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パニック障害を打ち明けたら自分の世界が少しづつ広がっていった話


これは私が初めて、職場で仲良くなった人に自分の症状のことを打ち明けた時のお話。


私は自分がパニック障害だと知った時に、
【人に知られたくない】【恥ずかしい】
【誰かに言ったら広められて噂される】
【変に思われる】【引かれる】などいろんな
ことが浮かんで遠くに住んでいるヨガ留学の時の仲間3人と、
家族以外の誰にも話さずにいた。  


自分が元気な時は、うつ病の人は怠けてるだけだなんて思ってたくせに。



誰かといてもそわそわしてしまうし、
この人の前で倒れたらどうしよう…
といつも気になって心の底から楽しむことが出来なかった。

話も上の空。

きっと一緒にいると人も楽しくなかったと思う。


どこかに行こうと誘われてもどこで起きるか分からない発作に怯えて断ってしまうことが多く、友達と出かけることもなくなった。


新しく友達を作ろうとも思っていなかった。

そんな頃にコロナが流行り始め、
家に引きこもっていてもおかしく思われないので、私にとっては好都合だった。


この頃はコロナのせいで職を失うなんて思ってもみなかった。


コロナが流行し始めた年の8月、
経営が厳しくなったからお店を閉めるので他の仕事を探して欲しいと告げられた。


在宅ワークで毎月決まった額をもらっていた私にとって大ピンチがやってきた。

体調も完全によくなったわけではない。


10月まではお給料をくれると言われたが、
すぐに働かないと今から働いても給料をもらえるのは次の月。


急いでDomoやタウンワークを漁った。


今まではアパレル、飲食店、
居酒屋などで働いてきたからやったことのある職種で、尚且つとりあえず週3短時間で働かせてくれるところが良かった。


子供を産んでから一度も車で通勤なんてしたことがないもんだから、車で片道10分以内のところも候補に入れた。


経験した職業ではなかったが私の希望条件に合う求人があり、個人経営の書店が候補にあがった。

本や漫画が大好きだし、
絵を描くのも好きだからぴったりかもしれないと思った。


面接希望の電話をしてすぐに面接、
次の日には採用の電話が来てとんとん拍子にスタートすることになった。


パニック障害になってから一度コンビニでバイトをしたことがあったけど、
子供が熱を出しすぎて休んでばかりで気まずくなったのと、
レジに行列が出来ると冷や汗と動悸が止まらなくて、家から5分なのにそこから帰れなくなってしまって、
それからは外で働いていなかった。


本屋の人たちには、
ひとまずパニック障害を隠して働くことにした。



「あの人パニック障害らしいよ」なんて変な風に思われることが嫌だったし、
そんなことで受からなかったら嫌だと思って伝えなかった。



週に3回、4時間からスタートして、
月の給料は3-4万にしかならなかったけどとりあえずなんとか働くことができた。

人間関係はともかく、
その空間が自分の大好きな空間だからだと思う。


何度も不安感に襲われたり、
冷や汗をかいてきて帰りたい帰りたいと思う日もあった。

不安感以外にも、風邪や下痢、
腹痛などの日はそれにプラスで不安感も出てくるというような感じ。


そんなことを繰り返しながらも1年半働いて、人に仕事を教えられるくらいになっていた。


そんな頃、新人さんが入ってきた。
私よりひとつ上で、
地元の人ではなく県外から旦那さんの転勤で来てると言う。

同じ時間のシフトが入っていたので仲良くなり、同じ時間に上がった時に思い切ってランチに誘ってみた。

食の好みが合って、
同じものを美味しいと感じる人だった。


色々話しているとハンドメイドも好きということで一緒にやろうということなり、
うちでお互いの出来ることを教え合い作品を作り上げるということもするようになった。

私はプラ板、彼女は裁縫や樹脂粘土担当。

失敗したり綺麗なものが作れたり、
笑いながらすごく楽しい時間を過ごした。


お互いのおすすめの本や漫画を貸しあったりして、ここが良かった!とかこの言葉よかった!なんて話したりもした。


ある日、2人とも気になる漫画が映画化されると聞き一緒に行こうという話になった。


その時はパニックの状態もかなり良かったし行けるだろう!とノリでOKしてしまい、
日にちも決めた。


その日が近づくにつれ、
予期不安が襲う。


本当に行けるかな。
途中で気持ち悪くなったらどうしよう…
迷惑かけたくないな。
本当のことを言おうかな。
でも怖いな。
車で1時間くらいかかるよな…
渋滞しないかな。

