見出し画像

CG業界に向けて就活している学生に知っておいてほしい事

今回は将来CG業界(ゲームや映画やアニメ業界)で就職を目指している学生さんに向けた記事です。普段学生と面談をしていてここだけは外さないというポイントに絞ってお話していきます。
就職も込みで面倒を見ている学生達は4年連続業界就職100%を達成しているので的外れな内容では無いと思いますが、攻略記事程度に楽しく見てもらえたら良いなと思っています。

もし業界の方で何か指摘があれば遠慮なくコメント記入していただけると嬉しいです。



① 何のために仕事をしたいのか?

まずは準備編です。
あなたは何で仕事をしたいですか?
これに答えられる必要はありません。
寧ろ9割くらいの学生は答えられません。
なぜこの質問をするのか?
それは仕事について考えてほしいからです。
もう少し言うと自分と社会に向き合ってほしいからです。
その効果については後半で説明を行います。
まずは
自分を知る
そこからすべてがスタートします。

中には
卒業までに
答えが出せないままの学生もいます。
安心してください。
5割くらいの学生は面談を重ねても答えが出ません^^;
でも大人として成長する過程で必ずその答えが見つかると思います。
そのヒントや最初の一歩を見つける為に僕と面談をしています。

何のために仕事をしたいのか?
少し例を出すと

  ・ 自分が好きなゲームや映像に関わりたい
  ・ 将来自分が作ったゲームや映像を世に出したい
  ・ 形を作る事が好き、動かすことが好き(業種が分かる)
  ・ やりたい事はないが自分を振り返って唯一多くの時間を費やした事
  ・ 自分の生き方を変えた出会いがあった
  ・ 自分が得た感動を他の人にも伝えたい、共感を得たい

中には明確に立派に見える目標もありますが
取捨選択の結果もあります。

結論は
どうでも良い事が理解出来たらOKです!
大事なのは今より自分に向き合ってみる。
その一点です。
寿命を考えるとあなたの人生はまだ40年以上続きます。
これから続く長い人生の中で成長しながらゆっくりと答えを出しても良いと思います。

自分に向き合った結果
どこか社会(業界)との接点が見つかれば良いのです!

それが自分で見つかれば良いですが
結構難しいですよね・・・
だから先生と相談して一緒に見つけましょう~!
というのが面談の目的です。
学校に通っている方は是非先生を活用しまくって下さいね。
僕とお話してみたい人はtwitterなどでメッセージくれたら対応できるかもしれません◎

② 採用担当者の目線を知る

自分と会社の接点が見つかったら
もう少しだけ予備知識を持ちましょう!
少し生々しい話かもしれませんので
  「ふぅーん、そうなんだ・・・」
くらいに聞き流しても構わないです。
ただ
頭の片隅にちょっとだけ覚えて置いてくださいね。

新卒採用の価値価値って何だと思いますか?

いくつか答えはあると思いますが

あなたにとっての初めての会社!

これが新卒採用者の価値の一つです。
どういう事か?
あなたが中長期的に会社に貢献してくれる人間になる様に
育てていけるというのがあなたの強みです!

例えば
会社では仕事で1人月という単位を使用するのですが
これは1か月で一人で出来る仕事はいくらくらいか?
という単位です。
モデリングという形を作る仕事で
キャラクター1体を制作するのに一人で1か月かかるとしたら
それは
キャラクター一体で1人月の仕事という事になります。
その単位が大体80万円前後です。(地域や業種によるばらつきはあります)
このお仕事を一人で1か月で完璧にこなせる事をプロには求められるのですが、多くの新卒にはまず不可能でしょう。
仮にこの仕事を完了させるには2か月かかるとしたら
その人は0.5人月分の仕事しかこなせない人となり
半人前となります。
大体多くの新人は1~3年程度で一人前に成長して生きます。

ここで少しお給料の話をしてみます。
あなたには毎月20万円のお給料が支払われる契約です。
とりあえずボーナスなしだとして一年で240万円です。
これにソフトウェアやPCなどの設備などもろもろ入れると年間400万程度はかかるかもしれません。
これに加えて
優秀なベテランスタッフが教育トレーナーとしてついてくれる間は
そのスタッフの成果が落ちてしまいます。
仮に80万円の成果を出せるスタッフの1/2の時間を教育にあてた場合は
月間で40万円の赤字です。
一年間研修やトレーニングに費やす会社は稀ですが
今回はたとえなのでとりあえず1年に設定をすると480万円の赤字です。
と考えると。
あなたを1年間しっかり教育をしている間に会社は1000万円ほどの赤字を覚悟で会社の将来とあなたの成長に投資をしています。
少し金額はぼかしていますが
気づいてほしいのは
採用する側はこれだけのリスクと会社の将来を考えて採用活動を行っているという事です。

