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「名もなき末端」の矜持

前に書いた「ハードボイルド書店員日記【59】」でオアシスの歌詞を使わせていただきました。

”Live Forever"は名曲です。「ロックスター=夭折」という美しいイメージに疑問を呈する哲学に反体制の魂を感じました。

この曲を聴くと「長生きが悪いわけじゃない。名声やお金にかまけて戦う心を忘れ、大きなものに取り込まれて堕落するのがダメなんだ」と身が引き締まります。

でも彼らの楽曲でいちばん好きなのは”Acuiesce”(アクイース)です。

↑は公式ではありません。公式はCD音源ですけどライブの方が1億倍クール。曲のテンポが速く、歌詞も余分なものが削ぎ落とされています。アップしてくださった方の素晴らしい和訳も付いているのでぜひ。

これを聴くと「互いを高め合える存在」を連想します。私の世代だとプロ野球の清原和博と野茂英雄。大相撲の貴乃花と曙。プロレスなら三沢光晴と小橋建太でしょうか。

この関係性にはふたつのパターンがあります。ひとつは「最初から力が拮抗している」。もうひとつは「競い合う間に差が縮まる」。

見る側は力が拮抗しているとエキサイトします。でも我が身に置き換えると「自分より上」と認められる相手と競う方が面白い。

いまだったら「青山ブックセンター」の山下店長や「読書のすすめ」の清水店主など。彼らの選書や発信から多くのことを学ばせてもらっています。感謝しかありません。と同時にイチ従業員に過ぎない私の方がたぶんレジで接客する回数も本を読める時間も多い。末端は末端にしかできないことをしている。そこに一抹のプライドがあるのです。

繁忙期に進んでレジに入り、コミックにシュリンクを掛け、雑誌に付録を挟み込み、鳴り止まぬ電話を取り、荷受けや返品や棚整理やゴミ捨てまで網羅する。そんな諸々の雑務に忙殺される「名もなき書店員」のひとりとして、偉大なカリスマたちの選書眼と競い合いたいです。

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