楽しみなはずなのに色んな思考がぐるぐる回る。


ついに前日になってしまった。


どうしよう。

明日はもう行けないかもしれない。
明日は体調が悪いから行けないと伝えて、予定を変えてもらおう。


でもな…
行きたい気持ちもチャレンジしてみたい気持ちもある。


葛藤した私が出した答えは、



彼女に電話をするだった。



LINEで電話をかけて、



「明日の映画館に行く件なんですけど、
実は私パニック障害っていうやつがあって…
これになってから家族以外の車に乗ったことがなくて、行きたい気持ちもあるし、
チャレンジして見たい気持ちもあって、
でも行けなかったらどうしようという気持ちもあり、どうしたらいいのか分からなくなって電話をかけました」


必死だったからちゃんと覚えてないけど、多分こんな感じのことを話したと思う。

人に伝えることがこんなに勇気がいることだとは…


勇気を使い果たしたことと、なんて返答が来るのか分からない恐怖で涙目になる。


『そうだったんですね。映画を観るでも、
いつもみたいに家でハンドメイドをするでも、どちらでもいいですよ(*^^*)
DVDになってから観てもいいですし』



彼女はいつもと変わらない優しくて柔らかな声で言った。


えっ!!!?!!

とか、

そうなんですか?!?!?!

とか、

そんな風に答えるのかななんて勝手に思っていたから拍子抜けしてしまった。


1人で勝手に思い詰めていただけで、
伝えたからと言って何かが変わるようなことはないのかもしれないと思った。


彼女は私が「今日ちょっと具合が悪くて…」とか、自分から言う時だけその話を聞いてくれて、彼女から「最近調子はどうですか?」などは聞かなかった。


伝えた後も前もいい意味で何も変わらなかった。


もっと気を遣われたりするのかなとか、心配されたりするのかなって思ってたけど本当に何も変わらなかった。



週1、多い時は週3くらい?
バイトが終わると色んなカフェやうどん屋さんに行った。

仕事の愚痴や、今日のアレ面白かったよねなんて盛り上がる。



私の大抵大したことないのにめちゃくちゃ不安になってしまう話も聞いてくれた。


歯が痛いけど歯医者さんが嫌だとか、
いちいちこんなことで不安になるとか、
そんな話。


それから、彼女も昔うつっぽくなったことがあるという話も聞かせてくれた。

そんな時、お母さんが自分に余計な気を遣わずにいつも通り接してくれたのが嬉しかったと言っていた。

彼女自身にそういう経験があったから、
私に対しての接し方なども自然にわかっていたのかも知れない。


少し遠くて(往復30分くらいでも私には遠かった)自分では絶対に行かないところ、行こうとも知らないところにも一緒に行った。


自分の運転で行けそうにない時は、
彼女の車に乗せてもらい連れて行ってもらった。



これからも色々行きたいなぁと思っていた頃に彼女の旦那さんの転勤が決まってしまう。


しかも県外に。


最後に2人でかがみの孤城を観に行くことになった。(正確には最後から二番目だけど)


車で1時間くらいかかる、
大型ショッピングモールだ。


ついにその日がやってきた。



行けるか行けないか不安だったけど、
もし具合が悪くなっても言えばいいんだ!
そう意気込んで出発。



渋滞もせずにスイスイと行け、
あと少しでランチを食べるラーメン屋に着くという時に本当に少しだけ、
ガードの手前くらいで信号が赤になり、
数台車が繋がった。


私はトンネルやガードが苦手で、
おまけに赤信号で動けない。
苦手なものが重なったせいか、
手汗、動悸が始まる。



あぁ、来てしまったか……


リュックの中に詰め込んだ対策グッズを次々と試しツボを押したりミンティアを口に入れたり、色々試す。


ソワソワしていることに気付いたのか、

「大丈夫ですか?」

と声をかけてくれた。


素直に「ちょっと動悸が…」とか
言えばいいのに、


大丈夫です。


と答えてしまった。


おかげでとーーーっても美味しいはずのラーメン屋は味がせず、半ば無理やり食べたようなものになってしまいトマトラーメンなのにトマトの味がしなかった。


もう帰りたい……


いつもそうだ。

私はこれになると帰りたくなる。



まだ映画も観ていないし彼女とする最後のドライブなのに。


自分に嫌気がさす。

何とか乗り越え、映画館へ。


うわ、地下だ……

映画館は地下だった。


エスカレーターでかなり下っていった。

降りるにつれて不安が増していく。


地上に帰りたい……


そんな不安を抱えながらも映画が始まると面白く、見入ってしまった。


終盤のあるシーン。


自分の感情を激しく揺さぶられたそのシーンがきっかけでまたもや冷や汗と動悸が。


でも今1番いいシーンなんだよな……
こんなことで彼女に話しかけたらだめだ。


映画を楽しみたい気持ちと、
早く終わってくれ……という気持ちが入りまじる。



映画が終わり2人で目を合わせると2人ともめちゃくちゃ泣いていた(笑)


