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メガネと放蕩娘/山内マリコ(2017)

ここ最近、体調の諸々の不調を整えるための
栄養療法が上手くいっていなくて
セロトニンやドーパミンが足りていない。

だから、鬱々として閉塞感のある日々を過ごしているのだけれど、

そんな時は、山内マリコの世界観に浸りたくなる。

この閉塞感のリアルな表現は、岡崎京子の世界観にかなり近いものがある。

ここのところは、
コミックはあまり読まなくて、活字を読みたい気分だし、小説なら図書館で読めるから、
この氣分が続くうちは山内マリコを読み漁ってみようと決めた。

ちなみに、同著者が原作の映画も
「ここは退屈迎えに来て」
「アズミ・ハルコは行方不明」を立て続けに、見た。
(この2つの映画レビューも追って書きたい)

その2つがすごくしっくり来たし、
特に「ここは退屈迎えに来て」は、
門脇麦が良くて。

(成田凌とのコンビは、「チワワちゃん」も見てたから、この手のテイストの物語にしっくりくるように感じる)

「アズミ・ハルコは行方不明」は、痛々しいのだけれど、すごく自分自身の身に覚えもある痛みで。

山内マリコの表現は、とにかく

痛いほどわかる!!!!



この作品では、地方都市の閉塞感や、
「何かが起こることを期待してみたけれど結局何にも起こらなかった感」とか
徒労感とか、
これまで私が読んだ山内マリコ作品とすごく地続きな世界観だけど、
そこから一歩踏み込んで、
少しでも楽しくなれそうな作戦を考えてやってみた、というネクストステージ感。

「地方創生」「地域おこし」

「コミュニティ作り」

みたいなことがテーマになっていて、そういったテーマの小説を読むのは初めてでもあるから面白い。

私自身、
この小説が出た2017年に、
東京から長野へ地域おこし協力隊として移住したりだとか、

上京する前には地元(地方都市)の商店街の寂れ具合を目の当たりにしていたりだとか、

そういった経験があるから、
尚のこと興味深い内容。

今現在も、2度目の上京を経て再度地方へ移住したばかりで、
こちらでの数少ない知人が「コミュニティ作り」に奔走していたりするので、割と身近にあるテーマ。

そして、そのことに対して、
どうなんだろう???と至って
中立的な立場でいる。

別に悪いことではないと思うけど、
その作戦で果たして求めている何かが作れるのか?得られるのか?と思っている。

1度目の移住では、
「地方創生したい!」
「村おこししたい!」
と意欲溢れて協力隊志願したのではなく、

「東京に憧れて上京したものの、疲れた。
田舎にいたときには、色んなカルチャーを肌で感じられる東京に憧れしかなかったけど、
実際上京して生活してみたら、素敵なものは沢山あってもお金がなければ
見てるだけで手には入らない。
刺激的で楽しそうなイベントは毎週末、いや毎日のように何処かで催されているけれど、それもお金がなければいけないし、お金を稼ぐためには働かないといけなくて結局時間も体力もが足りない…」という現実に気付いて、
ちょっともう東京はいいや、ってなっただけの、すごく自己都合的な理由。

ちょうど、
それまで楽しくてやりがいのあった仕事に意義を見出せなくなってきていた頃だったのもある。

他には、その頃色々なことに覚醒してきて急にオーガニック思考になったのだけど、
東京でオーガニック的観点から満足のいく暮らしをするには結構な資金が必要だと気付いた。
そして、田舎に行けば低予算でオーガニックな暮らしができるのでは?とも思ったり。

つまり、理由は全部自分自身のQOLを上げるため、という部分のみに起因していて、
正直、地方創生しようがしまいが、どちらでも良くて、自分が幸せになることを第一ミッションとしていた。

それでもやはり、暮らす環境は、
ある程度開発されていた方が便利なのも強く実感している。

(私の場合は、近くに蔵書が充実した図書館があるかないかで、QOLが大きく左右される)

今ちょうど、例の疾病騒ぎで、
東京で暮らしている人が地方へ移住するという動きも加速してきているらしい。

それに関しては、これまでの過密過ぎる一点集中がむしろ病的だったから、少しは健全な流れになっているなぁ、と思う。

∞∞∞

丁寧にリサーチして製作された小説だなぁと思える理由の1つに、商店街の描写がある。

今住んでいる生活圏内にも、
「かつては。。。」という高度成長期時代の名残を感じる商店街がある。

小説の中で描かれている商店街よりは、
若者向けの店舗もあるのだけれど、
それでも似たようなものだ。

商店街が活性化しない理由、
いくつか聞いたことがある。

まだ上京する前に地元の商店街を
よくふらふらしていた。

ほとんどはオワコン店舗ばかりなのだけれど、
唯一私が行ってワクワクできるお店があった。

音楽やカルチャーの薫りが濃いビンテージショップがひとつだけ、あった。

そこは、お店のルームフレグランスから流れている音楽や東京帰りの店主など、私にとってキラキラしたもので溢れていた。
店主とも仲良くなり、色んなイベントに連れて行ってもらったり、プライベートでもかなり仲良くして貰っていた。
そのお店に出入りすることが趣味、くらいになっていて、
そのお店は知らない世界への扉とイコールだった。本当にワクワクしてた。

その店主が、
「ここらの商店街どこも家賃馬鹿高いの。
地方とは思えないくらい。
バブルで家賃上がった時から変わってない。
その時から持ち主の頭、ストップしてる。」
と言っていた。

あとは、持ち家で商いをやっているタイプのお店に関しても、
持ち家だから家賃払わなくていいから
企業努力が全く為されていないという話。

それも、実際に聞いた話。

まとめると、

あぐらをかいたら、衰退していく

ってことだよね。

今これ書いてて

現状維持は、衰退と同じ

って言葉も思い出した。

(これは以前働いてたガールズバーのお客さんが言ってた。
中村天風を敬愛してる、その店の客層としては珍しいタイプの人だった。)



これから、時代や働き方や生き方の変化に伴って、地域のあり方もすごく大きく変わっていくのだろうな、と思う。

何が正解、なわけでもないけれど、

いつでも常に自分の頭で自分がベストな状態で楽しく健やかに過ごせる方法や居場所を、
考え続けることだけはやめたくない。

色々考えるヒントになる一冊だった。

これまでの山内マリコ作品とは、
一味違う読後感。

少し開放的で爽やかな印象で終わった。

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