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「世界でいちばん透きとおった物語」をネタバレ無しで語る。

こんにちは。ねむるこです。
遂に読みましたよ「世界でいちばん透きとおった物語」(杉井光:著)!

王様のブランチというテレビ番組で紹介され、いつも書店で目立つ棚に置かれているあの話題作です。

文庫本の背表紙に書かれているあらすじは以下の通り。

大御所ミステリ作家の宮内省吾が死去した。宮内は妻帯者ながら多くの女性と交際し、そのうちの一人と子供までつくっていた。それが僕だ。
「親父が『世界でいちばん透きとおった物語』という小説を死ぬ間際に書いていたらしい。何か知らないか」
宮内の長男からの連絡をきっかけに始まった遺稿探し。編集者の霧子さんの助言をもとに調べるのだがーー。
予測不能の結末が待つ、衝撃の物語。

新潮文庫『世界でいちばん透きとおった物語』背表紙より

ミステリ要素あり、壮大な仕掛けありの本作。語りたくとも語れない部分が多く魅力をお伝えすることができるかどうか不安ですが早速いきましょう!(笑)

①読み終わったら絶対誰かと共有したくなる「仕掛け」!

本作のいちばんの魅力はこれに尽きると思います。
仕掛けに気が付いた私は「なんだこれ―!面白い!」です。
子供みたいに喜びました。(笑)久しぶりに紙の本で愉快な気持ちになりました。
まず「本」それ自体が作品になるという発想に驚きました。最近読んだものでは「推し燃ゆ」ぶりかななんて思ったり。
本作の内容を考慮した上での仕掛け、最高でした!
どんな仕掛けかは是非皆様の目で確かめてください。
「電子書籍化不可能」と宣伝されていた意味が読み終わった今ならよーく分かります。
同じ感動体験をしてもらいたくて「ねえ、この本読んでみてよ!」と人に勧めたくなってしまいます。
しかもネット上ではなくて現実世界で、生身の人間同士で語り合いたくなってしまう。多分、電子書籍化不可能な仕掛けのお陰でもあるんでしょうね。
子供の時、「この本面白いんだよー」って隣の席の子に勧めるみたいな……純粋に紙の本を楽しんでいたときの心を取り戻したような気持ちになれました。

②読後感は「すっと透き通って染み渡る」

仕掛けだけではなく本編も大いに楽しめます。
「大御所ミステリ作家の遺稿を探す」その文面だけで私の心はワクワクしっぱなしでした。
愛人の子である主人公、藤阪燈真が遺稿探しのために関係者を探し出して会ったことのない父の面影を追う。

主人公と共に謎を追うことができるのも本作の楽しみのひとつです。
主人公のお父さん、大御所ミステリ作家はどんな人物だったのか。色んな関係者から靄のかかっていた人物像が少しずつ明らかになっていきます。

途中で遺稿探しの邪魔が入るなど、新たな謎が発生し読者を飽きさせません。
読み終わった後は大きな愛に包まれたような、じんわりとした気持ちになること間違いなし!
本のタイトルの通り、心が透き通っていくのを感じることができます。

個人的には主人公の知り合い、編集者の深町霧子さんがいいキャラしてるなと思いました。
物語の舵きりをしているような存在で、本作に欠かせないキャラクターになっています。聡明ではっきりと物を言う強かな女性。主人公が淡い恋心を抱くのも分かる!(笑)
霧子さん以外にも一癖も二癖もあるキャラクターが登場します。物語を読み終えると登場人物全員が愛おしく思えるから不思議なんです。
また、主人公が選んだ未来にも読者は心打たれることでしょう。

③紙の本と電子書籍に思いを馳せる

紙の本は売れないと言われ、電子書籍市場が伸びているという話はよく聞かれますがそんな世の流れを考えさせられるような作品でもあります。

紙の本には紙の本にしかできない表現がある。
電子書籍には電子書籍にしかできない表現がある。

本作を読んで本の編集というのに大変興味を持ちました。奥が深いんですね……。もっと詳しく知りたいと思うようになりました。同時にもっと面白い表現方法はないかと考えてみたり。
これからもっと小説の面白い表現方法を編み出す作家が現れるかもしれません。
本や小説の新たな表現の可能性を想起させるのも本作の魅力だと思います。

以上、「世界でいちばん透きとおった物語」の感想でした!
是非、読書の秋の一冊として加えられては如何でしょうか。

本日も最後までお読み頂きありがとうございます。


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