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コンプライアンスの戦略的マネジメント: 企業価値向上への鍵

こんにちは。ブランド×弁護士の三浦です。最近、noteでの投稿がきっかけでご連絡いただくことが増えてとても嬉しいです。「誰もが正々堂々と、胸を張って働ける社会」の実現のため、これからも発信を続けていきます。

今回はコンプライアンスに対する戦略的なマネジメントの重要性についてお話しいたします。コンプライアンスへの積極的な取り組みは、お客様に選ばれるブランドづくりや魅力的な組織づくりに繋がり、企業価値にプラスの影響をもたらすのです。

コンプライアンスのビジネス上の価値

コンプライアンスへの取り組みは、企業の競争力と持続的な成長において重要な要素となります。お客様やステークホルダーからの信頼を築くことで、ブランドの選ばれる価値を高めることができます。

例えば、「非倫理的な企業の商品は買わない」「倫理的な行動を取る企業の商品は値段が高くとも購入する」という消費者が2020年代に入ってから増加傾向にあることが複数の消費者調査から明らかになっています。倫理的であることは、単なる善悪の問題を超えて、商品やブランドの差別化要素になりつつあるわけです。

また、従業員が組織に長く働きたいと思うための環境を整えることも重要です。コンプライアンスに取り組むことは、組織の魅力を高め、優秀な人材を引き付ける一因となります。

パーソル総研が発表した「企業の不正・不祥事に関する定量調査」によれば、不正への関与や目撃という体験は従業員の幸福度・組織コミットメント・継続就業意向等にマイナスの効果があることが示唆されています。コンプライアンスは、リテンション、エンゲージメントの向上策の一つになりつつあると言っても良いでしょう。

出典:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/corporate-misconduct.pdf

戦略的マネジメントの重要性

現状のように、法令に対する受動的な対応だけでは、企業価値向上の効果を十分に見込むことはできません。むしろ、コンプライアンスに積極的に投資し、戦略的なアプローチを取ることが必要です。

戦略的マネジメントは、目的を明確に定め、ヒト・モノ・カネに代表される経営資源を適切に配分して最大の効果を得るための手段です。戦略的マネジメントが欠如していると、投入した経営資源に見合った企業価値向上効果は期待できません。戦略的マネジメント不在のコンプライアンスは経営資源の無駄遣いなのです。

このような無駄を排し、コンプライアンスを効率的に企業価値の向上につなげていくにはどうしたらいいのでしょうか。

戦略的マネジメントへの道

まず「法令遵守」や「レピュテーション維持」を目的とするコンプライアンスと決別する必要があります。

松下幸之助は、企業は社会の公器であり、その使命は社会に価値を提供することだと考えました。最近では、企業の存在意義(パーパス)を明確にし、社会に貢献する経営を実践する「パーパス経営」の考え方が一般的になりつつあります。

パーパス経営では、個々の企業活動とパーパスとの整合性が重視されます。このような視点に立つと、「法令遵守」「レピュテーション維持」は企業の目的達成のための手段・過程の一つであり目的そのものではない、ということに気づかされます。

コンプライアンスの目的を新しい視点で明確にしたら、次はその視点から経営資源の再配分について検討します。そのためには、企業内の既存の活動をリストアップし、コンプライアンスの目的達成のために役立つ要素を見つけ出すことが重要です。

例えば、人事部門の理念浸透活動やウェルビーイングの取り組み、広報部門のブランディング活動はコンプライアンスと親和性の高い活動です。このような活動とコンプライアンス活動をコラボさせ、リソースを共有・活用することで、コンプライアンスを戦略的に推進することができます。

終わりに

以上、コンプライアンスの戦略的マネジメントについてお話ししました。コンプライアンスと企業価値向上との関係性が見えにくいのは、そもそも企業価値向上につながるよう適切なマネジメントがなされていないからです。

多くの企業がこの事実に気づいていない今こそ、ビジネスの中でコンプライアンスを戦略的に活用し、最小限の経営資源から最大の企業価値向上効果を得て競争優位に立つチャンスなのではないでしょうか。

なお、社内外から共感されるコンプライアンスの目的の見つけ方については、「コンセプトドリヴン・コンプライアンス」に詳しく記載していますので、併せてご覧いただけますと幸いです。


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