疲れたけど楽しかった……!!!!!!


そのあと少しショッピングモールを周り、
帰りは何事もなかったかのように帰ることが出来た。


せっかくのドライブを邪魔しやがってパニックのやつめ!!!


調子が良かったはずなのにどうして今日は何度も何度も襲ってきたのだろう……



私が行きの車でしっかりと伝えられなかったからだろうか。

話すだけなのになぜ出来ないのだろう。


やっぱり私の根本に人に迷惑をかけたくないという気持ちがあるらしい。


これをクリア出来ると、
大分変わっていくのだろうと思った。


もしタイルループ出来るのなら、
出発からやり直してあの場面で素直に
「ちょっと手汗と動悸がしてしまって…
休憩してもいいですか?」
と素直に言ってみたい。


人に迷惑をかけたくないという思いは決して悪いことではないはずなのに、
意地を張ってしまったことで余計自分を苦しめる結果になった。


私はいつも発作の出た日はずーーーーん。となって、落ち込む日々が続いたり考え込んでしまうのだが、この時ばかりは回復が早かった。


だって、今まで家族以外の誰かの車に乗ることが出来なかったのに乗ることが出来て、
しかも往復2時間のところまで行き、映画を観て帰ってきたのだ。

すごい進歩だ。


彼女と出会わなかったら、
誰かと出かけられないままだったかもしれない。


色んなところに一緒に行ってくれてありがとう。

そして彼女との別れが近づき、
最後の日に2人でよく行ったそば屋さんで2人の大好きなカレーうどんを平らげた。


このカレーうどんを美味しい!
と言ってくれたことで仲良くなったのだ。


私はカレーうどんを見る度に彼女を思い出す。



そして記念写真を撮りに行った。


大人になってからジャンプをして
写真を撮るなんて青春だ。




プレゼントをお互い渡してさよならをした。
2人とも涙目だったけど、泣かなかった。


プレゼントの中には手紙が入っていて、
書いてあることがすごく嬉しくて泣きながら読んだ。



彼女がいなくなってからの職場はとてもつらまなかった。

心に穴が空いたようで、やる気も起きない。

でも人間というのは不思議なもので環境に慣れていく。


私は今でもその本屋で働き、来月で3年になる。


ここで働いていなければ彼女と出会えなかった。
色んな縁が重なって人は出会うのだなと、いつも思う。


彼女と出会ってから、
パニック障害になった私は恥ずかしいとか
引かれるいう思い込みが消えた。

本屋の上司と話す機会があった時に、
辞めたあの人もこの人も今働いてるこの子も前の職場で鬱になったけど、
ここで働き始めて徐々に元気になったよなんて話してくれて、
えぇ!あんなに元気なあの人が?!
と心の中で驚いた。


上司は今でも私がパニック障害だったことは知らない。

みんな声に出しては言わないけど色んなことを抱えていて、
幸せに見える人にも悩みがあって、
自分だけが悲劇のヒロインじゃないんだと思えるようになった。


彼女とは今でも文通をしたりテレビ電話をして過ごしている。


この間彼女の誕生日だったのでプレゼントを送ったら、たまたま気になっていた商品だったらしく喜んでくれた。


益田ミリさんの新刊買いましたか?と最近写真付きで連絡したら、
なにやら彼女の好きなラジオパーソナリティの方が紹介してた本だったらしく、
これってシンクロニシティじゃない?と思ってニヤついた私だった。


ふと思う。
パニック障害になる前の尖った私だったら、
彼女と仲良くなれただろうか?
パニック障害が私を丸く、優しくしてくれたのだ。


我が家の冷蔵庫には、
彼女と作った色が濃くなりすぎたぼのぼのがいつでも浮かんでいる。



彼女がもし、私に会いに来てくれる時があったら間違いなくこう言う。



「カレーうどん食べに行きませんか?」

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