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43:「メンタル不調による休職者が増えているのでレジリエンス研修をやってほしいんです」の間違い

ゼロにする休職は「メンタル不調による休職者」のこと

本題の前にすこし前の記事との関連について書きます。
前回このような記事を書きました。
42:組織に「休職する人」が出るのをゼロにしませんか?

この記事では前回すこし言葉足らずだった内容の補足と、ではどうするとよいか?という実際に取り組むときのポイントについて書いていきます。

一言で休職といっても休職にも多くの種類があります。
主な休職理由としては
・私傷病休職
→業務や通勤以外の原因による病気やケガを理由とする休職のこと

・私傷病以外の休職
→自己都合休職・留学休職・公職就任休職・自己欠勤休職・起訴休職・組合専業休職

ちなみに業務や通勤による原因による病気やケガは「労災」になります。
さて、休職といってもこのようにいくつか種類がありますが、
私が主張しているのは
「病気やケガを理由とする休職」のことです。あまり細かい表現をするとお伝えしたいことがブレてしまうので割愛しますが、「病気やケガを理由とする休職」は労災も私傷病休職も含めるとします。
また病気やケガとありますが、私はカウンセラーですので、「メンタル不調」に絞らせていただきます。

「最近、メンタル不調で休職する人が増えているので、逆境に強くなるレジリエンス研修をやってほしいんです」と言われたときは・・・

私のところにはこのような依頼を頂戴することが多くあります。
このようなときに私は
「ぜひ詳しく事情を聞かせてください。実はメンタル不調が増えているときにレジリエンス研修を実施することは却って状況を悪化させることがあるんです・・・」と伝えます。
そこで
「そうなんですね。それはどういうことですか?」と言ってくださって、詳しく話をさせていただける場合と、あまり興味をもってくださらず「レジリエンス研修を実施できるかどうか」だけを知りたい方がいます。
まあ、研修を売ることだけを考えたら「レジリエンス研修ですね!こういうのがあります!」が良いかもしれませんが、やはり「こころの専門家でありたい」と思っているので、対象者に悪影響が出る可能性のあるものを実行するわけにはいかないのです。
そういったわけで、私はレジリエンス研修の依頼を受けたときは上記のようなやり取りをできるだけ丁寧に行うようにしています。


基礎情報として知っておくと良い「3つの予防と4つのケア」

さて、それでは「メンタル不調による休職者が増えたとき」にはどこから考えると良いのでしょうか。
まずは基礎情報としてメンタルヘルスには「3つの予防」と「4つのケア」を押さえておきます。
「3つの予防」と「4つのケア」とはメンタルヘルス対策の2つの柱です。
目的による分類として「3つの予防」があり、
誰が実施するかという実施主体者による分類が「4つのケア」です。

「3つの予防」とは、
一次予防
・現在健康な人がそのまま健康が維持、増進ができるようにメンタル不調にならないための取り組みのことです。

二次予防
・精神疾患などになるかもしれないハイリスク者や、発症しているのではないかと思われる人を早期に発見し、早期発見による重症化防止を行う取り組みのことです。

三次予防
・精神疾患などにより休職など状況に陥った人の職場復帰を支援し、再発防止、機能低下防止を行う取り組みのことです。

「4つのケア」とは
①セルフケア
・労働者自ら行うケアのことです。
労働者が自分でストレスの対処法についての知識や技術を習得したり、自分が不調になりかけていることに気付けるようになることを指します。
レジリエンス研修はこのセルフケアのうちの一つの方法です。

②ラインケア
・部下を持つ管理監督者が行うケアのことです。
管理監督者が働く環境調整を行ったり、部下の不調を素早く把握し、対処できるようになることを指します。
※企業によっては管理職の方にレジリエンス研修を受講してもらい、自分のレジリエンスを高めることと、部下のレジリエンスを高めるための方法を学ぶ、ということをしています。

③事業場内の産業保健スタッフによるケア
・自社内にいる産業医や保健師、カウンセラーなどによるケアのことです。
こういった産業保健スタッフが人事総務部などと連携しながらセルフケアやラインケアの支援や社外の専門家との連携などを行います。
また労働者の個別の相談を受け、助言や保健指導を行います。

