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アラ還HER2陽性乳がん 術後42日

乳房全摘の手術後、退院して約1か月。今日も外来受診だったけれど、私の平坦になった胸板と皮膚の間の液は、随分減ってきた。中央を押さえると 脇の方へチャプチャプと水気が移動し、まだしっかり引っ付いていない部分がはっきりする。
『わ、だいぶ減ってきましたね。』と主治医。笑顔がいい。主治医は、いつものように私の右胸の傷の下あたりを消毒し、50㏄シリンジを付けた18ゲージ針で穿刺する。いつもこういう時、『ちくっとしますね、痛いですね、麻酔追加しましょうね』などと 患者さんに声かけをしていたのに、神経を根本から切っているので全く痛みを感じない。なんだか、得したような、さみしいような気がする。

完全に排液が無くなってから化学療法を始めるとのことで、またもや、予定は未定になってしまった。早く始めたいという思いと、いつか主治医が『化学療法しなくていいかも』と言ってくれるのではないかどこかで願っている
という私の往生際の悪さはなんだろう。

長いナース経験の中で、たくさんの患者さんとかかわり、患者さんの状態に合わせてどのような看護を展開するのか、短期、長期で目標を立てて看護を計画してきた。1週間ごとに評価修正を繰り返し、退院までに計画の立案、実施、評価、修正を繰り返していく。電子カルテ化が進んでからは、ほとんどが、テンプレートを使用していたけれど、そこに個別性も組み込んで計画を立てていた。いま、思うと、看護計画は立派なのに、なんて浅はかな介入であり、ケアであり、うわべだけの評価だったんだろうと思う。
多くの患者さんが、こんな不安を持ったまま、入院、手術、化学療法を受けていたんだ、私はそこで十分寄り添うことが出来ていただろうか、と思う。
あの時は、自分は精一杯、頑張っているつもりだった。

今回の私の入院中に、ナースさんのバイタルサインの測定後、痛み以外に尋ねられたことはなかった。それどころか、私が腋窩リンパ節郭清をしたかどうかも、だれも把握していなかった。経済的な不安や、今後の化学療法、副作用の不安。心配ごとだらけだったのに、どうですかと誰も聞いてくれなかった。ボディイメージの変容だってある。
乳房を切除したら、感染を起こさないよう熱をはかり、傷をみて、早期退院に向ける。看護目標はそれくらいで、私は立派に看護計画を達成して退院できた。でもいまだにモヤモヤしている。
厄介なことに、ナース経験上の医療スタッフに対する期待もあったと思う。本当にこれ、厄介。


患者側になって初めて見えることもある。
アラ還ナースは、アラ還なりに、経験的にも時間的にも若手にはできないことができるかもしれない。がんサバイバーナースにできることがまだあるかもしれない。

復職したいな、復職できるかな。

復職するぞ。

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