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”自殺”について考える

少し過激なタイトルになりましたが、先日「大阪自殺防止センター」北條さんのセミナーを受けました。

セミナー時間はわずか1.5時間でしたが、知らないコトばかりでとても学びが多く、また考えさせられる内容でした。

今日はその振り返りと、情報の共有になります。
受講レポートのような感覚で読んで頂ければ幸いです。

データについて

まずは”自殺”に関する数字や、アンケート結果によるデータになります。
それぞれの数字をどう捉えるか、どう読み解くかは、それぞれの立場によって変わってくるかもしれません。

ここではただ正確な数字と、それに対して説明されたコト、また私自身が感じたコトを綴っていきます。

年間自殺者数(2021年):20,830人
 (参考:交通事故で亡くなる方は、年間4000人台です。)

この数字は、1998年~3万人台を超えて以降、ずっと横ばいが続いていました。
2010年~毎年減少を続けていましたが、2020年に11年ぶりに増加
2021年は、交通事故で突然命を落としてしまう方の約5倍の数の人が、自ら命を絶っているというコトになります。

・自殺者数男女比=男性2:女性1の割合
 2021年:男性13,815人、女性7,015人

 (参考:自殺願望を抱いている人は、男女比1:1だと言われている。)

自殺願望のある人は同数でも、力が強い分、実際に行動に移した際に男性の方が亡くなってしまうケースが多いようです。

・年齢別自殺者数では、小中高生の自殺者が増えている。
(参考:小中高生の年間自殺者数(年間):2019年339人→2020年479人)

こちらは2021年の統計がまだない為、2020年の数字になりますが…と紹介してくれました。
中でも女子高生の自殺者は、2019年→2020年の1年間で約2倍に増えているそうです。

・小中高生の自殺理由:進路に関する悩み、学業不振、親子関係の不和が多い
(参考:2020年は精神疾患が増えたのも特徴の1つ)

自殺は、1つの重大な問題が原因となって起きるのではなく、同時に3~4つの問題が複雑に絡み合って起こる場合が多い為、はっきりとした原因は特定できないコトの方が多いです。
が、メディア報道で取り上げられるコトが多いせいか、一般的に想像される”いじめ”は、実は自殺の原因としては少ないコトが分かりました。

・自殺電話相談件数(大阪自殺防止センターでの月間統計)
 着信数:約1万件、実際に通話出来た件数:約500件

(参考:約9500件が話中で繋がらない状況)

通話出来たのは、実に5%です。
私はこれまで娘の状態を見てきて、私自身も専門機関への相談を悩んだり、試行錯誤を繰り返して来ました。
この”たった5%”という数字には、驚きと落胆の気持ちがこみ上げました。

相談者が
「実際に電話をかける」
という行動に出るまでにどれほどの葛藤があり、どれほどの勇気がいり、どれほど心の準備をしたコトでしょう。

それなのに、繋がらない

もしたった5%の確率で繋がったとしても、支援者のスキル、支援者との相性等の問題もあります。
このインフラの整備は、とても大きな課題だと改めて感じました。

・「自殺をしたい」と思った時に相談したい人は?
1位:友人等、近しい関係の人
2位:誰にも相談しない
最下位:医者、専門家等

(参考:1位と2位にはかなりの差があり、圧倒的な1位だそうです。)

最下位が専門家というのは、当然の結果のようにも思いましたが、私自身専門家として少しやるせない想いになりました。
と同時に、そんな中せっかく専門家に相談しようと思ってくれた時の受け皿がないという、1つ前のデータには更に力不足を感じてなりません。

周囲サポートの難しさ

データは上に示した通りです。
では実際にここに上がってきた数字を少しでも減らすために、何が出来るのか。

「周りの人(家族や友達)は気づかなかったのか?」

自殺が起こると、そんな言葉をよく耳にします。
ですが、この”周囲が気づく”というコトはものすごく難しいと教えてもらいました。

なぜなら、本人が隠しているから。
これが一番大きな理由ですが、
「自分が自殺したいと思っている」
そんなコトを身近な人に相談できる人は、まずいないと思います。

自分の大切な人を悲しませる、戸惑わせる、困らせる。
これは本人が一番よく分かっています。

でも自殺する程の葛藤を抱えた本人のコトを、身近に接する人も全く見ていない訳ではありません。

「いつもと様子が違う」
これくらいは気づいているコトが多いと言います。
ただその様子の違いが、
「自殺を考えているんじゃないか?」
というコトまでは、到底結び付きません。

おそらく小さなサインを受け取った周りの人は、
「最近疲れてない?」
「何か悩んでるんだったら、話聞くよ」
この程度の声掛けはしているんではないでしょうか。

その声掛けに対し、
「ううん、大丈夫」
「うん、ありがと」
そう言われてそれ以上は聞けなかったり、話してくれるまで待っていたり…

私は娘に
「”死にたい”という気持ちが襲ってくる時がある」
と打ち明けられたコトがあります。

そこまで話をしてくれていたとしても、それを聞いて私に出来たコトと言えば、
「その感情が襲って来た時に、チラッとでもママの顔が浮かんでくれたら嬉しい」
と伝えるのがやっと。