④事業場外資源によるケア
・社外の専門家によるケアのことです。
具体的には病院や従業員支援プログラム(EAP)などを指します。
診断やカウンセリング、職場復帰時の支援などを行います。
社内では相談しづらい、といった方にとっては外部に相談先があることはとても有効だと思います。

「3つの予防」と「4つのケア」を組み合わせて現状を把握すること

ここまで述べてきた「3つの予防」と「4つのケア」を使って現状把握を行います。
具体的には「3つの予防」それぞれに「4つのケア」がどのように機能しているかを整理していくことから始めることをお薦めします。

例えば
・1次予防とセルフケアの組み合わせとして・・・
①セルフケアとして労働者個人個人が、自分の働き方を自律的に扱うことができているかどうか。また各種ストレスに適応できるようになっているか、ということです。
もしストレスに脆弱な状態があればメンタルヘルス研修などによって、自分の働き方や休み方を訓練する必要があります。
また健全な状態が保たれているのであれば、より強いストレス(逆境)を乗り越えるレジリエンス研修などが有効です。

このようにレジリエンスは「3つの予防」のうちの一次予防、そして「4つのケア」のうちのセルフケアにあたる、ということになります。

このようにして
・一次予防とラインケアの組み合わせ
・・・
とすべての組み合わせを検証していきます。

こういった検証を経たうえで「一次予防とセルフケアの組み合わせ」の取り組みの中で強い逆境を乗り越える力を高めることが有効である、という場合に「レジリエンス研修」を実施するという判断が大事なのです。

一次予防に対して、「4つのケア」のうち、セルフケア以外がそろっていないから、セルフケアを高めたい、は危ないです

わかりづらい表現で申し訳ありません。
これは一次予防に対して、ラインケアとして管理職のマネジメントができていない、事業内も事業外のケアもそろえることができないから、その3つのケアがなくても大丈夫なようにセルフケアの強化としてレジリエンス研修を行ってくれ、ということを指します。

具体的な内容で書いてみると上記の表現のヤバさがわかるかと思います。
「管理職のハラスメントをなくすことが難しいから、ハラスメントを受けても大丈夫な社員になってほしいからレジリエンス研修を行ってもらえないか?」

いかがでしょうか。
ヤバさが伝わりますでしょうか。

「社員側に我慢させればいいのだ」と思う方は居るのですが、そんなに多くないと思います。
実際にはラインケアも事業内も事業外もどうにかしたいと思っているけれど、すぐにはどうしても手が出せないから、手が出せる場所としてセルフケアを強化したい、もしくは今回書いているメンタルヘルス対策の基本を理解しておらず、「労働者のメンタル不調が多い」→「レジリエンス研修で労働者に強くなってもらおう」という方が大半ではないかと思います。

しかしながら結果としては「4つのケア」のうち3つのケアをおろそかにし、セルフケアの強化として「レジリエンス研修」を行うということは同じです。
このようなことをしてしまうと、レジリエンス研修を受講しても、結局ストレス量が変わらなければ、メンタル不調者は出るでしょうし、研修を受講した受講生に「結局会社は、我慢しろって言いたいんだよな・・・」と受け取られてしまうことが起こりえます。

まとめ

今回の記事では前回「休職する人をゼロにしたい」と書いた記事の補足と、具体的にメンタル不調による休職者をゼロにしようとしたときにどこから手を付けていけばよいかについて書きました。
次回以降に「3つの予防と4つのケアの組み合わせ」についてより詳しく書きたいと思います。

この記事を読んで自社の状況を検証したいと思った方がいましたらお声がけください。一緒にどこから手を付ければよいか検討していきます。
チェリッシュグロウ株式会社では研修及びカウンセリングサービスを提供していいます。ご興味がある方はこちらにお問い合わせください。

お問い合わせ - チェリッシュグロウ株式会社 (cherishgrow.jp)

またUdemyにて動画を販売しています。
今回の記事に出てきたレジリエンスについての動画もありますので、
ご興味がありましたらご覧いただけますとうれしいです。

逆境に強くなる!レジリエンスを高めるための3つのステップ | Udemy



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