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記憶は旅をする

一歩ずつ前に進んで、
一段ずつ上に登って、
今この時の景色は次の瞬間には見えない気がしている。

あまりにも前のことで、すっかり自分の中にはもう残っていない気がしている。

でも、積み重ねた毎日は層になって、確実に私の中に存在しているのだ。

たまには、自分の中の記憶を辿る旅をしてみないか。

もっと自分のことをいとおしく、大切に思うことができるはずだから。

***

認知機能が低下した高齢者の人向けに、自分の若い頃を回想したり、楽しかった昔の思い出を回想したりすることで、認知機能の維持や随伴症状の緩和を期待できると言われている。

でも何も高齢者の方に限らず、自分が小さかった頃、学生時代のことをもっと何度も思い出してみても良いんじゃないだろうか。

そう思えたのは、びっくりするほどきちんと母が押入れに仕舞い込んで取ってあった私の昔の作文や日記を見たからだ。

そう、この記事にも書いたけれど、母は本当に何から何までしっかりと昔のものを取っている。
(工作や作品なんかも取っていたらしく、私に「必要か?」と聞いてきたのだが、それは流石にもう母が気持ちの整理がつくなら処分して、と伝えた。)

よくまぁ狭い家にこんなに何から何まで取っておけるスペースがあったなぁと思うほどに。

そして、とりあえず半分は興味本位でその作文や日記たちを開いてみた。

ああ、私って意外と◯◯なんだなぁ。
仕事が忙しい父親と過ごした少ない時間もこんなに大切に思って過ごしていたんだなぁ。
妹に対して、随分と偉そうな態度を取ってるなぁ。
父親の仕事についてインタビューして書いた作文は、父親のことを隅から隅まできちんと観察し調べて丁寧に書いているなぁ。

勿論、忘れかけていたことを思いがけず気付かされたこともあった。
でも、うっすらと記憶の底の方に見え隠れしていたものが、スッと意識の表面に現れて、なんとも言えない懐かしさと、カチッとパズルがはまった時のような気持ちの良い感覚も訪れたのだ。

そう、きっと私は忘れてなんかいなかった。
何層にもなって私を作り上げてきた一部を、また別の角度から見ているのだ。
単純に懐かしいだけではなくて。
単純に忘れてたことを思い出しただけではなくて。

とても不思議な感覚だった。
そして、愛おしい気持ちになった。

一生懸命歩いてきた自分への労いや、親も含めて私に関わってくれた全ての人への感謝の気持ちが溢れてきた。

昔を懐古するのは、いわゆる高齢者の脳機能を活性化させる云々の為だけじゃなく、
自分という小さな歴史、細い道を色々な角度から見て、感じるため。
どんな年齢の人にもきっと必要で、記憶の層は、人生の大切な贈り物なんじゃないか。

母が仕舞い込んでいたものたちから、ふと沢山のサプライズプレゼントを貰った気持ちになった。

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