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2023年みんなの「今年最も心に残った料理」

ところで皆様、皆様にとって今年1年で「最も心に残った料理」って何でしょう?

自分が作ったものでも、食べたものでも、心温まった思い入れのある料理、もしあったらぜひ教えてください。

私は、11月に母とプーリアの家族の元に来た時にマンマが作ってくれたミネストラかなぁと。

「ボローニャでは数日間、お肉や豪華な食事続きだったでしょう」と、着いた日には野菜たっぷりのスープを作ってくれました。

シンプルで、奇を衒うことのないスープなのですが、地元野菜の旨味が滋味深く、何よりも気遣いが疲れた体に沁み入りました。

マンマは料理上手だから、いくらでもゴージャスな料理を出すことは出来るのに、それは次の日に。きっとイタリア料理に慣れていない私の母は胃が疲れるだろうな、という想像力ですよね。

そんなマンマがきちんと作ったミネストラは本当に美味しいのです。

普通の食材が人を癒す料理になる、これが料理の優しさであり、豊かさだなぁと思った瞬間です。

マンマ・ラウラ

横にいるマンマにも聞いてみました。

一つは、自分のお母さんが作っていてくれた、古くなったパンをオレンジを入れたお湯で茹でたお料理とのこと。

「昔は好きではなかったのよ。残り物の消費だって分かってたから。

上の階に住んでいた従姉妹のお母さんは、いつもスーパーで食材を買ってきて料理をしていて、正直、自分には羨ましかった。私の家は農家だったから、父が収穫してきた野菜がほとんどで、スーパーで買ってくる食材なんて、とても珍しかったの。

でも、こないだ料理学校で自分のクラスでこの料理のモダンバージョンを作ってみたのね。ソースも美しく仕上げて、古いパンをクルトンのように焼き上げて、エビやら混ぜてサラダ仕立てにして。

その時に、ふと、オレンジ水を茹でている時にわっと部屋を包んだ香りが、とても懐かしくて。

あぁ、お母さんの香りだって。

名前もないけれど、いつもお母さんが作っていた料理、それを自分がこんな形で受け継いでることが少し誇らしかった。」

と。

「もう一つはAoiのお母さんが作ったちらし寿司。

お米の炊き方、使い方、全く違う調理法だけど、何よりも丁寧で、本物で。

全て日本から持って来たもので、すごく正確に時間も量も測って、本当に丁寧に作っていくKayokoを見て、食べ物や食べる人への敬意や愛情というのかな、そういったものを感じたの。

そういうふうに作らなければならないという義務からやっていたのではなくて、彼女自身がこう作って来てそれを伝えたいというのがこういう丁寧さになるんだと思ったのね。

母としての料理だと思った。」

と。

そう、私の母は一生懸命な人なのです。

小さい体に大きなスーツケースを引いて、プーリアでマンマとコラボで行った料理教室のために沢山の物を持ってきて、あらゆる準備をして。もちろんマンマは全部を見ているわけではないけれど、そういうところが伝わるんだなぁと思いました。

もう1つ、「母としての料理」というのは、ユニバーサルなものがあるのかもしれないと感じました。

これは、私がイタリア中の家庭を巡って、マンマの料理を食べてきて、無意識に感じてきたこと。

食べる人が常に先にあって、料理が後にくる。

レストランとは絶対的に違う点。

自分が大切にする人に食べてもらう料理には、何にも代え難い力があるのです。

それからマンマは続けます。

「文化は違う。水に浸して、それから蒸す、こんなお米の調理法なんてみたことがない。

イタリアでは、見もせずにあらゆる人が「日本料理なんて、外国の料理なんて、」というけれど、Kayokoの料理をみて、食べて、そうじゃないってはじめて思った。

それぞれの国に伝統があって、素晴らしいものを築いてきていて、私たちも学ぶものが沢山あると、自分の目で見て食べたことで、はじめて言葉だけでなくて実感を持って感じたのね」

なんと言うか、まずはマンマのオープン性、ピュアな感受性が素晴らしいと思ったのですが、こういう心が政治・社会・経済・文化のあらゆるものの原点になるべきなのですよね。

「他の文化を尊重しましょう」というのは、教科書にも書いてあることですけれど、こういう風に他の文化に対して心から敬い、そこから学ぼうと感じられる心が、この混沌とした世界を生きていく時の最も大きな強みになることなのだと最近感じるところです。

マンマのオレンジパンの昇華と、私の母のちらし寿司

私の母・佳代子

自分の母にも聞いてみました。

「私は、ママとプーリアの家族の元に来た時にマンマが作ってくれたミネストラかなぁ」

と。私と同じ料理じゃん!

「自分はいつも料理を作る側で、人に料理を作ってもらうことがないから、料理ってこんなに優しいんだ、と感じた」

と。確かに、作ってもらって初めて感じる料理の優しさってありますよね。

アレッサンドロ

アレッサンドロにも聞きました。2023年、1番心に残っている料理は何?と。

「簡単すぎる質問だよ〜、あおいも分かるよ〜」

「タンバリンタンバリン、、、タタタタ(机を叩く音)」

「Porco Giapponese(豚の生姜焼き)」

「僕にとっては新しい味で、本当に大好きな一品」

「2番目は、リタのところでご馳走になったメッシーナ風肉巻かな。(シチリアに行った際に私の料理家の友人リタの元にお邪魔して、ランチをご馳走になったのです)それから、アリカンテで食べたArroz negro(イカ墨パエリア)」

と。

ちなみに、この豚の生姜焼きにはストーリーがある。

ことのはじめは、私の母が訪ねてきてた間、アレがうちに来た時に母と(が)作った料理。

ギャーギャーとリアクションしない子だから、その時は静かに「Buono」と言っていた。

翌日「昨日の豚の生姜焼きが夢に出てきた」と言ってきた時は、そんなに美味しかったんだと母と笑ったものだ。

その次の日、母はもう帰っていたけれど、アレがもう1回食べたいと言って豚肉を買ってきていたので、作った。ただ、なんとなく母と(が)作った生姜焼きにはならなくて、「やっぱAoiのマンマのは美味しかったね」と言われて、キーーと言って笑っていたものだ。

あれから1ヶ月。クリスマス。

1年で最も大事な家族の時間、花形の料理が並ぶ時。

メインのお肉料理の1つに豚の生姜焼きを作るのだといいます。

おお!と母に言ったら母がすぐに、このレシピを翻訳して送ってあげて!と。

私の母が20年くらい使ってる、ためしてガッテンのレシピを翻訳して送りました。

結果、
とにかく、めっちゃくちゃ、めっちゃくちゃ美味しく出来たらしい。

家族も大喜びと。

すごい、料理が繋がるって、奇跡です。

母が送ってきたレシピと、アレが家族に振る舞った豚の生姜焼き

2023年、皆様の「今年最も心に残った料理」は何ですか?

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