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「ここで、夢が叶った。」-デンマークからやってきた家族が、東北のちいさな町で"暮らした"3ヶ月のこと

"グローバル社会"なんて言葉も、もはや使い古されたような現代。

海外から人々がやって来て旅行をしたり、
勉強や仕事をしに日本に滞在することは、もはや、当たり前すぎる光景。


ですが、単なる旅行や働く目的などではなく。
また、世界的にも知られる都市でもなく。

”ちいさな田舎”で、「暮らし」をした人たちがいます。


北欧デンマークという、遠く離れた国からやってきて。
そして、彼らは「家族全員」でこの体験をしました。

「幸福の国」といわれてきた国の一家は、
日本の田舎町で何をみて、何を感じたのでしょうか。 

今回は、そんな家族の物語をご紹介します。



著:アン&トーマス
翻訳・編集:Chee

オープンな心でつながった、家族の広田町への旅

2022年の6月27日から9月24日まで、
日本の広田町で暮らしました。

わたし達は5人家族で、
大人2人と、9歳・12歳・13歳の、3人の子どもたちです。

陸前高田市広田町は、岩手県の県南沿岸部に位置する。
人口約3000人。豊かな自然と、人と人の深いつながりが残る、ちいさな町。


最初に旅をしようと話し始めた時。

家族として共にいて、
どこかの地域のひと達と、一緒にいろんな活動をしたい。

それが、わたし達の動機でした。

特定の国や文化と、深いつながりが持てることを望んでいて。
具体的な場所は決めていなく、
可能性があるものに心を開いていました。

今回、滞在場所や活動につないでくれたのは、CMC という学び舎のチームです。
Nordfyns Højskoleの出身で、SETのメンバーのトリーネを通して知り、
とても面白そうだと思いました。

日本にホイスコーレのような学び舎を作っていると言う話は、
心を踊らせるもので。ぜひその一部を体験し、仲間になりたいと思いました。

トリーネに加え、航(CMC運営メンバー)、岡ちゃん(SET理事、CMC学長)とも
何度かミーティングをして、ここへ行く意思を確認しました。

*「CMC(Change Makers College)」
  広田町で4ヶ月の移住滞在をメインに、
  持続可能なライフスタイルを探求する学び舎。
*「Nordfyns Højskole」
  デンマークのフォルケホイスコーレ。
  CMCが連携している。
  アンさんはフォルケホイスコーレの教員の資格も持っている。

*「SET」CMCを運営している、
  陸前高田市広田町に拠点をもつNPO。
  トリーネはデンマーク出身、
  広田町に移住しているCMC運営メンバー。

わたし達の夢や目標を叶えるためには、
たくさんの現実的な事をこなさなければいけませんでした。

まず始めに、
家族全員で、この旅をするのに必要なことを洗い出すこと。
そして、その全てを調べること。
地元の図書館で、日本や日本文化に関する本をたくさん借り、
話し合いました。

そして、みんな、
どんどん胸が高鳴っていくのを感じました。

それから、
ビザのこと、お金のこと、ワクチンのこと。
こども達の学校のこと、大人達の仕事のこと。
その他にも、色々なことを具体的に考えなければなりませんでした。

出発できるまでは手探りでしたが。
一歩いっぽ、胸を躍らせながら進み、
無事、出発の日を迎えました。

はじめての広田町-刺激あふれる暮らしと人々の手助け


はじめての広田での生活は
大変で、刺激的でした。

学ばないといけないこと、
慣れないといけないことが沢山ありました。

買い物や運転、入浴、料理など、
文化を理解し、日常の簡単なことをするためにも、
たくさん助けてもらう必要がありました。

どうすれば礼儀正しくできるのか?
日本語でどう挨拶するのか?
町内放送では何を言っている?
トビウオはどう料理する?
地震が起きたらどうすればいい?
ゴミはどこに捨てればいい?

さらに、
暑さや床に座ること、大きな虫、
コミュニケーションの取り方、食べ物など、
慣れなきゃいけないことは沢山ありました。

ですが、幸いなことに、
わたし達はどこに行っても、
心が広く、親切なひと達に出会えました。

大変な時ではありましたが、
楽しいことが沢山でした。

例えば、ある家庭に招待され、
夕食を作ってもらった時のこと。
わたし達は食べ物を、
全く違うやり方で合わせてしまったのですが、
みんなで笑って過ごすことができました。


CMCやSETのコミュニティに入っていたことは、大きな助けになりました。

彼らは組織としてのSETを紹介してくれましたが、
前述のような生活の疑問にも応えてくれました。
そして、日本に来る前に夢見ていた、
地元のひと達との交流の手助けもしてくれました。


町に入り込む体験と旅、それから学校生活との兼ね合い


日本で人に会う度、
「広田で何をしているの?」と、とてもよく聞かれました。
地方なので、観光客にはあまり知られていない町だからです。

では、わたし達は何をしていたのか?

