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地域探究学習のポイントは人生の〇〇をつくること!| 十日町市松代高校の取り組み【前編】

新潟県版地域おこし協力隊・ニイガタコラボレーターズとして2023 年9 月から新潟県十日町市に移住した松井千枝です。9月中は十日町市や津南町の学校訪問や、総合的な探究学習の時間に参加させて頂き、2か月目の10月に突入しました。

今回は、松代高校2年生の地域探究活動と「自分の土台としての土地」という考え方と、デンマークの「人」と関わるプロが持つホリスティックな(総体的な)“Menneskesyn” (メネスカション)=「人間観」という概念が繋がったので紹介します。


デンマークのノーフュンスホイスコーレにて

大阪出身。教育大学卒業後、大阪で高校英語教師に。海外の社会と教育を学ぶため、スペインへ渡航。日本語教育能力検定(注釈)を取得し、スペインの私立小学校に勤務。その後、デンマークに渡り、ノーフュンスホイスコーレで日本文化教師を務める。帰国後、新潟県の地域おこし協力隊・ニイガタコラボレーターズに着任し、2023年9月、十日町市に移住。

1. 松代高校2年生の地域探究活動

松代で採れたホーリーバジルの塩漬け

新潟県立松代高等学校の2年生が9月29日、地域探究の一環として松代高校で地域講師の方と前回の活動を踏まえて、質疑応答や地域講師のお話を伺いました。

グループに分かれて、十日町織物、松苧太鼓、松代の郷土料理、ホーリーバジル茶の4つの探究テーマでプロジェクトを進めています。

前回8月の活動では、インタビューと体験活動を行いました。
十日町織物のチームは十日町織物を着たり十日町織物の歴史を探究をしたりしました。松苧太鼓のチームは実際に松苧太鼓を演奏し、犬伏集落の伝統芸能をどうやって守っていくのかを課題に設定しました。

松苧太鼓について語る講師の小島務さん

松代の郷土料理チームは「いちょぱ汁」などの郷土料理を実際に食し、食文化の継承に関して学びました。ホーリーバジル茶のチームは、松之山の新たな農産業であるホーリーバジルの花摘み体験をしました。

>自分の土台としての土地

今回は前回の地域探究体験を踏まえて、講師の方の話を聞いたり質問をしたりするという会でした。松代高校の2年生は、伝統を守るための苦労や、講師の方の想いなどに関して質問し、熱心に探究をしていました。

そこで十日町の着物産業に関して造詣が深い地域講師の富澤恵子さんが、「教科書ばかりの勉強をしていると、せっかくその土地で育っているのにその土地のことがわからない。その土地のことを知らないと、何かが抜け落ちてしまう。どこにでも行ける時代だからこそ、地域を知って旅立ってほしい。教科書の知識だけではなく、自分の土台を作るための知識を身に着けてほしい。」とおっしゃっていました。

十日町織物について語る講師の木村喜朗さん(左)と富澤恵子さん(右)

学校の中にいるだけでは交流することのない地域の方と学び、自分が生きている土地のことを知る。学校も地域もお互いに特色を活かして学びあう。

地域探究学習ではこういったことが可能になります。当たり前のことですが、なかなか重要視されていません。

今回の授業見学では、自分の土台として育った環境や生きている環境を意識することと、地域と学校が学びあうことの大切さに気づかされました。

2. 松代高校がこれから目指す探究学習とは

松代高校からの風景

松代高校は、地域探究活動を通して持続可能な地域社会の担い手として貢献できる人材を育成することに力を入れています。

また、地域の中に入って体験活動や探究活動を行う機会を増やし、様々な場面を通して他者と協働しながら主体的に問題を発見し、問題解決をする力の育成も目標にしています。

3年間の探究プログラムは自分、地域、仲間を知り、地域課題に取り組み、最終的には自分の力で社会に貢献して進路を実現できるように計画されています。

そのために、地域探究活動を行っており、来年度からは地域のキーマンとなる方々とコンソーシアムを形成して地域探究活動を深めていく予定です。

私もコンソーシアムのメンバーの方々と協力して、地域探究活動の支援やコーディネートを行います。

みなさんも高校生の活動を受け入れたり、地域の探究課題を見つけて、地域探究プロジェクトを盛り上げませんか。高校生の人生の「土台としての土地」作りに貢献できる貴重なプロジェクトです。

3.「地域」は「人」の一部でもある

十日町市松代地域の竹所にあるイエローハウス

松代高校の授業見学の後に、デンマークで学んだ「人」を相手にするプロが持つホリスティックな(総体的な)“Menneskesyn” (メネスカション)=「人間観」という言葉を思い出しました。

“Menneskesyn” (メネスカション)は「人間観」で、人と会うときに誰もが持っているものです。私たちは誰かに会うとき、どこかの面だけを見て相手を判断しているかもしれません。

デンマークでは、「人」を相手にする人(教育、医療、福祉関係など)には、ホリスティックな“Menneskesyn”(メネスカション)=「総体的な人間観」が求められます。

この「ホリスティックなMenneskesyn(メネスカション)」=「総体的な人間観」を理論化すると、肉体面、精神面、文化面、社会面の4つの面から人を捉えることになります。

その文化面には育った土地も含まれています。「人」を理解するときは、生まれ育った地域や生きている環境も考慮しないといけません。

この“Menneskesyn” (メネスカション)=「人間観」は、地域と学校がお互いの魅力を活かして探究教育を進める意味にも繋がっています。

後編では、デンマークの「人」に関わるプロが持つ、ホリスティックな(総体的な)“Menneskesyn” (メネスカション)=「人間観」について詳しく紹介します。

後編に続く


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