暗黒テニス時代か?

 3月上旬に開催されるはずだったBNPパリバ・オープン(インディアンウェルズ・マスターズ)が中止になってしまった。インディアンウェルズ・マスターズはカルフォルニア州インディアンウェルズで開催される大会である。グランドスラムに次ぐ大規模大会であるマスターズ1000に分類され、その中でも飛び切り規模のでかい大会の一つである。この大会の翌週に控えるマイアミ・マスターズと併せて春の祭典なんて言われる。賞金は優に100万ドルを越える。これ以上の大会は他にグランドスラムしかない。まさに第五のグランドスラムである。

 そんな大会が中止になってしまった。言うまでもない、新型コロナウイルスの影響である。報道でこれでもかというほど騒がれていてもはやうるさいレベルだが、自分はそれほど危機感を抱いてはいない。あまり出歩かないから、当然といえば当然である。しかしこう、趣味にしているテニス鑑賞にまで影響が出てしまうと、何だかムカつく。いつまでもアーカイブで食いつなぐことなどできるわけがない。新しい試合が見たい。わがままみたいだが、毎年そういうサイクルで動くスポーツだから、それが崩れると何だか無性に腹が立つのである。セリエAが無観客試合をやろうが、春のセンバツが中止になろうが、そちらは僕は興味がないのでどうでもよい。だが、テニスは大好きなのでそう切り捨ててもられない。普段その人が楽しみの拠り所としている何かを奪う、それがコロナウイルスの恐ろしさであろう。症状の軽重ではない。それに伴って経済的損失も起こるから、質が悪いとしかいいようがない。

 3月12日現在、アメリカでのコロナウイルスの流行はまだまだのようである。トランプは「昨年のインフルエンザでの死者は30000人以上、コロナはまだ20人くらいしか死んでいない、抑制は出来ている」みたいなことを言っていた気がする。実際のところは、僕は知らない。まぁ、それはそれとして、こうした大規模イベントは、アメリカ人だけではなくて、諸外国からもたくさんの客が来る。なにせ出場選手は、ナダル、ジョコビッチをはじめとした、大人気の選手ばかりである。一目見ようと来る者も、世界中のファンも、それはそれは沢山いるわけである。その中に感染者予備軍がいないとは、言い切れない。それを承知の上で開催して、後に集団感染が発覚なんてしたら、目も当てられない。なら中止もやむなし、といった感じであろうか。

 なんにせよ中止になってしまったインディアンウェルズ・マスターズ。これは全米で開催される全スポーツの大規模トーナメントの内で、最も早く中止されたものになった。以後、どのスポーツでどのような大会が行われるか、僕は知らない。テニスに限って言えば、この後にマイアミ・マスターズという同規模の大会があった後、ミドルクラスの大会がいくつかあり、4月に入ると舞台をヨーロッパに移し、クレーシーズンが始まる。

 マイアミの開催も怪しいが、何より恐ろしいのはその後のクレーシーズンである。主要な大会は全仏オープン、モンテカルロ、マドリード、ローマ等である。フランス、イタリア、スペイン、このうちイタリアは絶賛コロってる国である。感染者は7000人を超えているそうで、韓国の感染者数とほぼ並んでいる。そうなると、まずローマの開催は怪しい。そしてお隣のフランスの全仏オープン、モンテカルロあたりも開催するか微妙である。スペインのコロナ事情は全く知らないが、他の主要大会が中止になって、マドリードやバルセロナだけ開催というのも考えにくい。ここも開催は怪しいと思っている。

 全仏オープンは1891年から続く歴史ある大会で、1世紀を超えるその歴史の中で中止になったことは、第一次大戦中と第二次大戦中を除いて、ない。もし、今回のコロナウイルスの影響で中止になったら、ある意味テニスの歴史に残る事態を目撃することになる。そんなもの、願い下げである。

 僕はナダルが無双するクレーシーズンを見られないとなったらつまらないことこの上ないし、毎年毎年の「今年はさすがに…」と思いながら、結局勝っちゃうあのハラハラ感を味わえないのも残念である。だから絶対にやってほしいが、やはり難しいか。

 しかし、テニスの主要な大会が続々と中止になったら、今期のATPツアーはどうなるのだろう。実質ナシか。それと、オリンピックのテニス競技はどうなる。知事は開催するする言ってるし、IOCの会長も似たようなもんだが、どうなるかは皆目見当がつかない。無観客でやるのだろうか、そうまでしてやる意味はあるか。去年まではフェデラーが来る来るといってはしゃいでいたが、どうもそうも言ってられなくなっている。これ以上楽しみが減るのは勘弁である。

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