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『ハウルの動く城』

 ジブリ作品の中で一番好き。映画館に見に行った。ハウルの声がキムタクというのは、観終わってエンドロールで気づいた。

 私の心の中での理想の男性は、ウェブスターのあしながおじさんというのは常に覚えている。でも、この人もそうだった。魔法使いのハウル。

 なぜかと言われても言葉にするのは難しい。好きというのは、言葉にした時点で、他の人にも当てはまる一部分が切り取られるわけだけど、かといってその一部分が当てはまるからと言って、その当てはまる別の誰かを好きになるというものでもない。
 
 あしながおじさんを構成する様々な要素の集合体が好きなのであり、ハウルを構成する様々な集合体が好きなのだ。

 先日、別の記事でこの映画の中で出てくるベーコンエッグが美味しそうで、満を持して鉄のフライパンを買ったと書いた。その記事を読み返していたら、この作品が無性に見たくなってしまった。

 私はものが増えるのが好きではないので、割とすぐに今必要でないと思ったら売ってしまう。Amazonで履歴を調べたところ、案の定以前に購入していたが、家の本棚にも押し入れのコンテナにも見当たらなかった。

 以前に住んでいた駅の駅ビルに確かCDやDVDを売っている店があったな、と思って行ってみたが、そのお店は無くなっていた。Amazonプライムではジブリは見られない模様。こういうことは調べてから売ったほうがいいですね…

  届くのは明日でもいいか、とAmazonで再注文したけど、そういえば新しいパソコンにはDVDスロットがないんだったっけ(泣)

 Kindle電子書籍で、原作がすぐに読めそうだったので、こちらを購入した。ほんと、ありがたいな。しかし、これにばかり頼っているから街からCD・DVDのお店が消えるのだよね。しかし、私一人の力でどうにかできるものでもないので致し方ない。

 この本の方も読んだことがあるけれども、もうだいぶ昔なので、読み返してみて良かった。映像はきちんと、何回も見たジブリ作品で進行してくれた。


 

ソフィーってこんな子

 ソフィーは、読書のしすぎで、昔話の展開を絶対と思い込んでいる笑(ここで一気に親近感湧く)
 ソフィーは長女。母を、幼い頃に失くす。妹が一人いた。父が再婚して、後妻と父の間に三女ができた。
 ここで、昔話であれば、長女と次女が意地悪な醜い姉になるところだが、三人とも美しく育った。継母は、三人を分け隔てなく育ててくれた。
 ソフィーは長女なので、出世は諦めていた。長女は冒険しても失敗するものと、昔話では相場が決まっていたからだ。次女もまたしかり。昔話では、運試しに出かけて成功を収めるのは三番目と相場が決まっている笑
 そのため、ソフィーはいつ三女のマーサが運試しに出てもいいように、マーサを一生懸命仕込んでいた笑

 ソフィーの父が経営していたのは帽子屋だった。父が亡くなると、三人が通っていた学校は借金をして行かせてもらっていたのだということが、継母の調査で判明した。
 継母のファニーは、三人を養うことはできないから、三人の道を決めたから、学校を辞めて自分の決断に従ってほしいと打ち明ける。

 まず、料理の好きな次女のレティーは、ファニーの友人が経営している首都キングズベリーで一番人気のパン屋へ奉公に出ることになったと話すファニー。レティーは受け入れた。ソフィーは、レティーなら、店で働いていれば求婚者が次々に現れ、レティーは幸せになるだろう、とファニーの決断を信頼した。

 次に、三女のマーサは、まだ奉公するには若すぎるので、ファニーの知り合いの実力のある魔法使いの見習いに出すことにしたという。
 三女はいずれ、自立して出世しなければならない運命だ笑。一流の魔法使いの弟子になれば、お金持ちの顧客とも人脈ができる。ここでも、ソフィーはファニーの決断は素晴らしいと思った。

