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CIVILSESSION 13: MYSTERY

開催日:2018年5月12日 開催場所:東京・表参道 虎屋ビル2F

CIVILSESSIONはクリエイティブチームCIVILTOKYOのメンバーが様々な分野の方と行うアートセッションです。決められたキーワードを元に、発表者たちが一週間で作品を制作します。キーワード発表から一週間後にそれぞれの作品のプレゼンを行い、参加者の投票でグランプリを決定します。

第13回目のキーワードは「MYSTERY」。
CIVILTOKYOの3名とゲスト参加者4名の計7名で行いました。

・井出竜郎(アーキビスト)
・remi takenouchi(ファッションスタイリスト)
・洞内広樹(ディレクター)
・谷鹿夏希(映像プロデューサー)

グランプリは谷鹿夏希に決定しました。

初登場の谷鹿は自身が探偵になりきり、街で見つけたものに事件性を見出してそれを追う様をスライドショー形式で紹介していくというプレゼンテーションで多くの観客の笑いを誘い、見事グランプリに輝きました。
井出は今回のキーワードを「ケネディ大統領暗殺事件」とリンクさせ、そのリサーチ過程によって得た文字情報でタイポグラフィックな作品を制作、根子は「全ての物事にミステリーが存在する」という視点の元、適当な言葉を伝えると、その言葉からミステリアスな物語を生成/朗読する装置を提案しました。remi takenouchiは自身の部屋にあるミステリアスなものの紹介に加え、職業の都合によって一次的に汚部屋と化す一角の写真を公開し、観客に驚きと笑いを与えました。
洞内は自身のディレクターという立場から、何かを直接的に作るのではなく、思考実験を通じて2つのミステリーをこの世に存在させる、というプレゼンテーションを行い、杉浦は自身がミステリーというキーワードに対して悩み、考えた思考の流れ自体を一つずつコラージュによって紹介、伊藤は電車内で聞こえる他人の断片的な会話を複数録音し、車内の無秩序とも言える空間を一つの映像作品にまとめ上げました。

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①井出竜郎(アーキビスト)/Mystery and Truth

Mystery(ミステリー)というキーワードから連想されるイメージの豊富さから、その裏にあるTruth(真実)を知りたいという人間の知的な衝動が見えてきたので、ミステリーと真実の関係性を考えてみました。

今回着目したのは20世紀のミステリーの一つ、ケネディ大統領暗殺事件です。タイムリーな話題で、2017年10月~2018年4月にかけて、事件の調査に関する機密文書がトランプ大統領の承認によって部分的に公開されました(BBC記事)。

アメリカ国立公文書記録管理局のウェブサイトで多くの機密文書がPDFで公開されダウンロードできるようになっています(NARA)。この記録を自分なりに調査して真実を探るリサーチをしていきました。 

ただ、多くの関係者が関わり膨大な時間をかけ残された5万件以上という記録のボリュームから見えてきたのは、真実の「とらえにくさ」です。ミステリーと真実の関係性は、ある一点を境界とする対極なものではなく、記録の集積によって真実に近づく、同じ地平上にある相対的なものだと考えました。

ケネディ大統領暗殺事件で考えてみれば、5万点以上の記録がある事実そのものが真実の重みであり、同時にミステリーの深さでもあります。記録の存在を視覚化するために、全ての記録に振られた13桁のID番号を使ったグラフィック作品として表現してみました。

ID番号をランダムにずらして重ねてノイズを生み出しながら紙面に流し込んでいくことで、真実に結びつく記録の存在を示すはずのID番号が読めなくなる矛盾を生み出し、ミステリーと真実を両立させるコンクリート・ポエトリーのようなイメージを作ってみました。

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②根子敬生(デザイナー)/ミステリーテラーロボ「ミス・テリー」

世の中は分からないことばっかで、何のどこを切り取ってもそこにはミステリーが存在するな、というところから、言葉を話しかけると、その先の物語を語り部として喋ってくれるロボを作りました。
Raspberry Piを仕込んで、リクルートの提供しているA3RTのText Suggest APIによって、音声認識したテキストから次の文章を生成して、それをロボにゆっくりボイスで喋らせるという仕組みです。

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③remi takenouchi(ファッションスタイリスト)/本当のミステリーを探して

今回のコンセプトはストレートにミステリーを感じるものについて考えました。
ミステリーとは心に何とも言えない不安や疑問、不思議な気持ちになるものなんではないかと思いました。
形から入る為BGMで不思議な気持ちに気なる曲。Xファイルやドラマのトリックなどを掛けています。
そして格好。防護服ってなんか謎を感じますよね。と言う事で着てみました。
肝心のプレゼンはまずは今の流れの様に不思議な気持ちになる物を作ろうとしました。
色々な物をホルマリン漬けに見えるようにつく。。。。違いました。これはちがいました。人工的に作った物にミステリーは感じない。
では家にある古い便やハニワはどうだろう。
少しミステリー感じますね。
でも足りない。。。。

そんな時に私は自分が人生で一番ミステリーを感じる物に辿り着きました。
自分の部屋です。
諸事情によりWEB用にモザイクはかけてますが、この山盛りの汚い部屋。
自分でも何でこうなったのかわからない、どうして片付かないかも分からない。
人工的に作られてない最大のミステリーがこれです。

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④洞内広樹(ディレクター)/the paradox of a mystery account

