意識を高めていかないと……と思っていまして。

本間 これはちょっと前の言葉だと『人事ガチャ』、『異動ガチャ』なんてことも言われていましたよね。こういうことも含めて、今は変革の時期だし、そこへ先に一歩進むことがある意味チャンスだと思いますので、ぜひ皆さんと一緒に考えていきたいですね。

吉澤 このテーマについては今後ももう少し深めていきたいと思います。


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