そのため面接ではあなたの中身が知りたくてしょうがないのですw
仮に折角1年間頑張って教育したのに
「やっぱりこの会社じゃねーわ」
と辞めてしまった時の被害がとても大きい事を想像出来るでしょうか??
しかも大体はどこに行くか分かりませんし
監視もできません。
そのやり場のない怒りは
あの学校の学生はけしからんという反応になったりするのです。
だから学校もしっかりと相性を見てマッチングしてあげる必要があります。

お互い winwin の状態で長く会社で働いてほしい!
こういう想いで採用をしています。
その為、①での自分を知る自己分析がとても重要になります。
まずは自分がどんな事が好きか?
どういう生活をしたいのか?
最低限そこはクリアしてほしいと思っています。

これは技術や作品よりもとても重要です!

その上で
やっぱり会社の事を知ってほしいです。
自分とこの会社相性がいいかも!!!
こういう出会いが面接なんです。
お互い相性が良くないなと思ったら残念ながらお別れするのは当然ですね?

なので不採用になったからと言って落ち込む必要はありません。

世の中には沢山の会社があります。
学校・友達・ネット・先生・SNS
今は沢山の情報があるので
自分と相性の良い会社を探して沢山応募してみるのが良いです。

大事なのは採用という企業側のリスクと
勤務という自分の時間的なリスクがかみ合わない場合
不幸ですよという事です。

ぼくの仕事はそんなマッチングをしてあげられる
という長所を生かして
学生や転職を支援しています。

余談になりますが
中途の場合は即戦力(要は人月1人分)が求められるので
会社の相性よりも技術を重視しがちです。
新卒の強みは企業愛として会社の事を良く思って働いてもらいやすいという点なので、実力の高い中途よりもまだ未熟な新卒あがりの社員の方を大事にしている会社が多いのはそういう部分が関係してくると思っています。

③作品の評価のされ方を知る

事前準備はここでおしまいです。
自己分析と企業研究が終わったら作品を作ってアピールしましょう!
同時に進めても問題ありません。

多くの学生がポートフォリオと呼ばれる作品の紹介冊子を現物もしくはデジタルデータで作成します。合わせてデモリールという動画ファイルも作成するでしょう。

今の世の中結構便利になっていて
探せば幾らでもポートフォリオの情報が出てきますし
知り合いが書いている専門書も発行されています。

ここではそういう類のものではなく
もう少し採用視点で応募者の作品から何を読み取るのかという話をしていきます。

採用には大きく分けて2つあります

① 通常採用 or 即戦力
② ポテンシャル採用

①はよくある採用の他、技術的に優秀な場合の採用です。
②は未経験だけど会社との相性も良く将来の成長が期待できる場合に行います。大学生が多いと思いますが、ポテンシャル採用となった場合の簡単な判断基準が学歴です。有名どころの大学に入ったとなれば、それ相応の努力や勉強の仕方を身に着けているので、基礎力がありそういった部分を教えずとも成長が期待できると判断するわけです。

CGの業界でも同じ基準を持っていると思います。
僕が学生に良く伝える方法としてはインプットとアウトプットです。
インプットは観察力や情報を読み取る力の事。
アウトプットは道具を使ってそれを再現する技術の事です。

例えば優秀なプロは
インプット 100% × アウトプット 100% = 100点

となります。
とても細かなところまで観察する力があり
技術力も高いのでそれを丁寧に再現する力もあるという事です。
この掛け算でもって成果物の出来が良いか悪いか変わります。
学生は当然100点にすることが難しいので安心してください。

例えば
とても優秀な美大生がCG業界に応募したとします。
デッサンはかなり上手でよく観察出来ている事が伝わりましたが、デジタル技術は苦手でCGの作品はぱっとしません。
これを先ほどの計算で表すと次の様になります。

インプット 90% × アウトプット 30% = 27点

あくまでCG作品に限った評価ですがあまり良い点数になっていません。
これを専門学校系の学生にあてはめてみます。
専門の授業が多く必要な技術はかなり学べています。
次の様なイメージになります。

