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先輩への淡い気持ちは、贈り物のように心の底にある

初恋は、中学の先輩。
天然パーマで明るい感じで、学生服が似合っていた。

姉の級友で、一緒に何人かで遊びに行ったことがある。
ハイキングして、ボートに乗った。
でも彼は姉が好きだったみたい。
ふんわりした、思い出。

記憶に残っているのは、くにこさんと、ひとみさん、という中学のふたつ上の二人の先輩。

色白で、うっとりするような大きな瞳の、ひとみさん。
ピアノが上手で、優しくて、お嬢様。

元気いっぱいで、明るくて朗らかな、くにこさん。
母子家庭で、家事を引き受けながら、学術優秀なしっかり者。

ふたりは親友だった。いつも一緒にいた。

私はどちらにもあこがれた。

はじめはひとみさんに心酔し。
そしてだんだんと、くにこさんと仲よくなり、毎日手紙を交換するようになった。
短いメモに、日常の他愛ないことを書いて、下駄箱に入れる。
くにこさんからも、メモが届く。

「テストがあってうまくいかなかった」と書いたら、慰めてくれ、先生の心無い言葉に泣いたら、怒ってくれた。
好きな本のことを一番話せたのも、くにこさんだった。
私にとっては、姉よりも心の姉だった。

ワクワクした。

いただいた手紙は大事に、きれいな箱に入れた。

卒業式が寂しくて、近づいてくると悲しくて。
でも仕方なくて・・・。
花束を渡して、泣きながらくにこさんに渡した。

初恋よりも、強い思いがあった。

女性同士の愛、ではあるけれど、恋愛ではなかった。
でも・・・

くにこさんは、まったくその気はなかったろうけれど、私は抱きしめてほしいような、気持ちがあった。
甘えるみたいに。

くにこさんとは、その後、会っていないけれど・・・。
寂しいけれど、連絡を取ろうとはしなかった。
違う生活があるのだろう、と。

恋ではなくて。
尊敬と、あこがれだったのだと、思うけれど。


もっと強い気持ちがあると、つながれた糸は何度も交差するのだ。

『ののはな通信』(三浦しをん)を読んで、感じた。

高校時代、出会った二人は愛し合い、誤解し合い、別れる。
でも、心はどこかでつながっている。

そのひとり・牧田はな(はな)が結婚し、政情不安な国に赴任する。
お嬢様だったはなが、強くたくましく、変わっていく。
それを応援し、心配し、切なく心振るわせながら、見守るもう一人の、野々原茜(のの)・・・。

愛の形は変わりながら、続いている。

私にとって、天真爛漫なお嬢さんの、「はな」はひとみさんだ。
庶民的な「のの」は、くにこさん。
不思議にぴたりとあてはまる。
思い出す、日々。

私にはそのあと、親友と呼びたい友が何人かできて。

あこがれというよりも、語り合う友で、飲み友達で、戦友で。
一生、つながっていたい。

でもふと、くにこさんを思い出すことがある。
甘酸っぱいような、気持ちで。

いただいた手紙は、すべて取っておいてある。

いつか、読み返す。
私の淡い、『ののはな通信』。







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