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「そんなこと言ってない」の内実

東京・表参道にある青山ブックセンターは私が最も好きな書店です。

選書も兼ねて定期的に同店の公式ツイートをチェックしています。先日「ん?」と目を引く一冊を見つけました。

「我思う、故に我在り」ってデカルトは言ってないんでしょうか? あるいは何かの誤解? 気になります。ぜひ職場の哲学書の棚に置きたい。

明治維新の元勲・板垣退助が岐阜で襲われた際に発した「板垣死すとも自由は死せず!」は実際は言ってないという話をどこかで聞きました。↓によると諸説あるみたいです。

この種の、知名度とは裏腹な「実はそんなこと言ってない」エピソードは探せばたくさんありそうです。

たとえば1989年の日本シリーズ。第3戦で勝利した近鉄バファローズの加藤哲郎投手が「巨人は(パリーグで最下位だった)ロッテより弱い」と発言し、それに発奮した巨人が4戦以降を全勝して日本一に輝いた、ということになっています。

でもどうやら加藤投手は「シーズン中の方がしんどかった」「巨人の投手はいいけど打線は」という趣旨のコメントをしただけなのです。拡大解釈というかメディアの悪意を感じませんか? まったくの出鱈目ではないけど「そこまでは言ってないよ」と。

あと私はプロレスファンなので、長州力選手の「藤波、俺はおまえの噛ませ犬じゃない!」も外せません。これも実は「何で俺がおまえの前を歩かなきゃいけないんだ!」というものだったとか(タッグを組むと、格上が後から入場する)。

ただこれに関しては先ほどとは逆に、メディアの長州選手へのシンパシーを感じました。当時の彼が藤波選手に対して抱いていた真情を、ある意味で本人以上に的確に言い表しています。おかげでリング上が盛り上がり、ふたりのステータスも上がったわけですから成功例でしょう。

デカルトのケースはどっちなのか? こういうささやかな楽しみをお客さんに提供できる書店員でありたいです。

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