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稽留流産手術② 手術〜麻酔からの覚醒、夕食

2023年10月2日。前回のつづきです。

予定していた手術時刻を3分ほど過ぎたあたりで、担当看護師さんが来室。
処置室へ案内される。
痛みはだいぶ落ち着き、点滴を押しながら歩いて向かった。

到着したお部屋のドアには「分娩室」と書かれていた。
ああ、ここ、普段はお産するところなんだ。

下着を外して手術台に乗るよう促される。
普段内診を受けている台のような、足を固定する場所がなかったので、何やら色々な道具を用いて3名の看護師さんたちが私の足を固定していく。
血圧計とパルスオキシメーターがつけられる。
男性医師が4人?いただろうか。多いな。
さっきラミセル入れてくれた先生はたぶんいなかった。

麻酔科医は女性の先生。
途中で目が覚めますか…?と恐る恐る聞いたところ、そういうことにならない量の麻酔を使うから安心してね、と優しく答えてくれた。

普通に意識がある中で、下着をつけていない下半身を念入りに消毒されていく。ギャラリーが多くて、恥ずかしいよりというより、ちょっと異様で、笑いそうになってしまう。他人事みたいだな。
酸素マスクがつけられる。なんだか甘い匂いがしてきた。
点滴から、麻酔が入れられたようだ。
そのあとはもう手術の記憶はない。

ディズニーランドの、スターツアーズに乗っている夢をみた。
シーンは細切れでイマイチ覚えていないけど、アトラクションの中で、看護師さんや医師の格好をした外国人?が変わる変わる私のもとに現れた。
ああでもないこうでもない、と言いながら、なにか処置をしているようだった。
今思えば手術中のシーンだったんだろうか?
それにしても不思議な時間だった。

ぼんやり意識が戻ってきた。
最初に首の辺りの感覚がわかった。そのあと上半身。ゆっくりゆっくり足先まで感覚が戻っていく。
お腹、痛いな。
左をちらっと見ると、担当看護師さんがPCに向かって入力をしていた。
「おわったんですか」と私が聞くと、「はい、少し前に終わりましたよ」と返してくれた。

処置室に入ってから、処置が終わるまでは30分ほどだったらしい。

スターツアーズの夢を見ていたこと。
かつて、私も大きな病院で働いていたが、心の不調のために退職してしまったこと。
なかなか転職が決まらない中で分かって不安もあったけど、この妊娠が本当に嬉しかったこと。
だからすごく悲しく、つらかったこと。

半分寝ぼけてたのもあるが、聞かれてもいないことをまぁべらべらと喋ってしまった。
看護師さんはただ優しく聞いてくれていた。
看護師さんも自分の話を少ししてくれた。
お腹は痛かったし、なんとなく吐き気もしていたけど、穏やかな時間だった。

術後は約2時間ベッド上安静と聞いていたが、まさかその時間を手術台の上で過ごすとは思っていなかった。
まぁたしかに身体は重だるく、痛みも強く、とても動けそうになかったのだが。
担当看護師さんは数回離席し、何度か血圧や体温を測定して、手術終了から2時間経ったあと、点滴を抜いてくれた。

病室から着替えを持ってきてくれたので、手術着から着替えた。
手術着のお尻のあたりに大きな赤茶色のシミが付いていて、やばい汚した…と焦って謝ったが、それ消毒薬の色なので大丈夫ですよ!と。

歩けそうか聞かれたが、お腹の痛みに加え吐き気も増していっており、とても無理そうだったので再び車椅子を用意してもらった。
途中トイレに寄ったが、立ちくらみがひどかった。
便器中の、生理のときのような血だまりを見て、ああ本当に終わってしまったのだな、と思った。

15時過ぎ、病室に戻った。
しばらくは痛み・吐き気との戦いだった。
なるべく早く痛み止めをください、とお願いしていて、16:00ごろにボルタレンをもらえた。すぐに飲んだが、正直ほぼ効かなかったと思う。
吐き気に関しては、もともと食べづわり気味だったこともあり、空腹感がさらに吐き気を助長していたように思った。それを看護師さんに伝えると、お夕食を食べられたら少し元気になるかもしれませんね、と優しく言ってくれた。
夫や家族に手術が終わったことを連絡し、20分ほど眠った。何度か看護師さんが来てくれて、やさしく声をかけてくれた。また20分ほど眠ったようだった。

18:00、夕食が配膳された。
白身魚のフライと、水菜のサラダ。お味噌汁と、山盛りの白米。
デザートに果物もついていた。
約1日ぶりの食事はとても美味しく、けっこう多かったが完食した。
妊娠が分かってから今まで、白いご飯は匂いもだめで、まったく食べていなかったのだけど、なんだかすごく美味しかった。
嬉しくて、ちょっと切なかった。

食後には、子宮収縮剤の「メチルエルゴメトリン」という薬が配られ、飲んだ。
これから7日間、朝昼晩飲むらしい。

次にボルタレンを飲むことができるのは22時ごろと聞いていて、それまでの痛みに不安があったのでカロナールを出してもらって19:40ごろ飲んだ。

このあたりで吐き気はほとんど消滅。
お腹の痛みのほうは、ボルタレンがようやく効いてきたのかカロナールが効いたのか、ほんの少し軽くなってきた。
まさに生理痛のような鈍痛。子宮をギュッとつかまれるような、あの痛みをより強くした感じ。

7月末を最後にしばらく姿を見せてなかった生理の感覚を、しっかりと思い出させてくれた。
痛いし面倒だしぜんぜん良いことないけど、君が毎月きてくれていたおかげで、私は我が子を授かることができたのだった。
生まれてきて今まで、今日ほど子宮の存在を意識したことはなかった。
しみじみと、自分の身体の機能に感謝する。
また、ちゃんと来てくれるの待ってるよ。

下着を替えて、持参していた汗拭きシートで体を拭く。
歯磨きと洗顔をした。

何度かトイレに行った。
ナプキンにはそれほど血はつかないのだけど、やはり便器には血だまりができる。トイレットペーパーで拭くと、さらっとした、少しピンクがかった鮮血。
一回だけ、割と大きな塊の出血があった。

今は21:14、腹痛の波に耐えながら、ボルタレンを飲める時間を待っている。
明日は6:00に検温だそうだ。病院の朝は早い。
朝食後に先生の診察があり、次回の外来予約を取って、午前中には退院する予定だ。

朝ごはんは何かな。
なるべく楽しいこと想像しながら、眠りにつくことにする。

次回に続きます。

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