Mysteryの定義を”謎”に限定して、謎にまつわる思考実験をしました。

「謎にはその存在を知り、なおかつ真相を知りたいと思う観測者が必要である」「観測者のいない謎は、存在していないことと同じ」というふたつの考え方を前提として、2つの謎を用意してプレゼンテーションしました。

【1つめの”謎”】
まず、「今日僕はこの世界に1つの新しい謎をつくりました」と発言します。この時点で、「その謎ってなんだろう」という謎が、お客さんを観測者として発生したといえます。次に「これからするプレゼンによって、謎の観測者がこの部屋にいるみなさんからこの世界にいる見知らぬ人たちに移行します」と発言したうえで、謎の内容を明かしました。

【2つめの”謎”】
https://twitter.com/OXHnoXw09jA1Gbg
このツイッターアカウントです。あらかじめ撮影、編集して捏造した「パラレルワールドに行ってしまった人がスマホに残した動画」のみツイートしている架空のアカウントです。(動画の内容は比較的ポージングの変化が少ないニュース映像を音声ごと逆再生してスマホで再生したうえで、それをスマホで撮影したものを編集でさらに左右反転してつくりました)この時点で、1つめの謎の観測者は謎の内容を知ってしまったので、1つめの謎は消滅しました。しかしこのアカウントは、事前にオカルトに関心のありそうな18名ほどフォローしておきました。その中でこの動画を見た何人かは、CIVILSESSIONのことも、この動画の正体も知りません。

この動画を見た誰かがこのnoteを読まない限り、その謎は明かされないので、このアカウントは一定数の観測者を得て、(関心を持たれるかどうかは別として)正真正銘の”謎”としてこの世界に存在しつづけます。僕が用意したこの動画を終着点として、CIVILSESSIONの観客から、CIVILSESSIONを知らずにこのアカウントの動画を見た何人かへと、観測者が移行したところで、プレゼンは終了です。

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⑤杉浦草介(デザイナー)/苦悩

よく「考えすぎなんだよ」という高尚なアドバイスをくれる方がいらっしゃるのですが、CIVILSESSIONの主催側であり、十数回参加していて、グランプリを何度も取っている以上、当たり前だけど色々と考えます。
前々から思っていることですが、CIVILのメンバーが今さらプレゼンでの盛り上がりだけを優先した票狙いなことをこの場でやる意味はないですし、新しい技術、表現、考え、主張などが何も無いことをやるというのは、ほぼ毎回出ている我々には許されないと思っています。
ただ単に「ウケる」「面白い」だけでなく、「見る側にとっての新しさ」という要素がないのであれば、ただ単なる週末のお楽しみ会になってしまいます。

と、いうことを悶々と偉そうに考えていたら何も作れなくなっちゃいました。
『何をやってるグループなのかよくわからないと言われる、ミステリアスなグループ”CIVILTOKYO”の皮肉たっぷりな紹介』はプレゼンでの盛り上がりという点だけを狙いすぎですし、『近所でよく見かける、路地に立ったまま動かないおばあちゃんのミステリー』も、結局その週はおばあちゃんに会えず仕舞い。『誰も知らない、自分のスマホでの(足跡ならぬ)指跡の指紋採取』も、だから何?という問題に答えられません。

プレゼン当日午前3時まで悩み続けたけど決定打が思いつかず、かつ自分が何に悩んでいるのかもわからなくなってきました。「一体自分は何に悩んでいるのか」ということ自体がミステリーに感じられ、その週悩んだ案を持ってくることにしましたが、結局プレゼンしながらも自分が何をやってるのかわからずじまいで散々でした。

しかしながら後日、目出度く悟りをひらきましたので、次回はいけます。たぶん。

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⑥伊藤佑一郎(写真家)/公共場のカオス

今回のキーワードであるミステリーの「不可思議・不可解」という意味をきっかけに作品を作ってきました。今月から職場が変わり、都営新宿線から毎日山手線に乗るようになりました。混雑しているからか、以前よりも他人の会話がやけに気になりました。ふと耳を向けると、電車の走行音とアナウンスによって会話は耳をすましていてもどうしても断片的になってしまう。その人たちの人柄を知らない私にとって、日常会話はとても不可解に思えました。仕事の後にiPhoneを録音状態にしたまま電車に乗り、山手線を一周して会話を収集しました。激しい雑音の中でかろうじて聞き取れた会話の断片を音声とともにセリフ化し4篇の映像作品を作ってきました。何気なく私たちが身を置いている公共空間が改めて認識するととんでもないカオスであるということを感じていただくため、この4篇は四分割された画面で同時に流れます。お手元の資料をもとに、まずは気になる人たちの会話に耳をすましてみましょう。

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⑦谷鹿夏希(映像プロデューサー)/探偵になりたい!

ミステリー小説や映画には、“探偵”がよく登場します。今回、凄く良い機会だったので探偵になろう!と思いました。

しかし…肝心な依頼がいつまでたってもこなかったので、街へ繰り出して、“事件性のありそうなもの”を自分で見つけて、写真に撮って、勝手にそれっぽく推理・捜査をする“妄想探偵”になることにしました。

勝手きままな推理・捜査をそれっぽく発表し、いくつかの事件を“妄想探偵ファイル”にまとめました。

しかし、本当の探偵になりたいという気持ちは今でも諦めきれません。依頼は随時募集しております!次こそは本当の探偵になりたい…!

妄想探偵ファイル(PDF:27MB):https://goo.gl/xJR3em

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