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肌を緑に塗る少数色覚者

緑色の人の絵を描くというのは多くの少数色覚者が子どもの時にやる行動の一つです。

それは、多くの少数色覚者にとって薄いオレンジである肌色と薄い黄緑色が同じように見えるからです。大人になると理屈で考えて色を塗るようになるので、意図がなければ緑に塗ることはありません。しかし、無意識で色を選んでいる小学生ぐらいまではよく緑に塗ると思います。

子どもによってはその時々で、薄緑で塗ったり、多数色覚の人と同じような肌色を塗ったりしてバラ付きがあるかもしれませんが、それは多分どっちでもいいと思っているからです。私がそうでした。

この、肌色を緑で描いてしまう経験は少数色覚の人にとってはあるあるなのですが、学校などの周りに人がいるときにこれをやると「気持ち悪い絵を描くやつ」として同級生にからかわれることもあるそうです。

からかわれた結果、絵を描くことに苦手意識を持ってしまうこともあるでしょう。人前で色を扱うことに恐怖を覚えるかもしれません。

例に漏れず、私も小学生のころ学校で人の肌を緑で塗ったことがあります。その絵を見られたとき、少し教室がザワッとしたような気がしましたが、私はからかわれることはありませんでした。

それは何故か?
多分ですが、私の描いた緑の人物画を見たある同級生が放ったこの言葉のおかげだと思っています。

「 お ま え 、 ピ ッ コ ロ 描 い て る や ん !」


そうです、彼は私が意図的にドラゴンボールのピッコロさんを描いていると思ったのです。

この同級生の発言によって私は「肌を緑に塗る気持ち悪いやつ」ではなく、「授業中にピッコロを描くイカれたやつ」みたいな扱いになりました。

どっちが良いのかはわかりませんが、嫌な思いにならなかったのは確かです。ピッコロさんは格好良いですから。

当時の私は絵を描くことは好きになりつつあったので、その後もどんどん絵を描き続けました。そのうちに「あれ?肌色ってこの組み合わせじゃない?」と気づくことになります(詳しくは後述)。

あの時教室で、「何その色気持ち悪いー!」とか「肌は緑じゃないでしょ!」とか「ふざけないで!!」みたいなことを言われていたらどうなっていたかわかりません。
図工、美術の時間が苦痛になって、絵を描かなくなっていたかもしれません。そうなるとデザインを仕事にしていなかったかもしれません。

ありがとう、ピッコロさん。

もし身近に人の肌を緑色に描いている子どもがいても「正しくない色だ!」「変だ!」とは言わないであげてほしいです。

どうしても肌の色のことを伝えたいときは、「ピッコロみたいで良いね」と声をかけてみてはいかがでしょうか。ガチャピン、ハルク、シュレックでも良いかもしれません。
いや、やっぱりピッコロっていう絶妙に格好良いポジションのキャラだったからよかったのかもしれません。人を描いてて「シュレックに似てるね」って言われたら嫌かもしれません

不思議に思われるかもしれませんが、多分、多くの少数色覚者はピッコロさんのことをちゃんと「緑色のナメック星人」だと認識しています。ピッコロさんの肌は彩度が高い、かつ濃いめの緑なので少数色覚であってもオレンジとは混同せずに緑と認識できる人が多いと思います。
※この記事のタイトル画像はわざと混同しやすい配色にしています。

それに対して黄色人種や白人の肌色はかなり明度が高く、やや彩度が低いので緑かオレンジか混同しやすいという現象が起きるのだと思います。

黄色人種の肌色までトーンを明るくするとこんな感じ

なので「ピッコロに似ている」と指摘されると「あんな派手な緑なわけないだろ?え、同じような色に見えてるの?」ということにうっすら気づくことができます。

少数色覚の人が色への苦手意識を持たないように、これからもピッコロさんには子供たちを守ってほしいです。


補足

私が、肌色は薄い緑ではなく薄いオレンジだと気づいたきっかけですが、単色で肌を塗るのではなく影をつけ出したときに気づいたと記憶しています。

子どもの頃は色の濃淡で色の呼び名が変わることがわかっておらず、青を薄めると水色になって、オレンジを薄めると肌色になるということをうまく認識していません。

薄い黄緑の肌に影をつけるために濃い緑色を重ねて塗ったときに「あれ?これは肌に見えないぞ?」と感じました。薄い黄緑と薄いオレンジは私にとって混同しやすいエリアなのですが、濃い緑になることでそのエリアから外れて、違う色だと認識しました。

「影を濃い緑で描くとなんかしっくりこない」

「影を茶色っぽい色で塗ったらしっくりくる」

「でも影って同じ色が暗くなるか明るくなるかじゃないの?辻褄合わなくない?」

「薄いオレンジでも肌色は描けるから、そちらで描いた方が辻褄があうし、なんかしっくりくる」

「じゃあ、これから肌色は薄いオレンジにしよ」と思うに至ったのでした。

冒頭に書いたように、大人になるにつれてこのように学習によって色の組み合わせを理解していき、緑色の人を描くことは多分少なくなっていきます。

なので、もし少数色覚のお子様をお持ちのかたがいらっしゃったら、無理に指摘しようと思わずお子様に楽しんで絵を描かせてあげてもらえれば、と思います。

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