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今ふりかえる極東ロシアの旅⑤ ダーチャでロシアの家庭料理をいただく

 2017年の夏、私は極東ロシアの旅に出かけ、「暗い」「冷たい」「怖い」というロシアのイメージを随分と変えた。それから約5年後、この原稿を書いている2022年4月の時点で進行しているロシアによるウクライナ侵攻はいかなる理由があっても正当化できるものではない。しかし、いまの時点にたって当時、極東ロシアで見聞きし、感じたたことを伝えることは意義があることだと考え、何回かに分けて極東ロシアの旅をふりかえることにした。

 2017年8月17日、ウラジオストクの旅では、多くのロシア人がソビエト時代から持つようになったダーチャという別荘を訪問した。

ソビエト時代に生まれた別荘

 ダーチャというのは、もともと小さな家という意味で、週末はそこで過ごし家庭菜園などをして楽しむ場だ。第二次大戦の途中から戦後にかけて食料不足の解決のために市民に土地を与えよという運動が起こり、1960年代のフルシチョフ時代に一家族あたり600平米の土地を与えることが法制化された。ハバロフスクでクルージングのガイドをしてくれたジュリアさんやビクトリアさんの家でもダーチャがあるそうだ。

 ソ連崩壊後の食料危機の時期にも、ダーチャの家庭菜園での食料生産が危機の回避に大きな役割を果たしたそうだ。そのためダーチャをいちどこの目で見たいと常々考えていたのですが、今回、その希望が実現した。

 案内してくれたのは、アーシャさん(1番目の写真).。日本語を勉強している大学生だ。訪問先はアーシャさんのおばあさんのナタリーナさん(2番目の写真)のダーチャだった。

ガイドのアーシャさん
ナタリーナさん

ナタリーナさんのダーチャ

 ナタリーナさんは、かつてウラジオストクを母港とする海洋研究船の食堂のシェフで、日本の港にも来たことがあるそうだ。ダーチャは、週末を過ごす別荘なのだが、ナタリーナさんは引退後ここに住んでいるということだ。

 この記事のタイトルの写真が、ダーチャの外観である。なかなかすてきだ。

 庭では色々な野菜を作っていた。小さな温室まであった。この野菜を使って、ロシアの家庭料理をふるまってくれた。

庭の家庭菜園
屋外にあるテーブル
収穫した野菜

 ナタリーナさんのダーチャは、狭かったけれども、部屋の中は綺麗でとてもオシャレだ。

このテーブルで料理を頂いた
リビングルーム
ベッドルーム
料理を作るナタリーナさん

ロシアの家庭料理がおいしかった

このダーチャで、ナタリーナさんがロシアの家庭料理を振舞ってくれた。

これがロシアの家庭料理

 ロシアのスープといえばボルシチだが、ここではシーという具沢山のスープを頂いた。

具たくさんのスープ シー

 次の写真のお皿で大根なますのように見えるのはキャベツの酢の物。緑色はゼンマイや海藻のおかす。右下のかまぼこみたいに見えるのは、豚の脂身である。これを黒パンを挟んで食べる。

 その次の写真がシベリア風水餃子のペリメニ。中華料理の影響なんだろう。ホテルで食べたのも同じだが、ナタリーナさん手作りのペリメニの方がはるかに美味しかった。

シベリア風水餃子 ペリメニ

 次の写真がナタリーナさんの畑で作った野菜のサラダ。これには、オリーブオイルではなく、ひまわりオイルと醤油で味付けしたそうだ。

ひまわりオイルの醤油のドレッシングが味付けしたサラダ

 そして、よく冷えたロシアのシャンパンで乾杯した。ほんとうは、フランスのシャンパーニュ地方で作った白のスパークリングワインしかシャンパンと名乗ってはいけないらしいけど、ここでは細かいことは言わない。

ロシアのシャンパン

デザートは、ハーブティとブラディというパンケーキみたいなお菓子。これもナタリーナさんの手作りだった。

ハーブティーとブラディ

 ロシアへ来て、いろいろなホテルやレストランで食事をしたが、このナタリーナさんの家庭料理が一番美味しかった。ナタリーナさん、アーシャさんとのいろいろな会話も楽しかった。

豊かなライフスタイル

 料理が得意なお婆さんと、日本語ができる孫がタグを組み、家庭菜園つきのダーチャをうまく活用して、「ダーチャでロシアの家庭料理を楽しもう」というオプショナルツアーを企画し、日本人と楽しく交流しながら、お金も稼ぐ。ダーチャは社会主義の遺産の一つだろうが、食料危機を経て、いまは普段の仕事や生活と、自ら農業生産し、食を作るとことを結びつけた新しいライフスタイルの一つの基盤になっているのかなと思ったりした。とても豊かな生き方かもしれない。日本でも、「半農+半X」というライフスタイルか注目を集めているが、それと通じるものがあった。

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