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CIVILSESSION 16: EXTRA

開催日:2018年8月25日 開催場所:東京・渋谷ロフトワーク10F

CIVILSESSIONはクリエイティブチームCIVILTOKYOのメンバーが様々な分野の方と行うアートセッションです。決められたキーワードを元に、発表者たちが一週間で作品を制作します。キーワード発表から一週間後にそれぞれの作品のプレゼンを行い、参加者の投票でグランプリを決定します。

第16回目のキーワードは「EXTRA」。
CIVILTOKYOの3名とゲスト参加者3名の計6名で行いました。

河ノ剛史(デザイナー等)
杉本広美(新社会人)
吉岡裕記(デザイナー)

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グランプリは河ノ剛史に決定しました。

河ノはextraを「生活を楽しくするための余分なもの」と解釈し、自身の趣味である生け花、ファッション、本の3つを融合させた「イケ服」を発表し、見事グランプリを獲得しました。吉岡は子供が生まれる際に余分な器官として切除されるへその緒が切除されなかったらという仮説から、へその緒を再現したファッションアイテムを披露。杉浦はメイクアップを身近なextraと捉え、人間の顔の系統として例えられる動物の顔自体にメイクをする作品を発表。伊藤はextraを超濃縮と仮定し、自身の趣味である美女写真をVRで散りばめてオタク部屋を製作。根子はナンシー関のエッセイを言葉の要素ごとに分けて再編し、自動生成された文章による新編を製作。杉本はサイズ表記のXS S M L XLに着目し、この記号を用いてものが大きくなっていく様をビジュアル化させました。


①吉岡裕記(デザイナー)/EXEMO

まず“Extra “というキーワードについての見解ですが、「余分の、臨時の」という意味と、「特別な、特別上等の、格外の」の「余分なのに特別」という、一つのワー ドの中に相対する真逆な意味合いをもつ不思議なワードだと思いました。また、個人的にSF映画のE.T.を連想させました。
Extra terrestrial / E.T. (エクストラ テレストリアル : 地球圏外の~ )を再確認する為、久しぶりに映画を観てみました。劇中でE.T.と少年は、光る指などの未知の 器官を介して感覚や感情の伝達を行い、次第にシンクロしてゆきます。そのやりとりを観ながら、いつの間にかE.T.と少年のシンクロに、鑑賞している自分もシンクロ して感情移入してしまいました。そこで気になったのは、E.T.が少年と感覚や感情のやり取りをする時に使っていた未知の器官(E.T.の光る指とかお腹)とはなんだったのか?少年はどのようにその器官からの信号を受け取っていたのか?ということです。
そしてExtra embryonic tissues という言葉にたどり着きました。日本語で“胚体外組織“と言われるそれは、妊娠期の母親の体中で胎盤や臍の緒となる組織のこと を言います。それらは胎児の発生・発育を維持するための組織で、育つための栄養を送るための重要な役割を果たしながらも、出産時に人為的に切除され、胎児の体自体にはならないものをいいます。つまりExtra (余分な)な器官なのです。ですが、もしこれが、もし母親の心理状態の変化において、興奮した時に出るドーパミン などの分泌物も臍の緒を通して子供と共有していたとしたら、臍の緒が栄養を共有するためだけのものではなく、E.T.のそれのように感情の伝達器官としても機能して いたのではないだろうか?と考えました。
胎児がお腹の中で聞いている音は、ほとんどが母親の心音とホワイトノイズだと言われています。ただ、私たちはよく胎教のためにお腹の方にスピーカーを向けて、 モーツアルトなどを聴かせたりしますよね。母親はお腹の中の胎児もそれを一緒に聴き、反応して動いると思う。親はそれを見て喜ぶ。ただ、ここで思うのは、胎児 はお腹の中でひっきりなしに鳴っている母親の心臓の音と、体内の血流や臓器の動く音の向こう側に、羊水を伝ってかすかに聞こえてくるホワイトノイズ混じりのモー ツアルトに対して反応しているのではなく、母親がモーツアルトを聞いて感動した時に分泌されたドーパミンに対して反応しているのではないかとお思うのです。 それはつまり、物理的な“感情の伝達“が臍の緒を通して行われているのではないかということです。そして、今回これらの考えを作品化するために、「もし臍の緒 が誕生直後に切断されずに Extra (特別な)な機能を持った器官として体に残されていたとしたら、感情伝達器官として発達していたのではないか?」という仮説を立て、アクセサリー作品を制作しました。
EXEMOと名付けられたこれらの作品は、普段はファッショナブルに身につけることが出来るアクセサリーとして機能し、シチュエーションによって、感情のやり取りを行うためのツールとして機能します。子と母親、恋人、あるいはペットや植物とだって感覚や感情のやり取りができてしまうかもしれません。 あなたはどのようにこのEXEMOを使ってみたいですか?

