ブーケ

ジャンルに囚われることなく、私から出てきたもの達を、そのまま束ねて。そんな気持ちで名付…

ブーケ

ジャンルに囚われることなく、私から出てきたもの達を、そのまま束ねて。そんな気持ちで名付けました。 バンドメイド品も、creemaに出品しています。 https://www.creema.jp/c/hikarinobouquet

最近の記事

ミシンで人差し指を縫いました。

    • 還暦までに大人になって、子供から人生を始めたい・・・

      • 暮れによく聴く『第五』の歌詞に、『いろはにほへと』はよく嵌まる。

        • 楽園-Eの物語-エピローグ

           翌年、ルージュサンは男の子を産んだ。  あの不思議な空間で、授かったとしか思えない子だ。  産婆が開かせられなかった拳は、セランが触れるとふわりと開いた。  そして五つづつ小さな種が、セランの掌にこぼれ落ちた。 「なんだろう。この種」  セランは首をかしげたが、すぐに嬉しそうに叫んだ。 「あの時僕、他の実も食べてみたいと思ってた!!」 「じゃあ『神』からのプレゼントですね」  ルージュサンが笑いながら言う。 「うん。僕、これ庭に植えるよ。実ったら皆でたべようね」 「楽しみで

        ミシンで人差し指を縫いました。

          楽園-Eの物語-お帰りなさい

           フィオーレが突然立ち上がった。 フィオーレの長い毛の間に、花を挿して遊んでいたトパーズとオパールがのけぞる。  フィオーレはかまわずドアまで走り、振り向いて吠えた。 「どうしたの?」  いぶかりながら、ドラがドアを開ける。  フィオーレは門に向かって駆け出した。  そして、人の背丈よりずっと高い門を、軽々と飛び越える。 「フィオーレ!?」  庭にいたナザルとユリアが後を追う。 「「きっとそうよ」」  トパーズとオパールも、同時に叫んで飛び出した。 「うわっ!」 「なんだっ?

          楽園-Eの物語-お帰りなさい

          楽園-Eの物語-小龍のキャロ

          《腕の良い船頭を乗り継いで夜通し急げば、四日とかからん》  ムンはそう言って、船を手配してくれた。  帰路を急ぐセランとルージュサンには、有難い話だった。  ムンの言葉通りに三日めの朝、二人は船を下り、馬車を頼んだ。  ルージュサンが切り揃えた、セラン銀髪が肩辺りでさらさらと揺れる。  一方、ルージュサンの癖毛は、四方八方、好き放題に跳び跳ねていた。 「花火に頭から落っこちた、入道雲みたいに可愛らしい!!」  と、セランは誉めちぎり、ルージュサンを複雑な気持ちにさせた。 「ま

          楽園-Eの物語-小龍のキャロ

          楽園-Eの物語-龍のいる洞窟

           二日後、ルージュサンとセランは、洞窟へと向かっていた。  食べては寝る、を繰り返し、驚異の速度で体力を回復したものの、いつもよりずっと、歩みは遅い。  セランの懐には《始めの娘》が持っていたという、石のナイフだ。  ルージュサンのストールから、こぼれ落ちそうになった三つ編みの先を直しながら、セランが聞いた。 「あの実はなんで、オグにあげたんですか?」 「ごめんなさい。オグならあの実を増やして、村の特産物に出来ると思ったからです」 「じゃあその時、沢山食べてね。すっごく美味し

          楽園-Eの物語-龍のいる洞窟

          楽園-Eの物語-目覚め

          「おはよう」  目が覚めたルージュサンの前にあったのは、見慣れた顔だった。 「いつも僕が起こしてもらってるけど、今回は僕が先だったね」 「え?もしかして?」  ルージュサンの瞳が尋ねる。 「うん。生きてるよ、僕たち」  ルージュサンは体の感覚を確認した。  湧き水のように澄み切っていて、空気のように軽い。  ただ、あまり力が入らない。  周りに目をやると、ムンの家だ。 「愛してるよ。ルージュ」  見つめ続けるセランに、ルージュサンが微笑みを返す。 「いつ目が覚めたんですか?」

          楽園-Eの物語-目覚め

          楽園-Eの物語-『歌い女』の行く方

           ムンは山道を駆け下りていた。  もう少しで村に着く。  五日目の朝だった。  昨日の夕方風の向きが変わると、ルージュサンの歌にセランの声が絡まり始めた。 歌声は、振動という振動を自在に操り、圧倒的な力で、繊細に、ムンと村長の体と心の細胞を奏でたのだった。  二人は抗いがたい眠気に、夢現の時を過ごしたが、それが、今日の早朝、途絶えたのだ。 ムンと村長は急いで『歌い小屋』に行き、扉を開けたが、中には誰も居なかったのだ。  二人は周りを探したが、ルージュサンの姿は無かった。  辺

