unbreakeable

(動画を拝借します。)


たった一度だけ「男女の事情」というテーマで作品を創ったことがある。

後にも先にも

これ一回きりだった。






今はどうだか知らないけど

自分が現役当時

「男女が一緒にやることはご法度」みたいな

暗黙のルールのようなものがあった。

特に誰かに言われたとかそういうわけではないけれど

そういう雰囲気がとにかく強かった。

なので、「男女の事情を表現する」というのは

当時、ご法度中のご法度でもあった。






また、自分はミュージシャンとのセッションの中で

「恋愛事情がバンドの継続に支障が出ることがある」

というようなことをチラホラ見てきたというのもあって

自分のダンスのみの作品を異性とやる時は必ず

「恋愛禁止令」のようなものを自分に課していた。

また、相手にもその旨を伝えていた。

それは

「ダンスを継続すること」に対しての、リスクヘッジだった。







どの世界もそうだと思う。

「恋愛事情」が絡むと

うまく行っている時は、相乗効果でぐんぐん加速するけど

破綻した時は、必ず何かに支障が出ることになる。







これを一緒にやった彼とはもちろん恋愛関係ではなかった。

あくまでも「同志」

この作品だけは自分が頼み込んでやらせてもらった。

「たった一度でいいから男女の事情を表現してみたい」

最初、彼は難色を示した。

「マジかよ・・・」

そんなことでもつい言葉に出そうな雰囲気だった。

だけど、自分は彼に

「この作品はアナタとじゃないと、出来ないと思う」

と言い、

そしてこうとも告げた。

「やるなら中途半端が一番よくないと思ってる」

「本物の恋人同然でやって欲しい」

彼にとっては無理難題だったに、違いない。






当時、ご法度中のご法度のことをやろうとする。

それだけでもリスクがある。

終わった後に、必ずあーだこーだ言われることになる。

でも、自分は何故か確信していた。

「この作品はぶっちぎりでいい作品になる。だから誰も文句言わない。」

彼とだったら、

中途半端にやらなければ、絶対にぶっちぎれる。

絶対的な自信があった。

その代わり、練習はむちゃくちゃハードだった。

そもそも、男女の絡みの表現というのは一度も創作したことがない。

自分も、彼も、初の試み。

「どうやったら一番魅せられるか?」

しつこいほどの練習を重ね、いくら時間があっても足りないぐらいだった。

頭も身体も、情熱も理性も

試行錯誤の日々を送った。







そして迎えた本番当日、彼にこう言った。

「終わった後、だれかに ”本当に恋人なの?”って聞かれたら
              それが自分たちにとっての成功を意味する」

当時無名だったので、誰も自分たちに注目はしていなかった。

しかし、客の多い少ないは一切関係ない。注目度なんかどうでもいい。

「すべてをフルアウトする」

ご法度中のご法度をやるときに、中途半端は禁物。

黙らせるぐらいにぶっちぎれば、おのずといい作品だと言われる。

【絶対的な確信アリ】

文字通りの「フルアウト」で、「自分が描く男女の事情」を表現しきった。

あの時持っているすべてを、出し切った。

あれ以上はない。

感無量だった。







期待してなかったものが、想像を超えて遥かにイイものだった時

人は黙る。

そして一瞬の沈黙が、一気に歓喜に変わる。

無名の自分と彼に、どよめきと大きな拍手が送られた。

あの類の反応を受けたのはこの時が初めてだった。

「ぶっちぎった」

自分は笑いが止まらなかった。

そして彼もまた、笑いが止まらなかった。

その数時間後、彼がそそくさとやって来て自分にこう耳打ちした。

「さっき知らない人に”本当に恋人なの?”って聞かれたんだよねー。」

一瞬顔を見合わせた後、

「大成功」

そう耳打ちして、彼と乾杯した。

「ありがとう」






それから1年は

自分と彼は「恋人」だと、ずっと言われ続け勝手にそう思われ続けた。

大成功がもたらした大きな余韻だった。



拙い文章お読みいただきありがとうございました。




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