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矛盾する「こころ」

夏目漱石の小説に「こころ」という
本があります。

漱石の本の中では
私としては読みやすく
物語のストーリーもわかりやすい
誰にでも入りやすい小説だと思います。

物語のストーリーは
「先生」と「友人K」「お嬢さん」の
三角関係がメインとなります。
その中で
「先生」と「K」の葛藤が
描かれた作品です。

葛藤のメインテーマが
「向上心」と「恋心」。
残念ながらその二つは
混ざりえることはできないということです。

つまり、自分を向上させる気持ちと
人を愛するという行為は

矛盾するということです。

青年期でこの問題にぶつかる方も
いらっしゃるかもしれません。
人としていくら好きなかたでも
社会の一員として
その人を諦めなければいけない。
そんな悲しい経験をされた方も
いるかもしれません。

そんな矛盾に取り組んだ哲学者がいます。
ドイツの哲学者、イマヌエル・カントです。

少しだけ、説明します。

彼は、感覚で捉える「経験」と
自分の頭で捉える「理性」の対立を
合体させた哲学者です。
「経験」で捉えることには確実な真理はに辿り着けません。
「理性」で考えても独断や偏見に陥る可能性があります。

そこで、カントは「経験」で味わう感覚は「理性」の「枠組み」に組み込まれることで認識する。という仕組みを考えました。
(コペルニクス的転換とカントはいいました)
この仕組みを行うものを「悟性」と言ったのです。

しかし、この「悟性」でも
捉えられないことがあります。

例えば、
世界の時間は無限か?有限か?
人に魂はあるのか?ないのか?
天国はあるのか?ないのか?などなど。

これらは相反する考えがどちらも(哲学の)理性で正しいと証明することができます。

これを哲学用語で「二律背反」
(にりつはいはん)
と言います。
つまり、人間の理性でも悟性でも「真理」を
捉えることが不可能なものなのです。

再び話を「こころ」に戻します。

自分を高める「向上心」と
人を好きになる「愛する」という行為は
人間の理性や悟性でもどちらが正しいか(優先か?)はわかることが不可能だということになります。(二律背反だから)

漱石の「こころ」の面白さは
この理性で捉えられない「向上心」と「愛」の
関係を一つの物語にぶつけ合わせたものだと
私は考えました。

読む人は「先生」と「K」の関係をもとにして
この矛盾する気持ちを小説から感じ取ることが
(共感することが)できるのです。

これが小説「こころ」が
高い評価(もちろん日本の文豪の作品ですから)を受ける一つの要因になったと思います。

宇宙が有限か無限か?はわからないです。
(相反する二律背反だからです)
同じように人の心も矛盾だらけです。
時には不条理な経験にぶつかり
一晩中、悩むこともあるかも
しれません。

それでも人は生活して、生きていかなければ
なりません。
そんなやるせなさを「こころ」という小説が
読者に代わって物語ってくれるのです。

本来、小説とは
相反する矛盾(二律背反)を
物語るために面白く読まれているものかも
しれません・・・。

参考文献

今回は小説✖️哲学という考えを
noteに綴ってみました。

これは、長年の自分にとっての謎が解けたような考えになった次第です。
哲学者カントに拍手👏したいです。

少しでも読んでくださった方に
感じてくれる所があれば幸いです。

また、哲学や小説がなぜ面白いのかが
お伝えできたら嬉しいです。

ここまで、最後まで読んでいただき
本当にありがとうございます。

今日はクリスマス・イヴですね。
素敵な一日をお過ごしください。

では また

メリークリスマス🎄🤶

おわり

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