          楽園-Eの物語-『歌い女』の行く方

          楽園-Eの物語-声の出会い

           聞こえてくるのは風の音だけだった。  隠された園から戻ると、セランはずっとルージュの歌を探していた。  自分は果物を口にし、水も飲んだ。  それでも腹は減り、とても寒い。  水だけで歌い続けるルージュサンの消耗は、比にならない激しさの筈だ。  それでもきっと、歌うことを止めはしない。  村の為に、山の為に、この地方の為に、そして自分の為に。  ふいに、風の音が止んだ。  セランは急いで入り口の岩に駆け寄る。  ルージュサンの歌声が聞こえてきた。  凛とした、あの懐かしい声。

          楽園-Eの物語-声の出会い

          楽園-Eの物語-神との会話

           四日目を迎え、ルージュサンは意識が朦朧としてきた。  不眠不休で食べ物もない。  息継ぎの時に、水を口にするだけだ。  目も閉じ、全ての力を歌に注ぎ込んでいる。  止まない風はきっと、この声をセランに聞かせはしない。  それでも、止めるわけにはいかなかった。  時折、ふうっ、と、頭に空白が出来る。  そこに何かが話しかけてきた。 ―何故、ここに来た― ―夫が『神の子』の役目をするからです― ―あれは『神の子』にしては、随分と規格外だ―  ルージュサンの目に映りはしないが、ふ

          楽園-Eの物語-神との会話

          楽園-Eの物語-秘密の園

           道は意外と平坦だった。  壁面の内側は、光る苔が覆っている。  セランは手燭であちらこちらを照らしながら歩いた。  蝋燭の火は、息が出来る目安にもなる。  こんな道が続くのであれば、子供でも通れるだろう。 なくもないだろう。  セランは好奇心と共に、先に進んだ。  暫くすると、体が暖まってきた。  歩いた為かと思ったが、やはり空気が暖かい。  どの位歩いただろうか。  二人で拉致された時、ルージュサンが脈で時間を計っていたのを思い出した。  引き返そうとした時に、ぼんやりと

          楽園-Eの物語-秘密の園

          楽園-Eの物語-洞窟の奥には

           セランはじっと耳を澄ましていた。 けれど、いつまで経っても歌声は届かない。  出口を塞ぐ、大きな石の向こうから、強い風の音が聞こえて来るだけだ。  その音が次第に大きくなるのに落胆し、セランは洞窟の奥に戻ることにした。  蝋燭の炎が揺れているのは、どこからか風が入っているからだ。 そして居なくなる『神の子』。 最初に思い当たった可能性について、セランは調べてみることにした。 微かな風を辿って、祭壇の近くを回る。 向かって右手の岩の裂け目に、風の吹き込み口があった。  両手で

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          楽園-Eの物語-疚しさの変容

           ムンと村長は、耳を澄ましていた。  風向きはお誂え向きだ。  炉を挟んで腰を落ち着けると、間もなくその歌は聞こえてきた。  途端に二人は総毛立った。  文字通り、頬の産毛まで立ち上がったのだ。  強い風の音と交ざり合い、けれど紛れることなく空気を揺らす。  それは鋼の声だった。  大きな器を叩いたように、薄い板を震わすように、鋭い刃を滑るように。  高く低く太く細く、 大胆でかつ繊細に。  自由自在に歌を表し、二人の耳も肺も足先も、あらゆるものを響かせていく。  それは慣れ

          楽園-Eの物語-疚しさの変容

          楽園-Eの物語-葛藤

           女達が出ていった後、ルージュサンは呼吸を整えた。  心の中で五回、息を薄く平たく吐くように五回、囁くように五回、抑えた声で五回。  決まり通り『春の喜びの歌』を歌う。  そして普通に歌い始める頃には、山下ろしがごうごうと吹き荒んでいた。 ―これではセランに届かない―  ルージュサンは思った。  今までの『歌い女』は、皆『神の子』の母親だ。  息子の未来を見る力は、役立ちもした筈だ。  いつまでも無邪気な様も、親にすれば可愛いものだ。  けれどこの二つが合わされば、知りたくも

          楽園-Eの物語-葛藤

          おかん・・・

          おかん・・・