「周囲が気づいてサポートしましょう」
これは、実際にはかなり難しいものです。

思う~行動するまでの間

当事者が
「自殺したい」
と思い始めてから、実際に
「自殺する」
までの間
に何があるのか。

セミナーではこんなコトを教えてもらいました。

希死念慮(「死にたいなぁ」と思う)

自殺念慮(「いっそのこと自殺しようかな」と思う)

自殺願望(「自殺したいなぁ」「自殺できないかなぁ」と考える)

自殺企図(「どうやって死のうか」「いつ死のうか」等、具体的に考える)

自殺未遂(実際に行動を起こすが死ねない。ためらい傷や飛び降りれそうなところまで行ったけど、足がすくんでそのまま帰ってきてしまった等)

自殺既遂(実際に死んでしまうような行動を取る。首を吊ったけど死ねなかった、飛び降りたけど助かった等)

軽い状態から順に↓で示しましたが、これは必ずしも順番に進んでいく訳ではなく、それぞれの状態を行きつ戻りつを繰り返していきます。

そしてこの行きつ戻りつですが、
「若者は特に、『死にたい』と思う~実際に行動を起こすまでの距離が、短い傾向にある」
とも言われていました。

これは大人に比べて経験が少なく、より狭い世界で生きていて、
「自分の世界や考えが全てだ」
という偏ったものの見方をしているコト等が影響していると思われます。

また、人が自殺をするぐらいの感情の高まりは長い時間持続せず、1日のうちに数時間程度。
その数時間とどう向き合うか、またその感情にどう寄り添うかがカギになると仰っていました。

”アンビバレンス”と言いますが、
『死にたい』という気持ちと、『生きたい』という気持ちは、必ず同居しています。

そして『死にたい』と思ってから実際に行動を起こすまでの間には、気持ちの葛藤や状況の変化等、様々な要因があるというコトです。

私は普段、キャリアコンサルタントとして『夢を叶える』『なりたい自分になる』という方向で、思う~行動を起こすまでの気持ちを聴いて支援しています。
同じように、負の感情にも思う~行動を起こすまでの距離がある。

この『思う~行動までの”距離”』についてもっとうまく言語化が出来れば、自殺をする人の気持ちをより多くの人に理解してもらえたり、キャリアコンサルタントとして支援する側のカリキュラムの構築等、私自身のこれからの活動に役立つかもしれません。

その為には、まだまだ知識も経験も必要ですが…

支援者への注意

「自殺念慮のある人を何とか救いたい!」
と、強い想いを持って支援されてる方が多いですが、
「熱い想いだけで支援をするのは危険」
と、北條さんは仰います。

それを表す事例として、こんな内容を紹介してくれました。

<とある事例>
(プライバシー保護の観点から、一部内容を変更しています。)

相談者はリストカットの常習者でした。
相談を受けた相談員は、
「1週間我慢しよう」
と提案します。
そして、1週間後にまた話しましょうね、と。

約束通り1週間リストカットを我慢して、相談員と話をします。
「我慢できたよ!」
「スゴイ!!良かったね!」

そしてまた1週間後。
再びリストカットをせずに過ごせたコトを2人で喜び合い、色んな話をします。

さらに1週間後。。。

そのまた1週間。。。

毎週話をして関係を深めていた2人ですが、ある日相談者は我慢できずにリストカットをしてしまいます。

リストカットをしたコトで、相談者を襲ったのは
「あの人(相談員)を裏切ってしまった」
という罪悪感と自己嫌悪。

・・・
「信頼を失った」
「また私は見放されるんじゃないか」
「そうしたら、また私は1人になってしまう」

・・・

思いつめた相談者は、自殺未遂をしてしまった。

”約束”によって、相談者を追い詰めるコトがある。

私は意識していた訳ではありませんが、そう考えると娘とはあまり約束をしません。
今日明日どうなるかが分からないような日を過ごしてからは、特に。

約束は、それがあるコトで
「その日まで頑張ろう」
「その日を楽しみに過ごそう」

と、前向きになれる効果があるコトも事実です。

ですが、約束を破ってしまったり、守れなかった時の配慮はとても重要だと思いました。

これは何も話が”自殺”や”リストカット”等、命に関わるコトでなくても起こり得るコトです。

例えば親子での
「宿題をしてから遊びに行く」
こんな約束でさえ、それを破って先に遊びに行った子どもには罪悪感が付きまとったりするもの。

”約束”をする場合には、それが本当に必要な約束なのか、またお互いに守れるものかどうかも含めて、配慮する必要があると思います。

最後に。。。

今回のセミナーで、とても印象に残った言葉と、「大阪自殺防止センター」さんのリンクを紹介します。

「死にたい」んじゃない。
「生きられない」んだ。

これは自殺願望のある多くの人が、抱えている想いだそうです。

この言葉が表すように、自殺をする人も
「積極的に”死”を考えている訳ではない」

私は自分の娘と照らし合わせながら、1時間半たっぷりと話を聞きました。

まだ私の中で落とし込めていないものも多く、これから活動していく中で、より深く理解していければと思います。

「大阪自殺防止センター」さんでは、ボランティアの募集、寄付金を募る活動も行っておられます。↓

ところどころに登場した、私と娘の記録はコチラから↓

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


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頂いたサポートは、フリーランスとしての活動資金や自己研鑽、それから時々娘と美味しい物を食べに行ったりしたいです❣ 私が得た情報と経験は、こちらのnoteで記事にして還元していきます。