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お金で買えないものはあるか?読書感想:『億男』

『億男』を読んだ感想。

一男という主人公を通じて、大金を手にした人たちの生き方、お金の扱い方を疑似体験できる小説。出てくる人物たちは、昔は貧乏、よくてもサラリーマンのような普通の暮らしをしていた人たち。だから、代々資産家の家に生まれた純血の金持ちというより、成金が急にお金を手にするとどうなっちゃうかを描いてくれている。

ただこの本の根幹は、成金の末路を知ることではなく、お金の真理と扱い方を教えてくれることにあると思う。登場人物から語られるストーリーから、お金の哲学と教訓が見えてくる。ただ「へーそんなんだ!明日からさっそく実践しよ♡」と思えるような具体的アドバイスではないので、これからの人生お金にまつわる色々を経験した後、そういうことだったのかぁと後追いでじわっと納得できるタイプの話だ。

本書での中の主要なテーマである(と、勝手に認識している)「お金じゃ買えないものがあるか、ないか」議論について、個人的には、当たり前に、買えないものもある派だ。正確にはお金があるだけじゃ望みを手に入れられないことがある。ストーリーの中で、「お金は入るのと使うのと、セット」という話があるが、確かに手元に金があるだけでは不十分で、使い方を知っていないとだめだと思う。

 例えば、イケメンハイスペと結婚したいのに、アプローチする人全員に振られ、それは平凡な容姿のせいだと思っているとしよう。お金があれば、高額な費用をかけて美容整形ができる。絶世の美女に生まれ変わってモテまくって、理想の人と結婚できる!と考えるかもしれない。でも、どこをどう変えれば美しくなれるか、腕が良いドクターはどこにいるのか、健康リスクはどれくらいなのか、調べるのにものすごい労力がかかるはず。それはお金で解決できず、頭と時間と体力を使うしか無い。

 というかそもそも、容姿ではなく中身が問題かも。外見は平凡だけどひっきりなしに男が寄ってくる人は一定数いる。それは身のこなしや話の内容に、男性を心地良くさせる何かがあるから。だから本当の要因はコミュニケーション能力や態度にあるかもしれなくて、マナー講座とか話術に投資したほうが良い。それに気づかず美容にお金を使っちゃったら遠回りだ。幸せになりたいなら、幸せを妨げている本当の原因に辿り着いて、適切な解決方法を選ぶ能力がなくちゃいけない。お金はあくまで手段で、それを上手く使えないといけない。

 あるいは、そもそも結婚が幸せじゃないのかもしれない。結婚したいといわれるぐらい熱烈に愛されたいだけで、結婚生活には実は興味ないのかも。そしたら、着地を結婚ではなく、頻繁にイケメンとデートできる状態であれば良く、ずっとマッチングアプリに居れば良いのだ。人って、特に日本人って、他人から押し付けられた「こうあるべき」にフィットするように教育され続けるから、自分の幸せに対する感度が鈍っている気がする。何が幸せなのかわかっていないから、方向性を間違えちゃう。今までの自分もそうだったな。
 幸せになるには、まず幸せな状態の解像度を上げなきゃいけない。他人の基準じゃなくて、自分の心で素直に心地よいと思えることを探さないといけない。やってみないと幸せな状態になれるかわからないことは、やってみたい順に実践してみるしかない。そういうトレーニングが誰にも必要だ。

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