 さて、ソフィーの番だった。ファニーは、長女のソフィーには帽子屋を継いでもらわないといけないから、帽子屋で見習いをするように、とのことだった。ソフィーは、自分にはパッとしない将来が待っていると覚悟していたので、また、街のしがない帽子屋を継ぐことは薄々感じていたことなので、承知した。

 

ハウル登場

 最近、街には動く城が現れる。城にいるのは、魔法使いハウル。
若い女性の魂を抜き取って食べるという。街の人は、夜の外出は控えるようになっていた。
 しかし、ある五月祭の日。
 周囲は晴れ着を着て着飾り、ウキウキと外出している。ソフィーも出かけたくなる。次女の勤めるパン屋へ出かけ、クリームケーキでも買おうと考えた。
 ソフィーが雑踏の中で、踏まれないように軒づたいに歩いていると、青と銀色の派手な服装をしたキレイな若者に話しかけられる。
 若者はヒアシンスの香水をつけていた。ソフィーはお茶に誘われるが、気後れして断る。そして、妹のいるパン屋へ急ぐ。

 パン屋に着くと、レティーは大勢の男性客を捌きながら、楽しそうにやっていた。レティーは同僚に何か囁くと、場所を代わってもらい、姉を裏へ案内し、椅子とクリームケーキを出した。残念がる客たち。

 レティーは、実は自分は三女のマーサで、魔法使いの見習いをしてすぐに、入れ替わりの魔法を覚えてレティーのもとにやってきた。マーサは出世ではなく、結婚がしたかったという。子どもも十人産みたいという。
 逆に、レティーは自立がしたかったという。二人は入れ替わり、髪の色も目の色も相手の姿になりすますことに成功した。しかし、魔法はだんだん自然に溶けるから、数ヶ月すればもとの外見に戻るという。

 クリームケーキの味もわからなくなるソフィー。自分は二人の妹のことを何もわかっていなかったのだろうか。レティーの姿をしたマーサは、ソフィーは、母のファニーにタダで良いようにこき使われているだけだという。
給料も貰ってないんでしょ。あたしはここで、見習いとはいえ給料はもらっているわよ、というマーサ。店が混み始めてきたので、ソフィーは帰路に着く。

呪いをかけられ、老婆の姿になったソフィー

 ソフィーが店番をしていると、高級な帽子を被ったお金持ちそうな客が、息子と思しき若者を連れ来店した。帽子が欲しいというが、ソフィーが出す帽子をことごとくけなしていく。なぜ、うちのようなしがない帽子屋に来たのかと問うソフィーに、相手は、私に刃向かうからだ、と答える。荒地の魔女を敵に回したようだ。呪いは解けない、という捨て台詞を残して、荒地の魔女は去った。

 しわしわの手や頬、鏡を見て変わり果てた自分の姿に気づいたソフィーは、ファニーが帰ったら大騒ぎになると、パンとチーズと肩掛けを持って帽子屋を飛び出した。

 途中でカカシを助け、犬を助け、杖を手にする。
 疲れ果てて上を見上げると、ハウルの動く城からモクモクと黒い煙が出ていた。あんなに煙が出ているのなら、暖炉があるに違いない、と考えたソフィー。若い女の心臓を食べるというハウルも、今の自分の心臓を食べるとは思えない。どこか暖かいところで、身体を休めたかった。杖を振り上げ、動く城に向かって、止まれ、と命令するソフィー。城が、止まった。

 

緑のネバネバ

 ハウルの城で押しかけ掃除婦となったソフィーは、ハウルが抜き取った若い女性の魂がどこかに隠してあるのではないかと、一部屋一部屋、棚から壁まで、綺麗に掃除をして回った。ハウルの部屋は、掃除をさせてくれない。
汚れているのが落ち着くという。

