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免疫記憶のメカニズム

注釈


自然免疫、獲得免疫

ヒトの免疫系には、先天的に備わった「自然免疫」と生後獲得していく「獲得免疫」があります。自然免疫はマクロファージなどにより病原体に対して初期防御を行います。一方、獲得免疫はB細胞やT細胞などのリンパ球により一度侵入した抗原を認識し、排除します。

自然免疫、獲得免疫の双方に免疫の記憶のメカニズムが備わってわいることが解明されています。

獲得免疫と自然免疫は、相互作用によって、相互に影響を与えている可能性が示唆されています。

自然免疫系の産生するサイトカインが、T細胞へ影響を与え、B細胞を介して、プラズマ細胞へ分化、Igの生産を促す。一方で、マスト細胞に発現するレセプターにIgが結合するという説がありますがその詳細は未解明です。


自然免疫記憶のメカニズ

エピゲノム変化とは

接頭辞「エピ(付加した、の意)」と「ゲノム」を繋いだ言葉で、DNAやDNAが巻き付くヒストンが化学修飾(メチル化など)された遺伝子配列情報。このような化学修飾情報のいくつかのものは、細胞分裂を超えて伝わる。またこのような情報は環境要因により変化し、それが様々な疾患の発症に影響することが示唆されている。

自然免疫記憶のメカニズムを解明


「自然免疫記憶のメカニズムを解明」する下記の研究において、ATF7の変異マウスではマクロファージが活性化されていて、マクロファージの活性化によって、ヒストンがメチル化されることによりATF7の発現が抑制されていることが判明した。

この過程で、マクロファージにおいて、免疫系遺伝子にATF7が結合し、ヒストンのメチル化酵素であるG9aを運ぶことが判っている。

しかし、病原体の外部ストレスが加わると、TLRからのシグナルにより、リン酸化されたATF7が、免疫系遺伝子から外れ、メチル化が低下し、転写が誘導される。この結果、ATF7の変異が活性化することになり、この状態が長期に渡って続くようになり、外部刺激による免疫記憶を獲得した状態になる。

「自然免疫記憶のメカニズムを解明」理化学研究所、石井分子遺伝学研究室の吉田圭介特別研究員、石井俊輔上席研究員らより


免疫記憶に必須なB細胞シグナル因子

感染症やワクチンで抗体をつくるB細胞が免疫を長期にわたって記憶するために細胞内シグナル分子である「TBK1」が必須であることが解明されています。

感染症に関わる免疫は、一度免疫がつくと長期に記憶されることが知られています。「TBK1」が、感染症などの免疫記憶の長期維持に関与していると考えられます。

「感染やワクチンにおける免疫記憶に必須なB細胞シグナル因子を発見」国立研究開発法人日本医療開発機構 チョバン ジェヴァイア(COBAN, Cevayir)(東京大学医科学研究所 感染免疫部門 マラリア免疫学 教授)発表より

https://www.amed.go.jp/news/release_20211216-02.html


免疫記憶の維持と遺伝

ワクチンなどの接種後、時間の経過と共にその効果が薄れるものがあることを鑑みると、上記に上げたストレスなどの環境因子、化学物質、ワクチン接種を含めた外部刺激に対して、免疫記憶を獲得しやすいもの、しにくいものがある可能性がある。

獲得免疫の免疫記憶が維持される要因として、Ig抗体で陽性化したB細胞の形成、その過程のインターフェロンや長期生存プラズマ細胞の形成と維持などが関わっていることが判っている。

この際に活性化される分子シグナルは、一定ではないので、物質や細菌など刺激する物質により、刺激される分子シグナルなどが異なる可能性がある。

また、自然免疫では、マクロファージに関わるメチル化の低下により、ATF7変異が転写が促された。ATF7変異の転写は、遺伝子の改変を必要とせず、世代を超えて遺伝することが判っている。


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