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アイデアと「多数決」。

「多数決=民主主義の原則」というのは一般的に語られる“常識”だと思います。

先日、沖縄で県民投票が行われました。

記事の中では『新基地建設反対の民意がより明確に示された。』と述べられていますが、つまり「多数=民意」であると我々は無意識のうちに理解しています。

そして、ビジネスの場面においては「アイデアと多数決」は「水と油」のように取り扱われることもあります。

例えば、多数決のせいで「本当に選ばれるべき優れたアイデア」が排除され、「何となくリスクが少ない無難なアイデア」が選ばれる。というジレンマをよく聞きます。

これがジレンマになるということは、無意識のうちに「多数決は意思決定の方法として正しいもの」という前提に立っていると言えます。

しかし、多数決は本当に正しい意思決定(投票方式)なのでしょうか?

ジャンクフード好きの3人

ここから分かりやすくする為に例を出して話して行きます。

ジャックフード好きのA、B、Cの3人がランチに何を食べるかを決める状況を考えてみましょう。お店の候補は「ラーメン」「ピザ」「ハンバーガー」の3つで、それぞれの好みは次の様だったとします。

ここでCが「多数決の勝ち抜き戦で決めよう」と言い出しました。AとBはその話に乗り、まずは【ラーメン vs ピザ】で多数決をとると、AとCがラーメンで2票、Bのみピザで1票となり、ラーメンが勝利しました。次に【勝ち残ったラーメン vs ハンバーガー】で勝負すると2対1でハンバーガーが勝ちました。その結果、3人は「ハンバーガー」を食べに行くことにしました。

全員参加の2回の多数決を経て、一番人気となった「ハンバーガー」が3人の意見を最も尊重したものになっているはずです。

しかし、ここで【ピザ vs ハンバーガー】で比べてみると...

何と「ピザ」が勝利してしまうのです。

このように「個人では好みの順位が決まっていたのに、グループでは好みの順位が決まらない」「対戦の順番によって勝者が異なってしまう」という事態があり得るのです。

少しだけ深読みしてみましょう。
Cが“あえて”最初の勝負にハンバーガーを外した、としたらどうでしょうか?もしくは、「事前に3人の好みを知っていて、ラーメンとピザの勝負が終わってから、後出しでハンバーガーを出していた」としたらどうでしょうか。

もしかしたら結果が操作されていた可能性があります。(アイデアを後出ししてくる奴には要注意かもしれません。)

さて、これで果たして理性的な判断と言えるでしょうか。何だかもっと良い方法がありそうです。

全ての中から1つに投票すれば良いんじゃないの?

「勝ち抜きでの多数決」に問題があるとすれば、「複数の中から1つを選ぶ(単記投票方式)」ではどうでしょうか。(実際にアイデアを選抜するときはこの方法が多いと思います。)

下の図を見てください。

一番人気があるのは「ハンバーガーで3票」ですが、最下位も「ハンバーガーで4票」という結果になります。

「一番人気のものが、(それ以上に)一番嫌われている」という事ですね。(本当にトガったアイデアは、この結果になりそう...)

この結果は本当に理性的でしょうか。まだ良い方法がきっと...

もう、全然決められない。

では次の例はどうでしょうか。ここからは「いくつかの多数決の方法」で手当たり次第に考えてみましょう。

「5つのジャンクフードに対して、55人が投票する」というグランプリを考えてみましょう。それぞれのジャンクフードに対して、1位〜5位のランキングを記入してもらった結果が次のようになるとします。

【単記投票方式】
先ほどの「1位票を最も多く得た選択肢」が選ばれる方式。→ハンバーガー!
【上位二者での決選投票方式】
過半数を超えない場合、上位2者で決選投票を行う方式。ハンバーガーの1位は過半数未達なので、ラーメンとの決選投票。→ラーメン!
【勝ち抜き(負け抜け)決戦方式】
最下位の選択肢を除外して、再投票を繰り返す方式。まず初めに1位票の一番少ない「お好み焼き」票が除外され、それぞれが二番目に投票。これを繰り返します。→ピザ!
【順位評点方式】
1位が5点、2位が4点、3位が3点、という形で傾斜をつけた採点方式。→うどん!
【総当たり投票方式】
それぞれを1対1で対戦させ、総当たりで決戦投票を行う方式。例えば、まずはラーメンvsお好み焼きをすると18vs37、ラーメンvsお好み焼きをすると22vs33...これを繰り返します。→お好み焼き!

どの選択肢も一位になることが出来ます...

あれ、多数決って...

多数決が不完全だとしたら。

実は、完全に公平な投票方式は存在しないことがわかっています。(詳しく知りたい方はアロウの不可能性定理でググッてみてください。)

我々はこんな不完全な「多数決」にアイデアを選定されてきたのでしょうか。

単純なアイデアの「質」が足りていないのであれば納得できますが、多数決の「投票方式」でアイデアが殺されていた可能性があるわけです。悔しいですね...

そうであるならば、我々は「アイデアと多数決」にどう向き合っていくべきなのでしょうか。

私が今のところ考えているのは以下の通りです。

【アイデアを出す側】
①多数決なんて「そんなもの」と理解する。
アイデアが否定されたとしても病みすぎない。何なら多数決をディスって良い。
②アイデアは「1 vs 1」で戦わせる。
このnoteで見てきた問題は選択肢が3つ以上あるときに発生するものです。タイマンでアイデアを勝負させましょう。ちなみに沖縄の選挙はまさにタイマンでした。
③そのアイデアが通りやすい投票方式を提案する。
ちょっとズルいですが「めちゃくちゃトガったアイデア」と「八方美人的なアイデア」では勝ち方が違います。前者ならば「単記投票方式」、後者ならば「順位評点方式」などを選べば勝率アップです。

【アイデアを選ぶ側】
①どういう性質の勝者が欲しいかを設定しておく。
アイデアを出す側の③の裏返しですが、欲しい勝者の性質によって投票の方式が変わってきます。現実でも「政治家はある程度強いリーダーシップが欲しい」から「単記投票方式」になっているのかもしれません。

②そもそも多数決で良いのかを考える。
最近とても気になるクリエイターのGO三浦さんがこのようなツイートをされています。

「暗闇でのジャンプ」が必要になるときは、誰かの「エイヤ!」が必要なのです。


以上です。
...またしても長めの話になってしまいました。すみません。

多数決がベストではないにしてもベターであることは間違いないと思います。しかし、その多数決の不完全な部分を理解しておくことは「正しい選択」に近づく第一歩かもしれません。

では、最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました!
(理解が間違っていたり、ご意見などあればお待ちしてます!)

※このnoteで話した内容が詳しく知りたい場合は「社会選択理論」「コンドルセのパラドックス」「ボルダルール」「パウロスの全員当選モデル」「アロウの不可能性定理」あたりでググってみてください。とても難解なので、私も100%理解している自信はありません...笑

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