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12歳くらいのときに、荒井くんという人に会った。 夢のなかで。 「荒井っていうんだ」 と名乗…
窓辺に大きなシマトネリコの木がある。 夏はたくさんの葉をつけて、ガラス窓いっぱいをおおう…
夜よく眠れなかった時期があった。 0時を過ぎて、2時を過ぎて、4時を過ぎる。自分の頭のな…
雨の日が好きだな、と思う。 年を追うごとに好きになっている。そのしずけさやおだやかさ、か…
梅の花が咲きこぼれて、沈丁花のつぼみがふくらんでゆく。じきに咲く。 窓の外、降る雨を眺め…
目をさます時間が、すこしずつゆっくりになっている。秋が深まってゆくな、と思う。 たなびく…
冬になって、空が白い。 いちめんまっしろの、雪のふりそうな空を見ていると、いつも思い出すのが父を見舞った日のこと。 父がすこし大きな手術をしたあと、お見舞いに行った。 行っても大丈夫、と母に聞くと、大丈夫だよ、おいで、と言われたので、電車に乗って向かった。ふるさとの辺鄙な駅に降りたったとき、息がしろくなって、底冷えするほど寒かった。 父は弱っていた。 手術自体はうまくいって術後の経過もよかったけれど、気持ちが弱っていた。ゆっくり娘と会話する余裕などなくて、点滴その他たくさ
ときどき思い出す、ちいさな光景がふたつある。 ひとつは祖父のすがた。 橋のうえ。膝くらい…
新しい日々が流れてゆく。シャワーみたいに、肌を伝ってさらさら流れて洗われてゆく。 新しい…
寒い時期に咲く桜を、今年はたくさん見た。 職場にきれいな冬桜が咲いていて、朝、いつも見上…
駅までの道に、大きなむくろじの樹がある。 そこは藪で、たくさんの木がはえていて、そのなか…
ほとけのざがあちこちで咲いている。 幼いころ、その小さな桃色の花を摘みとって、よく蜜を吸…
ゆりちゃんは、どこか遠かった。 おなじ専攻の友達だったけれど、さほど親しいほうではなかっ…
幼いころから漠然と持っていて、あまり人に話してこなかった感覚が、「いない」というものだった。 私は7人家族で、茶の間の長いちゃぶ台を家族が囲んで夕飯を食べるのだけど、そのときにいつも、「いない」と思っていた。 7人全員が座布団に座っていて、だれひとり欠けていないにも関わらず、なぜかだれかがいない、という感覚が常にあった。 いるべきはずの人がいない、といつも思っていた。 幼くてそれを上手に言語化できなかったし、また「いない」からといってとりたてて何か問題があるわけでもないの