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②河ノ剛史(デザイナー等)/楽しむための訓練 Extra Lesson 1 「イケ服」

革命が到来すれば、私たちは自由と暇を得る
その時大切なのは、その生活をどうやって飾るかだ。
            ――ウィリアム・モリス
教育は以前、たぶんに楽しむ能力を訓練することだと考えられていた。
            ――バートランド・ラッセル『幸福論』

私は趣味でいけばなを習っています。
部屋には冷蔵庫や洗濯機など生活に必要なものがあまりなく、ものといえば植物とプレタポルテと本が大半を占めています。これらは人によってはなくて困るものでもない余分な(=extra)ものですが、わたしが生きていくためには必要不可欠なものです。
いけばなをやっていると、普段関わらないような人たち(主には年配のおばさま達)と話し、創作を共にします。彼らは誤解を恐れずにいうなら(←念押し)街で見かけても、見過ごしてしまう普通のおばちゃんや、おじさま達です。しかし、展覧会等などで彼らの作品を観ると、毎度その自由闊達さに驚かされ、感銘を受けます。


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※ 横浜華道協会主催花展『花笑』より(これらの作者の多くは、特別に有名な華道家さんというわけではありません)

いけばなには、流派によって異なりますが、基本的には「型」というものがあり、初期の段階においてはこの型を守りながら構成の仕組みを理解し、技術を習得していきます。そして基礎が習得できた後は、それらをずらしたり崩したりたりして、より高いレベルで表現することが可能になります。さらに知見や技術が深まると、それらから離れ、全く自由に観ることや表現することが可能になります。この3段階のプロセスは、ご存知の通り「守破離」と呼ばれ、いけばなに限らず茶道や芸術など多くの分野に共通した創造的な習得過程です。
先の文章で言及したおばさま達は、各々段階は違えど、訓練によって自由な創造性を獲得し、とても生き生きとしていて、人生や生活を豊かなものに飾っていました。

「余分な素材を用い、それらを飾り見立て、楽しむこと」
これが、今回の作品のテーマです。


服をいける

STEP1(守):いけばなの基本形の一つにならって服をいける

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STEP2(破):素材と対話しながら、基本形からアレンジし、服をいける

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STEP3(離):気の向くまま自由に服をいけ、言葉を添える(エピグラム)
各自(誤解も含め)自由に鑑賞し、味わいましょう。

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これら「イケ服」の作品と制作のプロセスは、生活を飾り楽しむための、私なりの訓練と実践です。
それぞれ自分なりの、生活を飾り豊かにする方法を考え、実践してみましょう!

