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【忘れ得ぬ名文】3補記 北川恭子『いい天気』

奈良で活動しすぎたのか一日片頭痛に見舞われてしまい、なんとあと10分しかない!ということで、今日はかんたん投稿させていただきます。

先日書いたとおり、謎の歌が北川恭子さんの『いい天気』であることが判明しました。

早速調べたところ、シングルCDは中古でも販売していなかったので、1998年発売のデビューアルバム『mind sketch』を、こちらも新品はなく中古でAmazonでお取り寄せ。
奈良から帰ってきたら届いていました!うれしい!

どんな歌だった? 歌詞引用

いい天気
(作詞作曲:北川恭子)

青く晴れた空は
ちょっと目に痛くて
ひとつ のびしてみた
特に予定もない
こんな休みの日は
部屋の掃除しよう

まるでおもちゃ箱を 返したような
ワンルームが変身
”やっぱりこうでなきゃね”って見回し
ソファーにもたれる

もう3ヶ月 一人暮らしにも慣れた
まだまだこっそり泣く夜もあるけど
とりあえず元気

シャツやバスタオルや
全部 洗濯して
テレビ見ていたけど…

”閉じこもってばかりじゃもったいない”と
日差しがさそっている
そうだ! 久しぶりに自転車でも
乗って出かけよう

こうやって ただ走っているだけで
余計なことをすべて 忘れていられる
本当いい天気

こっちで友達も好きな人も
できたから大丈夫
心配はしないで 門限なら
ちゃんと守ります

離れてからわかったこともあるよ
甘えてばかりだった自分に気づいた
ずっとありがとう
もう すっかりジーンズも乾いていた
お日様の匂いがしている 明日も
きっといい天気

ほわあ、こういう歌だったんだあ。
くらたが聞いていたのはアニメのEDだったのでそれ専用に短く編集したものだったのだと思います。

感想1:時代を感じる

独立してなんとなく寂しいけど慣れてきたよ、という歌。
「門限ならちゃんと守ります~ずっとありがとう」の歌詞があるということは、保護者に向けた歌なのでしょうか。そこまではとくに誰宛てという感じでもないのですが、そこだけは強く保護者宛て感が出ています。いまでも親に向けた歌ってあるんだろうけど、きっと「門限」とかは歌詞に出さないだろうなあ。

「なんとなくくさくさしていて、あまりにも晴れていて気後れしたので部屋を片付けました。洗濯もしました。」という部屋の片づけや洗濯を字数を使って語るつくりや、「ワンルームが変身」などのワーディングにも、なんとなく時代を感じます。

北川さんの高めで硬質だけど素朴な声や、わりとゆったりしたテンポ感、ギターやドラムの感じも含めて、90年代!という感じ。そのころを思い出すというか、ああ好きだったなあ、としみじみ思いました。

感想2:ただ明るいわけじゃなくて、何かあっても頑張る女子の励ましソングだった!

「青く晴れた空は ちょっと目に痛くて」とは、『千と千尋の神隠し』の『いつも何度でも』を思い出します。

繰り返すあやまちの そのたび ひとは
ただ青い空の 青さを知る

『いつも何度でも』(作詞:覚和歌子、作曲:木村弓)

青空が気持ちいい、うれしい、ってシンプルに思えれば最高ですけれど、人間生きていれば青空が目に染みたり、澄み切った空に対してなんとなく気後れしたりすることってありますよね。

そんな自分に気づいて「ひとつ のびしてみた」というのも、けっこうリアル。なんかこう、いきなりエイヤって動き出す元気はない時の最初のステップってのびくらいのものだし、とぼけているのか照れ隠しなのか「してみた」という感じも、経験的にしっくりきます。

それから「おもちゃ箱を返したような」状態だった部屋を掃除する。シャツもバスタオルも洗濯しないで溜まっていたのでしょう。
「まだまだこっそり泣く夜もある」し、友達も好きな人もいるけど、今日は一人で過ごしている。今だって、自転車で出かけて走っているから「余計なことをすべて忘れていられる」わけで、そうでなければ考えてしまう「余計なこと」をけっこう抱えている状態だと読み取れます。

そうやって青空に誘われて少しずつ行動を起こしていって、最終的には外に出て自転車で走って、心の澱みたいなものを飛ばしていったら、自分の甘えへの気づきや親への感謝を思い出す。
この流れの最後にあのくらたが忘れられなかった一節

もう すっかりジーンズも乾いていた
お日様の匂いがしている 明日も
きっといい天気

が来る……「いろいろあっても明日もきっといい天気と思えた」という内容だ……と知ったら、めちゃくちゃ感動的じゃないか……!
他愛ない予定のない休日の日記のように見えて、コーピングリストの一つの見本みたいな、けなげで前向きな休日の歌ですね。いい曲や……!

なんとなく、SISHAMOさんの『明日も』(2017年)を思い出しました。

良いことばかりじゃないからさ 痛くて泣きたい時もある
そんな時にいつも誰よりも早く 立ち上がるヒーローに会いたくて

『明日も』(作詞作曲:宮崎朝子)

『明日も』の歌詞全文を検索してみて思ったのですが、「何を具体的に言語化するか」が時代によって異なるのかもしれません。
『明日も』は何が大変か、何がつらいかを割と細かくはっきり言語化しているのに対して、『いい天気』は、さみしさやつらさはあまり具体的に書かずに、今・現在の自分の行動に焦点が当てられています。『明日も』では自分の元気を取り戻す方法が推し活になっているのも時代性かもしれません。

SISHAMO『明日も』はくらたの大好きな曲。富士通レッドウェーブのオフェンスソングでもあったよ、ということをかつて書きました。これ書いたころは、富士通にいた田中真美子選手が大谷翔平の妻になるとは思いもしなかった…… ↓↓↓

参考サイト

歌詞の一部だけでも、現代の歌ならなんとかヒットするかもしれないけど、20年前の歌だと難しくなります。ただ、曲名や歌手名がわかると、格段に情報にアクセスしやすくなりますね!ありがたや~!

謝辞

かんたん投稿のつもりが、結局けっこうかかってしまいました。

20年以上もわからなかったことを、インターネットの発達やご厚意・ご助言によって知ることができ、CDを手に取って聞くことができるなんてすごい。note.やってみてよかったな、とは始めてからずっと感じてきましたが、まさかこんな具体的な恩恵を受けることができるとは、予想もしませんでした。

あらためて、教えてくださったおおきちさん、ありがとうございました!

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