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もうひとつの「完全試合」

2か月前、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手が28年ぶりの「完全試合」を達成しました。

野球における「完全試合」とは「相手チームの打者を一度も出塁させずに勝利すること」を意味します。ヒットはもちろん、エラーや四死球で塁に出ることも許さない。文字通りのパーフェクト・ゲームです。

プロレスに「完全試合」の概念はありません。でも先日オカダ・カズチカ選手からIWGP世界王座を奪ったジェイ・ホワイトの戦いぶりは、完封や完勝の次元を大きく上回っていました。大会場のメインで組まれたトップ同士の一戦であそこまで力量の差が見えたのは初めてかもしれない。

ただ面白いことに、多くのプロレスファンは野球におけるそれのように相手の攻撃を封じ込め、一方的に勝つことを「完全試合」とは見做しません。

ガンガン技を食らい、何度かピンチを迎えるも、決して死線は踏み越えさせない。そして敵のファンが抱く「よし行ける!」という期待感が最高潮へ達したタイミングで引っくり返す。この「対戦相手とファンを掌の上に載せ、自在に操る手腕」こそがプロレスにおける「完全試合」の要。ジェイの組み立てはその点において完璧でした。

野球でたとえるなら、毎回ヒットを打たれるけど点は許さず、終盤にしれっとリードを奪い、詰将棋の要領で追加点を重ね、結果的に10-0で完封するようなものでしょうか。

かつてアントニオ猪木さんが実践した「相手の6の実力を8まで引き上げ、10で仕留める」という「風車の理論」を連想しました。両者の力の比が10:6だとは思わない。でも少なくともあの一戦に関してはそう映りました。そしてガチの実力云々は関係なく、プロレスのリングではただ「試合の中の強さ」が全てなのです。

まだ20代でキャリアも10年以下。「令和の怪物」はここにもいました。オカダ選手が猪木さんの後継者みたいな雰囲気でしたが、今後はジェイ・ホワイトにも注目です。

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