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地域学習をもう一度デザインする|芸北茅プロジェクト

地域学習をもう一度デザインする|芸北茅プロジェクト

北広島町芸北地域は人口約2,000人が暮らす山間の集落です。古くはたたら製鉄や燃料としての炭生産が盛んでしたが、現在は稲作や高原野菜を中心とする農業を主要な産業としています。僕が所属する北広島町立 芸北 高原の自然館は、地域にある八幡湿原やブナ林などの自然を保全しながら紹介するフィールドミュージアムとして、2001年に開館しました(白川 2007)。芸北地域で実施されている芸北茅プロジェクトと、同

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ボランティア一人ひとりと向き合う

雲月山の山焼きが再開してから最初の6年くらいは、ボランティア募集は「クチコミ」だけで展開した。山焼きに参加したことがある人にだけ募集案内を送り、「知人を誘って参加してください」と書き添えたのだ。再開初年の2005年に参加した150人に案内を送ったところ、翌年の参加者は180人に、その翌年の2006年の参加者は250人に増加し、その後ゆるやかに減少した。誰かを連れて来たら特典があるわけではなく、単純

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関係性を捉える学び、生態学

大学で自然環境について学んだ僕は、生態学の研究室に所属した。生態学は、生き物と生き物の関係、生物と環境の関係、そして生き物と人間の関係に着目する。具体的な生き物について、種の特性を掘り下げたり、新たな種を分類したりする「生物学」よりも、形のない「関係性」に着目する生態学の方が、自分には相性が良かったようだ。僕は個々の生物の名前を覚えることがとても苦手で、関係性や振る舞いは理解しやすい。
研究室では

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お金を支払うボランティア

雲月山の山焼きボランティアが50人も集まるのか、不安の声も聞かれたが、僕には確信とまではいかないものの、「なんとなく大丈夫だろう」という予感があった。それは、熊本県阿蘇地域のボランティアを知っていたからだ。
阿蘇地域の山焼きボランティア
阿蘇地域では、山焼きのために、当時でも、毎年のべ1,500人以上がボランティアとして参加していた。その数は今では2,500人を超えている。ボランティアは熊本県以外

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雲月山の山焼き再開

草原保全を目的とした雲月山の山焼きは、地元住民が主体となり、ボランティア、NPO、消防団など、総勢約250名が参加して実施されている。午前中に防火帯を作り、昼食をとってから午後に山に火を放つ。火は山上から点火して、燃え広がったところで山裾から点火する。点火していくのは地元の住民で、ボランティアは火の監視や消火活動を行う。多くの人が関わって成り立つ作業が始まったのは、3人からだった。

再開のきっか

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草原が広がる山、雲月山

雲月山(911m)は広島と島根の県境に位置する。1950年代までは、採草や放牧の場所として、地元集落の人達が日常的に利用し、管理してきた。芸北の人に聞くと、草の利用だけではなく、夏にはパラソルが点々と並び、牛が放牧されている様子を眺めたりもしたそうだ。今も山頂近くの岩陰には、古いビール瓶が転がっていたりもする。ハイキングに関してはおもしろい話が残っている。山頂ではいくら酒を飲んでも酔っ払わないのに

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