フォローしませんか?
シェア
くにん
2021年4月25日 14:30
「憎いとか言ってたのは、なんなんだあっ」 冒頓は必死で短剣を振るって、次から次へと目の前に飛び出してくるサバクオオカミの奇岩を打ち倒し続けました。胸を激しく上下させつつ前へ前へと進みながらも、その苦しい息の中から大声を絞り出しました。 その大声を止めようとしたのか、冒頓の喉元をめがけて新たに飛び込んできたサバクオオカミの奇岩がありましたが、彼はその体の下に潜り込むと、腹の中へ短剣をずぶりと差し
2021年4月22日 19:22
母を待つ少女の奇岩は、自分の乗っているサバクオオカミの奇岩の背中を叩き、合図を送りました。 冒頓たちの姿を求めて盆地を走っていたときには母を待つ少女の奇岩が先頭を切っていたのですが、冒頓の鋭い気迫を感じ取ったことに対応して、彼女は冒頓と戦うために自ら進み出るのではなく、群れの奥の方へと少しづつ下がっていきました。母を待つ少女の奇岩がいた位置にできた空隙には、新手のサバクオオカミの奇岩がゴツゴツ
2021年4月18日 17:50
「そらそらそらぁっ。よし、次ぃ」「左からくるぞっ。前は俺が受けるっ」 男たちは互いに声を掛け合いながら、サバクオオカミの奇岩の牙と爪から自分たちを守っていました。 でも、彼らの方からサバクオオカミの群れの中へ躍り出て戦おうとはしませんでした。勢いに任せて単独で行動しがちな踏独(トウドク)でさえもです。 それは、連携を組んで戦うのも、自分の剣技を奮って戦うのも、しっかりと相手の位置を認識でき
2021年4月15日 21:31
月の砂漠のかぐや姫 第174話「イナイ・・・・・・。ドコ、ニイッタ・・・・・・」 目標に向かって真っすぐに走りこんで来たサバクオオカミの奇岩たちには、急に真横に動いた冒頓たちは、まるで消えてしまったかのようにさえ思えたのでしょう。 それらに指示を送っている母を待つ少女の奇岩の戸惑いが、冒頓たちには感じ取れました。 初手は冒頓の想定通りに進みました。自分たちが馬に乗っているのであれば、ここで
2021年4月11日 16:57
「羽磋殿、俺がきっと敵を討ちますっ。オオッオオオッ!」 ひとまずは馬を捨て置くことにして、全員でサバクオオカミの奇岩に向けて駆けだした護衛隊。その中でひときわ大きな声を上げていたのは、後方を走る苑でした。 既に苑は、青く輝く飛沫に見せられていた世界の中からは、抜けだしていました。「羽磋たちが崖から転落した」という皆から聞いた話を基にして、彼が頭の中で作り上げていたその世界は、苑にとってはとても
2021年4月7日 23:27
奇岩たちは、既に大地の裂け目を回り込み、冒頓たちの正面からまっすぐに迫ってきていました。 サバクオオカミの奇岩の四肢が大地を蹴る力強い音が、どんどんと大きくなってきました。 大型のサバクオオカミの背に乗りながらこちらの方に顔を向けている母を待つ少女の奇岩の姿が、しっかりと見分けられるようになりました。 人間のような眼を彼女が持つはずがないのに、母を待つ少女の奇岩が恨みのこもった眼で自分たち