インプット 40% × アウトプット 90% = 36点

これは比較したとき
一見すると専門学生の方が有利に見えます。
多くの学生(もしかすると採用担当者も)
が見落としがちな点は
これをそのままの計算で考えてしまう事です。

優秀な採用担当者は間違いなく美大生を採用するのですが
なぜを分解して説明します。

端的に説明をすると
採用後の教育コストが安い!
この一点です。
考えてみてください・・・
幾ら学生が数年で身に着けた技術がすごいからといっても
プロは数十年仕事で鍛えられています。
もっというと技術の変化が激しい業界ですから
技術自体の価値は少し低いのです。
観察力を身に着けるのには数年が必要ですが
技術を身に着けるのは数週間や数ヶ月の話です。
これを理解しているとどちらが有利かわかると思います。
もう少し言うと
よく
「デッサンは大事!!」
といわれる理由がわかると思います。
デッサンが大事を翻訳して説明すると
観察力という基本的な能力が必要ですから時間をかけて身に着けておいてくださいね!という事です。
つまりデッサンが下手でもモデリング作品から圧倒的な観察力が伝われば良いという事です。アニメーションや他の分野でも同じことが言えるのでこの辺を上手にポートフォリオで表現する必要があります。
余談ですが
即戦力採用をする中小が多いのはインプット最低限に見合っている場合です。すぐにでも人員が欲しい場合も多くあるので、理想論に縛られず結構色々な会社が色々な基準で採用しているという点は忘れないで下さい。


もう一つ大事なポイントがあります。

授業作品以外の作品を入れた方が良いのか?

という部分です。
これはまったくもって的外れで出来れば言葉に気を付けてもっとかみ砕いて説明をしてほしいなと思っている部分です。

結論から書くと授業作品だけでも良い!

と思います。
ただし一つだけ条件があります。
それはしっかりと授業課題がカリキュラムデザインされている場合に限る!
という事です。
これは通っている学校の先生に相談しましょう。

少なくとも僕が教えているクラスでは
授業以外の作品をいれてくれと切望していた会社に授業課題のみで受かっていますので的外れという結論が出ています・・・

ではこの言葉をかみ砕くとどういう意味なのか
少し説明をします。
授業課題のイメージ ➡ 基本技術を学ぶ無個性な作品
このイメージが強いという事を理解するところがスタートです。
なので学校側でカリキュラムをデザインする際に
応用部分や個性を出せる部分をデザインしてあればOK
という事になります。
問題は授業課題ではなく
採用判断時に必要な情報が足りない事です。

もう少し採用側の判断をお話しすると
へたくそな応用作品ばかりだと何も伝わらないので、基礎力が分かるものを入れてほしいという事です。

アニメーション作品などでやりがちなのは
カメラが気持ち悪く動き回って
動きも良くわからない見栄えを重視しているけど
結局は何も伝わらない作品です。
そんな作品ばかりだと基礎力があるかも判断できません。
そういう時に拒まず客観的に判断して
ウォークサイクルなどの基本的な課題があると
ストッパーとして基礎力の確認が出来るのです。

理想はカッコいい応用作品の中で
しっかりと基礎が出来ている事が伝わる事
が重要ですが
そうもいかないので
一定の割合で基礎作品(模写的な要素)を入れると好印象です。

へたくそでも応用作品が何もない場合は
あなたの好きな部分やこだわりの部分が伝わり辛いので

バランスが大事という事も付け加えて覚えて置くと良いでしょう。

こちらの記事で紹介しているアニメータードラフト会議というコンペで教え子の作品が全体公開されていますが基礎力と応用力が評価されていますので参考に見てみると良いかもしれません。



まとめ

勉強や普段の生活をしながらの就活はとても大変ですし自己管理やメンタル管理部分でも崩れがちです。
今回はその中でよくあるつまずきをまとめてみました。

自己分析と業界研究の重要性
採用する側が考えている事
作品の評価のされ方

今年はコロナウイルスの影響もあり
就職活動が例年より少し大変かもしれません。
そんな中でもやっぱり業界を目指してきてほしいですし
良いマッチングを行って
幸せな業界生活を送ってほしいと思っています。
すこしでも参考になれば良いなと思って記事を書いてみました。
近い将来どこかであなたと一緒にお仕事をする機会を楽しみにしています!

あなたのお役に立てていたらスキやシェアお願いします( ᵕᴗᵕ )