 ある日、ハウルはたいそう不機嫌な様子で帰ってきた。浴室で、髪を染めると、ソフィーが片付けたり置き場所を変えたためか、意図しない髪の色になったようで、泣きわめいて大騒ぎをした。ハウルは身体中を緑色のネバネバしたヘドロに包み、火の悪魔、カルシファーの炎を危うく消すところだった。
 ソフィーはカルシファーにヘドロがかからないようにハウルを浴室へ引きずり、シャワーでヘドロを洗い流した。
 マーサとレティーの癇癪に慣れていたソフィーは、大抵の癇癪には別の原因があることを心得ていた。温かい飲み物を出し、ハウルの話を聞いてやるソフィー。
 しかし、ハウルの身勝手な論理をいくつも聞いているうちに、どうでも良くなってくるソフィー。気がかりは、今魂を狙われているのは妹のレティーだということだった。

引越し

 王室付きの魔法使いサリバンが行方不明になったため、新しい王室付きの魔法使いに任命されそうなハウル。ハウルはなんとしてもこれを避けたかったため、ソフィーとマイケルをハウルの母親とその侍従に仕立て、王様に断りに行かせるが、却ってハウルを王室付きの魔法使いに任命するという勅令を引き出してしまったソフィー。
 ハウルはこの命令を無視するため、雲隠れすることに決めた。
 現在の実際の拠点は、ハウルの実家がある街だが、良い物件が見つかったという。なんとそれは、ファニーが売りに出していた、ソフィーの実家だった帽子屋なのだった。

p.224
 五分後、ハウルがまた降りてきました。「ねえ、ソフィー、出口をつなげる場所に注文はあるかい? それに、どんな家に住みたい?」
 そのとき、ソフィーの心に浮かんだのは、フェアファックス夫人の家でした。
 「花がたくさんあるすてきな家」
 

ハウルの動く城 1 魔法使いハウルと火の悪魔
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著 西村醇子訳 徳間文庫 2017年 電子書籍版発行

 この部分、読んでハッとした。これって、もう、、、新婚あるいはそれを楽しみに待つ恋人同士のような会話ではないか。
 いつ?いつからなの?もちろんそれを仄めかす部分はたくさんあったと思うけど、とページを戻る。どこという決定的なところはないけど、日々の積み重ねだろうか。強いていえばやはりあの緑のネバネバか?

 恋とか愛とか友情とかって、ハウルが二時間も浴室で身だしなみに精を出して、カッコつけてるとき、外見を取り繕っている時にはやってこなくて、
ダメな部分、緑のネバネバとかを出している時に不意にやってくるのは、なぜなんだろう。もちろん、初対面やそれに近い人に出してもひかれるだけなので、ある程度の信頼関係と、それまでの楽しい体験などを共有しているのが大前提だとは思うけど。信頼関係という受け皿を構築した上で、狙ってではなく、思いがけず巻き込まれた悲しみだったり苦しみで曝け出さざるを得なかった、曝け出すことの可能な人間関係を構築してあった幸運があった時に、思いがけず人と人の絆はできるような気がしてならない。
 
 日々生活していれば、毎日が春、というわけにもいかない。嵐もあれば、雨もある。でも、いきなり嵐の時に手を差し伸べてくれる人はいない。春の日、穏やかな日に築いていた信頼関係があるからこそ、嵐の時も縁あって近くにいた人が、手を差し伸べる幸運に恵まれるのかもしれない。
 
 かといって、人は普通に考えて、信頼している人にしか弱みは見せられないと思うので、平時に信頼を貯金しておくしかない。

p.296
「ちがうのよ。ハウルは親切にしてくれた」と言ったとたん、ソフィーは自分の言ったことは本当だと気づきました。いささか変わっているとはいえ、ハウルは親切でした。いえ、ソフィーがあれほどハウルをうるさがらせてきたことを考えると、とても良くしてくれたと言えます。

ハウルの動く城 1 魔法使いハウルと火の悪魔
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著 西村醇子訳 徳間文庫 2017年 電子書籍版発行


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