大きな雨粒が傘にあたって、バタバタと大きな雨音に変わる。

今日は選挙。大型台風が上陸しようとも、今日は選挙。

普段は区役所で期日前投票をキメるのだけど、あいにく、今週はずっと雨&締め切りフィーバーで、タスクの大型台風がやってきていた。
そんな私的な大型台風が通過すると、今度はホンモノの大型台風が日本列島へジャイアンのごとくやってくるのだからたまったもんじゃないな。
たとえ台風が上陸しようとも、選挙の日は変わらないのだもの。

傘をさしてもジーンズの裾は濡れるし、なんならスニーカーの中が氾濫状態。
雨に濡れたコンクリートと私のスニーカーの相性はすこぶる悪く、バナナの皮を踏んだ漫画の主人公みたいに軽やかに足元が滑る。

その上、いつもの癖で、ついつい区役所に来てしまった！！！ そうだ、投票日は投票所に行かなくちゃ！！ アホみたいに当たり前のことなのに、ウッカリしてた。普段から比較的、ウッカリしているけど、今週の私ウッカリ度は正気の沙汰じゃないぞ！

だってね、だってね、買い物に行けば、スーパーの袋にお財布を入れたまま、(多分)袋を捨ててしまい、お財布の消息は途絶え、保育園に送っていけば娘のオムツと息子のオムツが入れ替わっているし、おまけに主人は菊花賞で惨敗……。
「多分、家で紛失してます。ゴミと一緒に捨ててしまったかも。」なんて奇妙なこと言っちゃうんだから、お巡りさんもビックリするはずだ。

閉鎖された区役所の扉を前に、今週の自分のウッカリ度を哀れんで……い、る、と。
同じく大雨の中、投票用紙を手に立ちすくむ青年がいるではないか！！
「おお！ 同志よ。私もウッカリ、区役所を投票所だと勘違いしていたのだよ！！ 」というオーラを全開にしていると、立ちすくむ青年が「I want to vote...」と話しかけて来た。

ああ、そうか。外国人さんなのか。そりゃわからないよな、困るよね。この街に長らく住んでる私だって間違えているんだから！
たどたどしい英語で投票所である小学校へ案内し、私もいざ、投票へ。

投票所は、近所の小学校。
縁もゆかりもない小学校だけど、三輪車が並ぶ駐輪場？ の渡り廊下はだだっ広く、私が通った小学校を彷彿させる。小学校の作りなんて、どこも似たり寄ったりなんだろうけど。

普段は会議に使う教室なんだろうか？ 投票所となる広い多目的ホールは、打ちっ放しのコンクリートで足元から冷える。
おじいちゃん、おばあちゃん、それから小学校と不釣り合いな強面のおっちゃんたちが行き来する校舎はどこか新鮮。

投票所に漂う空気がピシリとみんなの姿勢を正し、テストを受ける前のような緊張感が走っている。

自分の生年月日を伝え、投票用紙をもらい、鉛筆で文字を書く。

もちろん文字を書き違う。想定内だ。

って、

そもそも、デジタル化が進む現代で手記ってなんだ！？ オールドスクールすぎやしないか！！！ さっきの外国人の彼は上手に書けただろうか？ ほら、マークシートとかにしたらさ、文字間違いの無効票も減るし、文字を書くのが苦手な人も助かるし、開票作業も効率化され人件費削減につながる、モウマンタイじゃん！！ 幸い、私は2人の子供を主人と交代で子守したから、ビショビショになりながらも投票所に行けたけれど。大型台風の日に、選挙へ行くって鬼かよ日本！！！ さぁ、文明の力をこういう場面で見せつけてやろうじゃないか！！！ 
そんな選挙の非効率さに疑問を抱く2017年10月22日。

あれ？ 間違えたらどうしたらいいんだっけ？

とっさに出た言葉は、
「先生、消しゴム貸してください。」

縁もゆかりもない校舎の雰囲気は、私を小学生の頃へタイムリープしてくれる、とでも言っておこう。

隣にいたおっちゃんの含み笑いした息が聴こえる。

今日はなんて最高の一日なんだ！！ そう笑いながら、菊花賞を掴み損ねた主人と、お財布を捨ててしまったであろう私は、お互いの敗北に祝杯をあげる。

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