君と膣 作:マンコスキー について語る(ネタバレ有)
いやぁ今年の芥川賞を取った問題作「君と膣」読みました?
私は発売後書店に走って昨日読み終わりました。
本当に序章からラストまで転転転転と、常に驚きの連続でしたねえ。
そんな君と膣の考察を私なりにまとめてみましたのでネタバレありで語ってみたいと思います。
まだ読んでない方は是非書店に足を運んでみてください。
「私は君の膣腔を覗いていた」
冒頭の主人公のセリフです。その哲学的な読み出しはこれから何が始まるんだと読者の想像力を掻き立てます。私はこの冒頭で、古来より続く大森林の中でも、ひときわ大きな木の窪みから樹液が流れ出していている。そんな映像を頭の中に描きながら読み進めました。
冒頭から中盤まで膣を眺める主人公が、膣をどの角度で眺めるか、それともえいやとひと舐めしてしまったらいいのか。その心の葛藤を丁寧に描きながら話が進んでいきます。そして中盤、この一言が主人公の口から飛び出します。
「膣がひくひくとしている。」
主人公は、生まれてから今日という日まで膣をマジマジと見たことがありませんでした。赤ん坊の時のうっすらとした記憶で、この世に初めて誕生した瞬間うっすらと目に差し込んできた光を覚えていたそうですが、その光の形こそが母親の膣であったと手記に残していたそうです。
そこへ舞い込んできた「君」と「膣」、主人公は「君」をみつけその「膣」の魅力にだんだんと取りつかれていきます。
恍惚とした表情で「膣」を観察した主人公の口から零れ落ちた一言が、生物学的な見地から捉えた「膣がひくひくとする」様子そのものだったんだと私は考えています。
みなさんも本当に嬉しいとき、悲しいときなど感情が高ぶった後、大脳の新皮質が理性という稲妻を我々に差し込んで心がぐちゃぐちゃになり、見たままを口にすることしかできない瞬間があると思います。まさにその瞬間だったというわけです。
マンコスキーは人々の感情が高ぶった瞬間を如実に書き表すのがたくさんの人に評価されている作家のひとりですが、まさにマンコスキーの真骨頂とも呼べるべき技を見せつけられたことでしょう。
そして中盤からラストまで一気にストーリーは展開していきます。この流れでは数々の名言が登場し、ここでは書き表せないほどの展開が待ち受けていますが、その中でも一つ選ぶとするなら私はこのセリフが心に残っています。
「ねぇ。あなた。いつになったら膣にペニスを入れてくれるの?」
これはラストをまじかにして「君」から主人公に向けて発せられた一言です。序盤からラストにかけて、ほとんど主人公のセリフと心の葛藤、そして「膣」の声にならい声によってストーリが構成されていますが、最後の最後で「君」という存在が意思を持って舞台に登場するのです。
これには私も読んでいて大変驚かされました。そして今まで、ストーリの中で醸成されていた、「膣」と主人公の関係性が「君」という竜巻によってぐるぐると渦を巻いて一気に加速するのです。
また、全編あわせて3000ページ以上にもなる長編大作であるというのにも関わらず、主人公は「膣」を前にしてペニスを最後の二ページになるまで突っ込むことをしなかったのです。
あまりに繊細なマンコスキーの筆によって私はとっくのとうに主人公が「膣」にペニスをいれているものだと錯覚していましたが、「まだ入れてなかったのかぁ・・・」と感嘆の声が吐息とともに漏れてしまいました。
その後の展開は、主人公と君と膣の三つ巴の関係がまざりあい、続編を感じさせる終わり方へと収束していきます。本当に最後の最後まで裏切りの連続でマンコスキーの新進気鋭かつ繊細な文章が我々の心をくすぐるとてつもない大作だったと私は評価しています。続編が出たら是非またすぐに読みたいものです。
それでは今日はここまでで、皆さんも豊かな読書ライフをお楽しみください!
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