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プロレスが「平和の祭典」に相応しい理由

楽しみです。

故・アントニオ猪木さんの軌跡を追うドキュメンタリー映画。伝説のモハメド・アリ戦は確実に出てくるはずですが、オールスター戦における馬場さんとのタッグも見られたら嬉しい。

と言いつつ、私がいちばん興味を惹かれるのは湾岸戦争前夜のイラクや北朝鮮で開催した「平和の祭典」に関するもの。晩年の猪木さんはそういう視点を大事にしていたと思うので。

プロレスの興行を通じて平和を訴える。この発想はいま考えても斬新です。いや頭で考えるだけなら誰でもできるかもしれない。でも実際にリスクを負い、行動に移せる人はそうそういないはず。猪木さんは大塩平八郎や西郷隆盛、吉田松陰らと同じく、陽明学でいうところの「知行合一」の人だったと確信しています。

子どもの頃、親や周りの大人に「平和の祭典」の話をしたら鼻で嗤われました。たかがプロレスじゃないかと。当時は悔しかったけど、いまだったら連中の間違いを指摘できます。たかがじゃない、他でもないプロレスだから意味があったのだと。

なぜならプロレスは相手を一方的に叩き潰す競技ではないから。敵の技を食らい、主張を全身で受け止め、そのうえで己の答えを返していくスポーツだから。そして激闘を繰り広げた両者が互いを認め合い、タッグを組むことも珍しくない。さらに言うと、汚い勝ち方をするよりもいい内容で負ける方が各方面に評価され、支持を得られる。

まさに国際政治や世界平和への示唆に富んだ「平和の祭典」に相応しいジャンルだと思いませんか? 

週刊ファイトの名物編集長として知られた故・井上義啓さんは、プロレスを「底が丸見えの底なし沼」と評しました。これ以上に的確な定義を私は知りません。それぐらい奥深いし、白か黒かの二元論では測り切れない。私たちの生きる人の世がそうであるように。

公開は10月6日です。ぜひ。

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