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③杉浦草介(デザイナー)/MAKEUP

エクストラとは、例えばMacbookにシールを貼れば、それが「エクストラデコレーション」になるように、すでに完成されているものに「付け加えられたもの」を言う気がします。それが何か考えていた時、ふと「メイクってすごく身近なエクストラだな」と思いました。そしてその傾向として、特殊メイクや職業用メイクを除けば、メイクは平均顔美人説に基づいて行われることが多い気がします。
人の顔はタヌキ顔、キツネ顔など、動物に例えられることがあります。それもあってか、人間の顔に動物風のメイクを施すことはよくありますが、人間のメイクを動物に施したものは見たことがありません。すでに完成された動物の顔に、人間風のエクストラを加えました。
面長で離れた小さめの目が気になるUさんは横を意識したチークに加え、つけまつ毛とアイシャドウで目を大きく強調し、ノーズシャドウで目自体も寄せ気味に。
ツリ目気味のKさんはそこを生かして山口小夜子風に仕上げ、昨今の太眉流行には乗らない意志の強さと、骨格を生かした縦長のチークでクールさを演出。
丸顔のTさんは目元のクマをコンシーラーで隠しつつ、広めに塗ったチークで優しい顔に仕上げ、ふんわり太眉と二重(+目尻のラメ)で愛され顔に。
笑顔が素敵なSさんはのっぺりとした顔とエラを隠すために大胆なハイライトとシェーディングを加え、離れ気味の目はアイライナーで切開ラインを大きめに入れて少し中央寄りにし、小ぶりなリップで可愛らしい印象に仕上げました。
(写真に実際のメイク道具を使ってメイクを行った上で複写しているため、元画像と色味が変わっています)

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④伊藤佑一郎(写真家)/EXTRA GIRLS COSMO

EXTRAを考えた時、まず最初に思い浮かんだのが「エクストラバージンオリーブオイル」でした。調べるとオリーブを絞っただけのオイルということなので、要は100%オリーブ。ということはエクストラとは超濃縮なことなんだなと。そんなことを考えている時に、会社の同僚とある映画を見に行きました。言わずとしれたミュージシャンのフライングロータスが作った初監督作品の「KUSO」です。タイトルからして嫌な雰囲気満点だったのですが、おもわず席を立つ人が続出との触れ込みもあり、いざ鑑賞してみると。うんこと性描写とスカトロとグロのオンパレード。なかでもうんこへのこだわりは半端なく、あらゆるシチュエーションのうんこが90分間目の前に現れ続けます。まさにエクストラクソ。見終わった後の写真がこれ。あ然。そこにはフライングロータスのとてつもないうんこへの執着がありました。これだけ特濃なものを見せられた後にふと考えました。自分が特濃のものってなんだと。それは美女写真の収集です。素敵な女性をみつけるとドラッグアンドドロップしつづけて、およそ1000枚ほど集めたこれをついに披露する日がきたんだと決意しました。なんか昔好きなアイドルのポスターとか部屋中に貼ってたあの狂った感じをいままで集めたガールを使って再現してみようと思い、VR空間を作りました。名付けてエクストラガールズコスモ。
ただ感想でいただいた「マジで自分の部屋にプリントしたものを貼ってやってほしかった」というその通りの気がしました、この内容ならその方がエモかった。そう思いました。

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⑤根子敬生(デザイナー)/EXナンシー関

なにかの増刊が制作できればと思い「ナンシー関が生きていたら?」と仮定した冊子を制作しました。
と言いつつ、私は特に物書きでもないので、それを実現するためにどうしようかな?思ったところ、そもそも自分は学生時代に、いわゆるナンシー関が題材にしている有名人・芸能人の名前も顔も知らず彼女のエッセイなどを読んで、おもろいなー、と思っていて、ということは「特に内容の詳細が分かっていなくても、言い回しや肌触りだけでそのものの面白さは伝えれるかも?」と思って、ナンシー関の面白さは(もちろん何か事象への独自の視点はありつつ)表面的な部分でも完結するんではないか?と思って、ナンシー関の文章を自動生成する手法が適しているのでは?と思って今回の方法を考えました。その方法は、
・ナンシー関の電子書籍をOCRで文字変換
・MeCabにて形態素解析(単語ごとに分解)
・マルコフ連鎖にて文章を連結
みたいな感じです。
結果としては、雰囲気自体は思った感じには感じられたけど「モノを何かに例える感じがナンシー関っぽい!」とか「一つの単語の言い回しについてクドクド言う感じがナンシー関っぽい!」とか、物事を解析するでも、もう少し自分(人間)の視点を挟めば、もっと(自分の中での)精度が上がるかもしれない、と思って、思った。

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⑥杉本広美(新社会人)/XL

extraの省略であるX
Xが多くなるとサイズが大きくなる。単純なルールで何かビジュアル化できないかと思い、制作しました。

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