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憲兵についての本を読むことにより、日本の歴史や文化を再考するきっかけに。「聞き書き ある憲兵の記録」

寒冷な風が暴れる一日でした。柳沢の気温は6℃。風速は6m。お年寄りが古本屋に立ち寄るには危険な天気。あまりの寒さに閑古鳥も店内で凍えているでしょう。

店主にとっては今日も読書の1日となりました。先日から読み始めていた「聞き書き ある憲兵の記録」という本を、静かな店内でそっと読み終えることができました。

この本は、ひとりの男性の戦争の記録です。山形の農村出身の貧しい若者が日本兵となり中国大陸に渡り、そこで憲兵となり、出世し、大きな過ちを繰り返し、敗戦後にソビエト連邦で抑留され、最終的に日本に戻るまでの物語です。

一般人からすると、「憲兵は特別な人」という印象だと思います。しかし読書後に店主は「憲兵となり、残虐な行為をする可能性は誰にでもある」と思いました。

それはこの本を読めばわかりますが、この主人公の土屋さんが憲兵となり、中国人を拷問にかけ虐殺した経緯は、この人だけのものではないと感じたからです。その時代に生きる人であれば、誰しもが同じような選択をしたのではないでしょうか。

故に、現在生きる私たちは「戦争反対!」と安易に叫んで終了させるだけでなく、同じ過ちを繰り返さないためにどうすべきか?考えなければならないと思いました。

以下は、本を読んでいて気になった部分を簡単にまとめたものです。

①ワシントン軍縮会議の流れから日本陸軍は現役常備兵を削減。その代わりとして青年訓練所を増設。有事の際の予備兵力化した。しかし、この青年訓練所に通うことが若者の誇りとなり、軍国主義化した雰囲気を育てた。P25

②兵役に出た家族を支える相互扶助制度のようなものが農村にもあった。しかし、それは逆に脱走などで兵役から逃れられなくするシステムでもある。また、出世しないで故郷に戻ることは恥だとされる雰囲気づくりもあったP37~38

③初めて支給された軍服には弾痕があり、血の跡もあった。しかしこれは新平たちの浮ついた気持ちを引き締めるもの。P41

④後ろ弾という言葉がある。古兵たちが新兵につらくあたると、戦地で仕返しをされかねない。P54

⑤残虐行為に向かわせるのは人間の出世欲や名誉心。P58

⑥戦争においての戦果は簡単にでっち上げられるもの。P66

⑦憲兵は志願制。軍の警察と呼ばれていた。そして仕事は後方支援なので前世よりも安全。出世競争に敗れても、憲兵として挽回できる。P70

⑧憲兵の勉強は大変。学科が憲法、刑法、行政法、刑事訴訟法、群警報、警察法、憲兵実務、語学(中国語)、それに馬術、水泳、逮捕術、剣道などの術科があった。P72

⑨給与は営業加俸や憲兵加俸がついて49円90銭。内地の学校の教師でも月給は45円前後の時代。何よりも一般陛下の上等兵の給料は10円ほどだった。それに努力次第では出世の道も開かれていた。P77

⑩初めての拷問。P81~

因みに、この本を書いたのは朝日新聞の記者。元憲兵の山形さんにインタビューし、それを本としてまとめたものです。読者によっては左翼的だという感想を抱くと思います。しかし店主としては、まずこういった本を読むことが大事だと思います。

因みに今回は時間の都合で書けませんでしたが、時間があるときに以下の気になった部分を追記したいと思います。

P96憲兵が逮捕者を作りあげる過程
(証拠集めする必要がないので、逮捕すればするほど業績は上がる)
P100拷問を行う側の心理
P102でっち上げ
P109東条憲兵
P117成功・成果
P124金一封が行方不明
P129密偵の乱痴気
P141日本軍によるアヘンを使った中国占領
P150日本人捕虜700人は消されたかも。将校はピストル自殺
P160一睡もせず尋問を繰り返す
P166減刑を餌に情報提供
P167.8 拷問を前提とした芋ずる式検挙
P200関東軍の醜態、根こそぎ動員
P205敗戦濃厚になると逃げる日本軍

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