ひとつは、文化交流です。

日本の文化を学ぶだけでなく、
デンマークのやり方や考え方
を、SETや他のひと達に見せること。
浜辺での焚き火、ミュージックナイト、パンづくり等のイベントを通じて行いました。

また、デンマーク人の視点から民主主義について話をしたり、
ジャパンホイスコーレデーに参加したりしました。

*日本各地でフォルケホイスコーレを
 創る人や参加者が繋がり、
 日本らしい土台を形成することを目指す活動。

他にも、SETや個人の畑での農作業や、
CMCの卒業式の準備、地元のひと達と海岸をきれいにする手伝いも。

地域での活動に参加することで、
日本の日常生活を感じることができたし、
町の人々との関係づくりにもつながりました。


自分達でもいろいろな体験をしました。

広田の海水浴場は、こどもも大人も楽しめて。
陸前高田市街では、コンサートやイベントにも行きました。
岩手県内では沿岸部を中心に、たくさんの自然体験をしました。

地元の温泉へ出かけたことは、自分達にとって特別なもので。
他のところの豪勢な温泉にも行ってみましたが、
広田の”わたし達の”温泉には、何度も足を運びました。



しかし、こういった体験だけではなく、
こども達の学校の勉強にも、時間を取らなければいけませんでした。

滞在の後半、つまり約6週間。オンラインで授業に出席しました。
デンマークの学校から課題が送られてきて、
大人達でそれを手伝いながら、学校の勉強をこなしました。

感染症流行によるロックダウンの時も同じことをしたので、
何をするか心構えは万全にできていました。
そのおかげで、学校の勉強を家でしながらという、
今回のような良い経験ができたのかもしれません。



また滞在中、”オフ”の日は単発でも長期でもありました。

8月には2週間のオフがありました。
最初の1週間は東京に行き、日本の首都を体験しました。
こども達は、ディズニーランドをとても楽しんでいて、丸一日過ごしました。
でも、チームラボ・ボーダレスもまた印象的な時間でした。

東京でいちばん特別だったのは、
最初に、広田での繋がりを通して、
観光をサポートしてくれる人達と出会えたことです。
おかげで、自分達だけでは見つけられないような場所を
案内してもらえました。

2週目には十和田湖周辺に行きました。

八甲田山周辺へのロープウェイと、
ホテル十和田荘の温泉が見どころでした。
この地域は、何もない道や古びた建物がとても目立っていました。
滞在した宿もとても寂しい状態だったのは、
わたし達には大きな衝撃でした。



旅行は主な目的ではありませんでしたが、
観光客として日本を味わえたのは良かったです。

日本にはすてきな場所や観光地が、沢山あるのだと知りました。
そしてわたし達が見たのは、そのほんの一部なのだと。


この滞在で得たもの-ひと、体験と、今につながる忘れられない時間



広田での滞在は、一生忘れることのできない素晴らしい経験でした。



小さな地域社会で暮らし、SETや地元のひと達と一緒に過ごしたこと。
わたし達にとってはそんな大切な、大きな経験でした。

日本のひと達と関係を築いたのは、とても有意義な経験でした。
SETや日本のさまざまな場所のひと達と話したことが、
社会や文化についての見識を深めてくれました。


この旅が、
わたし達にとって、どんな意味があったのか説明するのは、
難しいことかもしれないです。

ですが、日本で得た多くの学びが、
日常生活や仕事に繋がっている
ことは、すでに実感できています。


これから先にも続いていく、日本のみなさんとの友情ができました。

小さなコミュニティで暮らし、そこで人々と一緒に活動したことは、
ほんとうに趣白かったです。
まだよく知らない国で、日常生活に馴染んでいこうとしていったのも、
また面白いことでした。


すでに、日本での経験が映し出され、
今に活きているのを感じています。

わたし達の旅の大事な目的地は、観光客になることではなく、
少しの間でも、日本の一部になることでした。

そしてわたし達は今、
日本、陸前高田、広田、そしてその人々とつながっていると感じています。



この思い出は、わたし達の心の中に、
ずっと在りつづけるでしょう。

よく、家族の誰かが、言います。



「あの時のこと覚えてる?」

「覚えてるよ!」


By Ann and Thomas Langholz

翻訳編集:Chee
学生時代、デンマークのフォルケホイスコーレに滞在。
卒業後、精神に障害のある若者の支援に従事したのちCMCへ参加。
1年間、広田町へ移住。現在は、執筆活動を中心にCMCのサポートを行う。



▼Change Makers’ Colleage


「CMC」は、持続可能なライフスタイルを探求する学び舎
岩手県陸前高田市広田町で、
4ヶ月の移住滞在をメインとした学びをつくっています。

今回のアン&トーマス家族の滞在は、
プログラムへの参加ではありませんでしたが、
つながったご縁から、共に暮らし仲間となりました
人生の旅路のひとつとして、立寄ってみてもらえると嬉しいです。
あなたと出会えること。この町で、お待ちしています。


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